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腕輪(1-2)

 次の日の朝。  目覚まし時計の音で目が覚める。パチッと止めて起き上がるが……ヤバい、喉が痛い。絶対昨日のせいで風邪気味になったんだ!  元凶の奴を見下ろすと、目覚まし時計の音がやっぱり嫌いなようで「うるせー」と言いながら耳を塞いでる。 「そうそう!大切なことを聞かなくちゃって思ってたの。付喪神様のお名前を伺いたいわ。教えてくださる?」  朝食の時、ばあちゃんがそう切り出した。確かに聞いてなかった。どんな名前なんだろう?このナリで“太郎”とか“マイケル”とかだったら笑える!  奴はご飯を口に放り込んでから言った。 「名前は、無い」 「無い!?」 「あらまあ」  同時に驚く俺とばあちゃん。 「で、でも普通はなんか呼び名とかあるんじゃないのか?」 「……お前は腕輪に名を付けるのか?」  真顔で言われてしまった。  確かに……普通は腕輪に名前は付けないけど、人型で出ちゃうくらい歴史ある腕輪なら、誰か一人くらい愛着わいて名前付けちゃったりとかないのか?そう言うと、奴はあからさまに不快な顔をした。 「失礼な奴だな。俺が誰にも愛着を抱かれなかったとでも!?」  奴が握り締めた箸がミシッと鳴った。 「別にそんなこと言ってないじゃん!」 「言っただろうが!」 「言ってない!」  バキッと音を立てて奴の箸が折れた! 「あらあらまあまあ折れちゃったわね」  と言ってばあちゃんが代わりの箸をアホに渡す。 「付喪神様もこうちゃんも、喧嘩はやめなさい。……そうだわ、こうちゃん、付喪神様にこうちゃんがお名前付けてあげたら?」 「俺が!?」 「そうよ。いわばこうちゃんが付喪神様をこの世にお迎えしたんだから、名付けの権利はこうちゃんにあると思うのよ」  俺は奴の顔を見る。奴はまだ怒りが治まらないようで憮然とした表情で横を向いている。  こいつの名前かぁ。すっごい変なのにしてやろうかな。ポチとか。……と、いうのは冗談として。 「あんた、なんかこういう名前がいいとか希望ある?」 「ねえよ」 「へえへえ、そーですか」  こういうアホと話してるとホント頭痛くなってくる。 「別に急いで決めなくてもいいのよ?」  ばあちゃんはそう言うけど……うーん……。  あ!そうだ! 「“幸なんとか”って付けるのはどうかな?うちの伝統の」 「あらいいじゃない?付喪神様、いかが?」 「任せる」  うーん、イマイチノリが悪い。  母親の家系は男子に“幸”という字を付けるのが昔からの習わしみたいで、別に母親のほうの決まりだから従う必要もなかったけど、父さんがOKしたから俺にも“幸”を付けたとか。……まぁ他の兄弟は付いてないんだけど。  で、俺が幸太、じいちゃんが幸助で、おじちゃんが幸一で……。被らないほうがいいよな……頭使ったら余計に頭痛がしてきた。  ……あ!思いついた! 「“幸之進”ってどうかな?骨董品だからちょっと昔風の名前でさ」  手近にあった紙に名前を書いてみる。 「どう?」 「いいじゃない!時代劇のお侍さんみたいで素敵だわ」  ばあちゃんは手を叩いて喜んだ。 「どう、かな?“幸せ”に“進む”って意味なんだけど」  奴にも見せてみる。  奴はニッと笑った。 「いいな。気に入った」 「良かった!」  ホッとした。名付けって難しいな。  でも、ばあちゃんが「あらっ、でも……」と呟いた。 「おばあちゃんが二人を呼ぶ時どうしようかしら。“こうちゃん” “こうさま”にしようかしら」  紛らわしい、か……。ガッカリして頭がまたガンガンしてきた。 「うー」と唸ると、奴は「ならば」と言った。 「幸之進という名は気に入ったから貰っておく。普段呼ぶ時は“シン”と呼ぶがいい」  “シン”かぁ。いいかも。 「うん、いいね!ばあちゃんもいい?」 「もちろんよ」  みんな納得、丸く収まったんだけど、なぜか頭痛は治まる気配がなかった。  学校着いたら寒気がするし熱出てきたみたいで。