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第71話 驚き過ぎて声が出ないかと思った①

 送られてきたDM……そこに書かれていた名前を見て俺は息を呑んだ。   「城崎隼人……さん……」  ――もし貴方の最愛の人がグレンシアという名前なら、今日の13時に東京駅からフォレ・フィナーレ東京201号室へ来て下さい。  は……隼人さん? 本当に、隼人さん?   「……あなたは、エルドですか?」    ――はい。   「あれから一睡もできなかった……ふわああ……」  俺の薬指にはめられた指輪。  これが夢じゃないって証拠だ。身に着けているのが当たり前すぎてむしろ気付かなかったが、日本で彼女なしの俺が、婚約指輪つけてるなんておかしいんだよ。 「グレンシア……」    俺の住む場所から東京駅はそう遠くない。なのに3時間も早く着きそうだ。  待ちきれず、失礼を承知で早い時間に家を訪ねる事にした。  東京駅から徒歩5分。 「ここ一等地ってやつじゃ……!?」  DMで隼人さんに指定された場所は超高級マンションだった。  1階のロビーには警備員やコンシェルジュが複数人いる。  おそらく隼人さんのお家はここの201号室だろう。いやいや、隼人さんの年収いくらなんだ? どんな高給取りであろうと、エンジニアが住める場所じゃない。  インターホンで管理人さん? に軽く事情を話して開けてもらいエントランスへ入った。なんといっても広すぎる豪華絢爛なロビー、不法侵入だと思われたら人生が終わりそう。  201号室に着いたら、さらにインターホンがあったので、押して待つ。オンラインゲームの中の人に会う感覚でそわそわしている俺。  ドアを開け出てきたのは――。 「直哉さん!」 「……へ?」 「よかった、会えた!」  もちろん、俺を抱きしめて来たのは隼人さんじゃない。俺は目を疑ったし、これは夢なのかもしれないと頭をよぎった。いや、そうとしか思えなかったんだよ。  でも……! 目の前にいるのは! この髪の香りはっ! 「ぐ……」 「直哉さん?」   「――ググ、グっ!? グレンシア!?」

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