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第64話 永遠の愛を誓って
◇
息子から「国を出ます!」と宣言されてしまったディアドは、半狂乱でエルドの爵位を国に懇願し、即行受理!
めでたくエルドは貴族になった――。
「父上にご報告してから国を発つ予定だったのだが、予想以上に錯乱されてな……」
アルテッドは紅茶を飲みながら、父親からの溺愛を語った。ディアドに泣きつかれた2人は少々お疲れのご様子だ。
ここは、アルテッドとエルドをお祝いする為のお茶会。グレンシアも含め4人でテーブルを囲んでいる。
隣のグレンシアは、俺の手を握ると微笑んだ。
「直哉さんとの婚約も国王陛下がお認め下さいました」
ん!?
「結婚?」
「むしろ、頼まれてしまったのです……」
「どういうこと!?」
「国一番の英雄ですから、妃に最も相応しいと」
そ、それは……!
「私もエルドのようにロマンス溢れるプロポーズをしたかったのですが……早くお伝えしないと私以外から伝わってしまうかと思いまして」
「う、うん……どんな形でも嬉しいよ」
グレンシアは俺の左手をすくい上げる。
「婚約指輪はもう、着けてありますね」
「!」
グレンシアがマジックアイテムにして贈ってくれた想い人の気を引く指輪は、婚約指輪のつもりだったらしい。
だ、だから薬指にはめてくれたのか!
「お前たちはとっくに婚約してた訳だ」
からかうようなアルテッドの言葉に頬が熱くなる。なんというか、俺以外みんな気付いていたんだな!?
「当たり前だ、馬鹿」
「直哉様、よく左手の薬指でピンときませんでしたね……」
楽し気な2人の薬指にも、銀色の指輪が光っていた――。
俺とグレンシアの婚約が正式に決まった。そして、おめでたい事に今日はジュリアが隣国へ嫁ぐ結婚式の日だ。脅威もなく、平和な結婚式。愛する人と結ばれたお姫様のハッピーエンド。
純白の姿に会場を舞う花びら、それはおとぎ話のような光景だった。
「グレンシア……さすがにいいもんだな、こういうの」
「ええ、とてもいい日です」
グレンシアにとって感慨深い光景だろうな。俺は嬉しくなって、グレンシアに手を伸ばす。
「直哉さん、手が……!」
「!?」
――俺の手が、透けている?
そうか……ジュリアを結婚式まで守ったから、ゲームをクリアしてしまったんだ。
きっと、このまま消えれば、グレンシアには二度と会えない。
それに気が付いたグレンシアは、消えかかった俺の手を握る。
俺の目の前にはコンティニューと続けるが表示された。
――『続けるを選ぶと、2度とコンティニューは表示されません。それでも続けますか?』
グレンシアは「お願いです……」ただそれだけを言った。それ以上は言えなかったんだ。
無理に引き止めもしないで、1人で悩んじゃう優しいグレンシアが好きなんだよな。俺は。
俺は続けるを押して、最愛の婚約者へ抱き着いた。彼は俺を受け止めて、ぎゅっと抱き締めてくれる。
「俺と一緒に居て欲しい」
「私は、直哉さんに永遠の愛を誓います」
「俺も――」
コンティニューできない愛の旅路へ――。
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