保健室に行ったら38.5℃!即刻早退となった。 「ただいまぁ……」  ヨロヨロしながら帰宅。 「あら、こうちゃん!どうしたの!……まあすごい熱!電話くれたら迎えに行ったのに」 「へーきへーき……。風邪薬あったよね?それ飲んで寝る」 「用意するわね、待ってて」  声が聞こえたのか、シンが2階から降りてきた。 「何だ、早いじゃないか」 「うん、風邪ひいたみたいで具合悪くて帰ってきた。薬飲んで寝る」  あんたのせいでな!って言いたかったけどそんな気力無し。大人しく寝よう……。 「ふーん」  って言って少し間が空いた後、シンは言った。 「治してやろうか?」 「え?」 「だから治してやる。舐めれば治る」 「いい。結構です」  即答しといた。これだから付喪神様は困るんだよな!風邪は怪我じゃないんだよ!……って言いたいけど再びやめとく。 「遠慮すんなって。すぐ楽になる」 「はあどーも。気持ちだけ受け取っとく」  舐めただけで治れば医者も風邪薬もいらないな!すげー夢みたい!  ばあちゃんが用意してくれた薬を飲んで、氷枕と水持って部屋へ行った。 「うー調子悪すぎ……」  布団入ればすぐにでも寝れるのではと期待したけど、具合が悪くて全く眠れる気配がない。 「やばい、まじでやばい……」  息が苦しい。発熱がすごいのに寒くて震える。ギューッと目を瞑っていると、急に額にひんやりとしたものが置かれた。……なんか気持ちいい。  目を開けると、シンが俺の額に手を置いていた。 「なんだシンかぁ。濡れタオルでも置いてくれたのかと思った」 「すごい熱じゃねえか。やっぱり治してやるって」  シンは右手を俺の額に付けたり首もとに触れたりしている。 「いらないよ。きっともうすぐ薬が効くし。シンの手、冷たくて気持ちいいからこのまま置いといて」 「お前なあ……。相当弱ってるなこれ」  部屋に俺の息遣いだけが響いている。優しく頭を撫でてくれるシンの手。こいつこんなにいい奴だったんだ……。とか思ってたら急に喉が苦しくなった。 「うっ、ゲホ!ゴホッ」  ガラガラと喉を鳴らす咳。 「ほら!酷くなってるんだって。俺に治させろ」 「この、咳がゲホゲホッ、治まればきっと治っゲホゲホッ」 「観念しろ。俺に任せればあっという間にスッキリだぞ」 「どう、やんの?」 「舐める」 「やっぱりいい!ッゲホッゲホッ」 「何でだよ!この前首治してやっただろ!」  首をベロンと舐められた感触を思い出した。寒気が余計ひどくなった気がする。確かに驚くほど治りは早かったけど、あれはいわゆる外傷で、風邪とはまた種類違うだろうし、それよりなによりまた首とか今回は発熱してるから頭とか、顔とか?舐められたらたまったもんじゃない。 「いい!いらない!」 「ったく、無理矢理やってやろうか?」 「やだ!……っく」  喉が更に苦しくなり息が詰まる。 「くるし……」 「ほらみろ。お前は限界だ。俺に任せろ」  確かにもうなりふり構っていられなかった。このままだと息が止まって死ぬ。コクコク頷くと、シンは俺を仰向けに寝かせ、気道を確保するように首を反らせた。 「絶対に暴れるなよ」  そう言って、唇を重ねてきた!! 「!!!」  その上、舌まで入れてくる! 「……っ!!」  思いのほか長い舌が口内を撫で回してくる。叫びたいが声が出ないので、奴を殴ろうと手を上げた。でも情けないほどヘロヘロで。髪を引っ張ろうとしたら気づかれて腕を抑えられてしまう。  このエロヤロー!あとでばあちゃんに言いつけてやる!それで腕輪は粉々にして裏山に埋めてやる!……とか考えてたら。  急に気道が広がった感覚がして、その途端、体が一気に楽になった。全身の震えが止まり、高熱が引いていき、頭痛も喉の痛みも消え去っていく。体の端っこから悪いモノが中央に集まり、口から出て行くのがわかる。  時折シンの喉がコクンと鳴り、悪いモノを飲み込んでくれてるみたいだった。  やがて唇がゆっくりと離れた。シンが俺の顔を見てる。この沈黙はなんだろう? 「……あ、えっと治療終わった?」  