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第65話 俺はエロゲー制作者① 『エルドSIDE』 エルド×アルテッド ※えってぃはじまる
――『エルドSIDE』
俺はこのゲームを作った制作者の1人だった。
プログラムを担当していた俺は、海外のネット掲示板で見つけた仮想現実を実現するというプログラムを気楽な気持ちで取り入れる事にした。コピーした試作のプロジェクトファイルだったし、まさか製品化されるとも思わなかったが……。
俺が仮想現実に吸い込まれて、プロジェクトから外れてしまった後の事情は自身のスキルで知った。残った試作プロジェクトファイルを見つけた仲間はそれを採用してゲームを完成させたが、制作者や購入者も行方不明になっていくゲームとして、販売中止になったのだ。
その一連の動きをネットのスキルで知ったとて、もはやどうする事も出来ない。この世界で暮らす事を考える以外になかった。元の世界へ戻ったら、事件の元凶として逮捕されるかもしれない。
けど、この世界に留まる一番の理由は、それじゃない。
こんな自分の事情を余す事なく知る人物がいる。
俺にとって、特別な存在。この世界で唯一、秘密を共有していて、自分の気持ちを全てわかってくれる人だ。その人の傍に居たい。それ以上の理由なんてない。
そして……もう1つ。
転移者の中でも群を抜いたチートスキルを持ち、王子からの寵愛を受ける直哉さん。自分が作ってしまった地獄の様なこの世界が彼の力で救われていく事に、感謝をしたんだよ。
ここで生きている以上、この世界がリアルなんだ。例え、英数字で綴られるコードから生まれた世界でも、全てがただのプログラムでも、ここには血の通った人間がいる。
俺は彼らに救われた。
この世界で生きたいと願う程に――。
「エルド、何をしみじみとしている」
俺とアルテッドは風呂上りベッドへ腰掛けている。一緒に寝るのも日常になっていた。
「色々とあったけど……もう、どうでもいいなと思いまして」
「私と結婚するからか?」
「いや、アルと愛し合えているからですよ」
俺の婚約者はものすごく不満そうに頬を膨らませた。
な、何かまずい事を言っただろうか? いや、思ったか?
何もやましい事なんて考えていなかったと思うが……。
焦る俺の気持ちも全て見透かされている訳だが、彼は答えを教えてくれない。
「アル、俺は何でもしますから」
教えてください! なんで不機嫌なんですか!?
「……」
アルテッドは立ち上がると、俺に背を向けたままバスローブを脱ぎ床に落とした。
「あ、アル!?」
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