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2025年6月
6月5日 愛情 香水 廻る
1 託された宝に惜しみなく愛情を注ぎ、成長を見守った。辛い時は彼が愛用している香水で心を落ち着かせる。幾度も季節は廻り、ようやく彼は帰郷した。けれど、彼の第一声は「出ていけ」という残酷なもので、容赦なく殴られた。前妻に嫉妬して養子を虐めた。俺の話も聞かずに決めつけるなんて酷すぎる。
2 香水の匂いだけが手掛かりだった。それだけをよすがに世界を廻る。ようやく会えた彼は最果ての島で羊と走り回り、気紛れに香水を調合しては売りに出していた。「探したぞ」「遅いよ」他人を散々振り回した挙句が、からりとした笑顔だった。怒りより、喜びと呆れが浮かぶ。彼の愛情表現は世界一難解だ。
6月6日 雨 もどかしい 探る
1 雨は炎を消し、おびただしい量の血を洗い流していく。烏の鳴き声が異様に響く平野で人の形をした肉の塊を探り、部下の姿がないか目を凝らす。思うように動かない体がもどかしい。ふと、昨日の夜、部下に贈った指輪が光った。駆け寄った先は確かに部下だ。でも、なんで、彼はこんなに冷たいんだ。
2 雨に打たれて肌に張り付いたシャツ。その下に手を潜り込ませ彼の好きなところを探っていくが、思うように手が動かせなくてもどかしい。乱暴に服を剥ぎ取ると、廊下が濡れるのも構わず寝室を目指し、彼をベッドに押し倒した。噛み付くように唇を重ねると、小さな吐息とともに首の後ろに腕が絡みついた。
6月24日 あとちょっと 真夜中 絡める
1 真夜中。井戸の底は凍えるような寒さだ。震える唇から声が漏れる。「あとちょっと」そうすれば、あの化け物から逃げられる。だが、その手が空に浮かぶ満月を掴むことはなかった。「どこに行く?お前は未来永劫、我と共にと誓ったであろう?」怒りに満ちた低い声。黒く冷たい手が、彼の体を絡め取った。
2 週末、ふらっと泊まりに来る幼馴染は気まぐれな野良猫みたいだ。いつもは真夜中までベッドを鳴らすのに、今日は新作ゲームに夢中だ。「なあ」「あとちょっと」さっきから繰り返される無意味なやり取りにはもう飽きた。幼馴染の視線を奪いたい。俺はぐいっと彼の顎を掴み、唇を重ねて舌を絡めた。
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