治ったか見極めているのかなと思って。  シンは「いや、まだだ……」と言ってまた顔を近づける。まだか。そっか。じゃあ仕方ない。  シンの唇をまた受け止めた。でも、これはさっきの治療と違うなってことがすぐにわかった。これは本物のキスだ。悪いモノが吸い込まれてく感じしないし、舌のタッチが全然違う。  シンが俺の体をなぞった。 「……っん」  くすぐったい感覚が全身を駆け巡る。よからぬことが始まりそう。 『♪ラーラララーラララー!!』  急に大音量で歌が鳴ってお互いビクッ!!となり、シンが飛び起きた。 『♪ラーララ…』  プツッと切れた。シーンとなる室内。 「あ、LINEかな……」  俺はモソモソと起き上がりスマホをチェックした。友達からの体調を気遣うメッセージだった。なんだか居たたまれなくてLINEを返信するフリをしながら部屋を出た。  ……やばい。もしLINE来なかったらヤッてた!!きっとそういう流れだった!熱が下がったはずなのに顔が熱い。  ばあちゃんが居間で驚いた顔で迎えてくれた。 「あら!こうちゃん大丈夫なの?」 「う、うん!すっかり治った!」  顔が赤いのバレてないかな。 「あらー、風邪薬が効いたのかしら?良かったわねえ」 「……うん」  “シンが治してくれた”って言えばいいのになんで言わないんだよ。ヒドイ奴だな俺。  夕飯の時もばあちゃんがシンに「こうちゃん風邪薬で治ったのよ。良かったわ」って言ってた。だけどあいつ「最近の薬は万能なんだな。すげえ」って。どうして“俺が治した”って言わないんだよ!言えばいいのに!  申し訳なくてシンの顔見れなかった。  それから数日間、シンと俺はギクシャクしてて、会話は最小限。部屋では一緒に寝るけどあいつ背中向けてるし、“話しかけるな”オーラが出てる。これならムカつくけど前の喧嘩ばっかしてる時のほうが良かった。  ……でも、そんなある夜。  夜中、うなり声みたいなのが聞こえてきて目が覚めた。振り向くとシンがうずくまって震えている。 「……どうした?」  思わず声をかけた。  覗き込んで見てみると、右目を抑えて痛みに耐えてるみたいだった。 「……っ、ほっといてくれ」 「右目痛いのか?」  苦しそうなのに放ってなんておけない。シンの息が荒い。背中に触れると、着物の生地越しなのに熱かった。 「ちょっ、熱いじゃん!」  慌てて部屋の電気をつけた。 「……うっ、くっ」  歯を食いしばって耐えてるみたいだけど、すごい辛そうで脂汗も出てる。 「シン!……ど、どうしよう」  背中をさする。  シンは苦しみながら懐から“右目”の水晶を取り出した。 「光ってる……?」  そう、水晶が光り輝いている。  シンはハアハアと息をしながら「そうか、限界か……」と呟いた。 「……!?なに?なにが限界なんだよ!」  まさか死んじゃう?消えちゃうのか?  シンは苦しそうに声を漏らしながら俺を見た。 「も、物は……俺みたいなのは、壊れたら、普通は存在出来ない」  それが、バラバラになっても砕かれても存在し続けられたのが不思議だった、と。右目の欠片を見つける猶予を与えられていたのかもしれない。でもその欠片がこの地に存在しない今、もう消えるしかない。シンがそう言った。 「シン!ダメだって!そんなこと言うな!消えたらダメだ!!」  突然いなくなったら、ばあちゃんが悲しむ。それに、俺だって……!目頭が熱い。涙が出てくる。  シンが苦しそうなのに笑う。 「泣くな。また元の生活に、戻るだけだろ」 「戻りたくない。シンがいないと俺……っ」  シンが俺の頬を伝う涙に触れて……その感触がフッと消えた。それこそ幻のように、シンの姿が消えた。  あとに残ったのは沢山の水晶と、切れた紐。 「──……っ」  まだ風邪を治してくれた礼も言ってなかったのに。  謝りたかったのに。  言いたいことたくさんあったのに──  突然、目の奥に激痛が走った。 「ツッ、イッテ……」  涙にまみれてポロッと何かが落ちてきた。 「なにこれ。欠片……?」  ハッとした。慌ててヒビ入り水晶を手に取ると、光を放ちながら自然に欠片と合わさり美しい球体となった。もしかしてシンが復活する……?という期待も虚しく、夜が明けても部屋は静まり続けていた。  翌朝。  泣き腫らした目で階下に降りた。 「あらこうちゃん、早いじゃない。おはよう」  いつも通り微笑み迎えるばあちゃん。 「おはよ……。これ……」  “シン”を入れた桐の箱を手渡した。 「どうしたの?」  と聞きつつも、俺の表情で察したのか、眉根を寄せているばあちゃん。 「あいつ、夜中に突然消えちゃった。……顔洗ってこよっと!」  わざと明るい声を出してその場から逃げた。そうしないと涙が出てきたのがバレるから。後ろでばあちゃんが何か言ってたけど聞ける余裕はなかった。  学校には行ったけど、一日中上の空で。シンを思い出すと悲しくなるから考えないように別のことを思い浮かべようとするものの、結局行き着くのはあいつのこと。謝れなかった自分への後悔。  友達は「失恋か?」「そうなんだな?元気出せよ」と勝手に解釈する始末。否定する意欲も湧かなかった。  ……似たようなものかもしれないし。悔しいけど、好き、だったのかも。人間じゃない、あんな変なやつだったのに。キスとかするし、舌入れるし。なのにあっという間に消えて。責任取れよ!  ジワッ。  涙が滲む。  あー!ダメだ俺。超女々しい。パタパタと顔を仰いで誤魔化した。  帰宅すると、ばあちゃんが迎えてくれた。 「おかえり、こうちゃん」 「ただいまー」  ばあちゃんが桐の箱を出した。 「こうちゃん、これ」  そっと開けてくれる。  “シン”の腕輪が元通りに直されていた。 「え、これ……」 「おばあちゃん、頑張って直しちゃったわ。紐はね、切れてたんじゃなくて解けてただけみたいなの。しっかり結んでおいたからもう大丈夫よ。使ってあげて」 「つかっ、使えないよ……」 「使ってあげたほうが、シン様も喜ぶわよ」  ばあちゃんは俺の腕を取ると、そっと腕輪をはめてくれた。  ……腕輪がキラキラしてる。 「綺麗ね」  ばあちゃんが言った。俺は頷いた。 「うん。ここの色とか、シンの目の色に似てる」  折角欠片が揃ったのに。きっと両目が揃ったシンはさぞかしカッコイイことだろう。 「シンに、会いたいなぁ……」  自然と口をついて出た。その時。  腕輪が淡い光を放ち、光のみ残して消えた。 「えっ!?」  光が床に落ちて、みるみるうちに人型を形成していく。 「まあ……!」  ばあちゃんも俺も、目の前の出来事に唖然としている。  光の人型は、あの“シン”になった。  俺の目の前でゆっくり瞼を開けるシン。  両目に宿る、美しい瞳。  俺を見て微笑んだ。 「……っ!!」  バカみたいに涙が溢れる。 「……まさか、復活出来るなんて思わなかったぜ。キヌヨと……コウタのお陰だ。泣き虫コウタ」 「う、うるせーっ」  どちらからともなく抱きついた。本物だ。幻じゃない。 「お前の言ってたことは、あながちデタラメじゃなかったかもしれない。俺をここまで想ってくれたのはお前だけだ、コウタ」  夕飯はご馳走だった。  元から俺を励まそうといつもよりちょっと豪華なご飯にするつもりだったらしいけど。シン復活祝いで、ばあちゃんは更に腕によりをかけて作ってくれた。  ばあちゃんは終始ご機嫌だった。 「ふー満腹満腹」  俺たちはそれぞれの布団でゴロゴロしている。隣の布団で大あくびをしているシンを見た。  ……相変わらずデカイ口。変わってない。 「なあに笑ってんだ」  シンが寝返りをうってこっちを見た。 「別に?」  俺は天井を見上げた。シンが俺の顔を覗き込んできた。 「お前、ここに出来もんが出来てるぞ」  人の頬を指差す。……それは気づいてる。ニキビだ。あんまこういうの出来たことなかったのに、急に生まれ出てきた。 「思春期だから仕方ねーんだよ。出来るもんなの」 「ししゅんき、ね。……治してやろうか?」 「えっ?」  ドキッとする。  はいもいいえも言ってないのに、頬をペロッと舐められた。 「……!おめー!」 「治ったぜ」  触ると確かにツルッとしてて消えてる。 「え、ちょっと待って」  手近に鏡がないので、スマホのカメラモードで簡易鏡にしてみる。 「すげー」  やっぱりコイツの効力は絶大だ。 「こっちも治してやろうか?」  反対側の頬にある、もう一つのニキビも指した。……うっ、バレてるのか。  俺はシンに頷いた。シンは俺に覆い被さるような体勢で反対側の頬も舐めた。  触るとやっぱりツルッ。 「すげーすげー」  スマホで見ようとしたら、手を抑えられてしまう。 「……もう、いいだろ?」  シンは俺の手からスマホを奪い、遠くに追いやりながら俺に唇を重ねた。 「……んっ」  チュッと音を立てて俺の唇を一度吸ってから、シンは俺の唇に食らいついた。すごく激しくて深い。舌が絡む。 「はっ……んんっ」  いつ息をしていいかわからない。 「く、るし……っ」  顔を反らすと、シンは頬や首筋に唇を移動する。肌を舐めたり吸ったり。舐められるとくすぐったいし、吸われるとピリッとする。  それと同時にシンは俺の服の中に手を入れると腰や腹を撫で、胸を触った。乳首を親指の腹でいじられ、胸ごと揉みしだかれる。 「っや、やだ……」  女じゃないのにそんなところを揉まれるなんて、恥ずかしい。……感じてる自分にも恥ずかしい。 「煩わしい。脱げ」  そう言って俺のシャツを脱がすと放り投げる。 「ちょちょちょ!待って待って!」  ズボンにも手をかけられ、恥ずかしくて止めてしまう。パンツの中がえらいことになってるから。 「待てねえ」  シンはグイグイとズボンを下ろそうとする。 「や、やだやだやだ!」  俺は駄々っ子のように首を振った。 「……コウタ、手、貸せ」  シンは俺の片手を引くと、自らの股間に導いた。 「……!!」  すごい、勃ってる。しかもボリューム感が尋常じゃない。布地越しでもよくわかった。 「お前は?……見せろ」  ズボンを握る俺の手を優しく外すと、ゆっくりと俺のズボンとパンツを下ろした。邪魔な布が無くなり、天を向いてるのがわかる。  恥ずかしい。消えてしまいたい。  シンは俺のそれを掴むと、上下に擦り始めた。 「やっ……!」  シンの腕を制止しようとするが、止まらない。ますます大きくなっていくのがわかる。 「や、あ……っ、シン、んっ」  唇を奪われ、胸をいじられ、下半身を擦られ。えもいわれぬ快感が襲って、腰が浮く。  足をばたつかせていると、シンがふいに俺の両足を広げて体を寄せた。 「えっ」  そして俺の肛門に、いつの間にか露わにしたシンのモノをあてがった。 「ちょ、ちょっ」  まさかまさか……! 「少し、我慢しろ」  そんな無責任なことを言って、グイグイと入れようとする! 「いっ!!や!!無理!!無理!!」  そんな太いの入るわけない!この前風呂場で見た時よりも勃ったことで更にデカくなってる! 「イデ!イデデデデ!!」 「下品な声出すな」 「いてーんだって!!」  ホントに、キャパ超えてる。先っぽすら入らない。そもそもいきなり入るものなのか?  シンはため息をついた。 「……俺を見ろ。俺の目を」  シンの、目?  見ると、黄色の瞳の中に細かい粒子が煌めいているように見えた。……すごく綺麗だ。  吸い込まれるように見て、そのまま唇を重ねる。すると、ズズズーッと尻の中に太いものが入る感覚がした。 「……っ!!」  慌てて顔を上げると、シンのアレが根元まで俺の中に入っていた。  ……信じられない。 「痛いか?」  驚きで声が出ず、首を振った。痛くはないけど異物感ありあり。何か入ってる感覚はある。 「痛くないならいい」  シンはフッと笑って、身を少し離し、再び奥に差し入れた。 「うっ……あ……!?」  シンがゆっくりと腰を動かし始めた。 「あっ……あぁ」  怖い。俺どうなっちゃうんだろう。男に足を開かされて太いもの入れられて、動かれてる。  シンの動きが段々と早くなる。中で摩擦を感じて快感が広がる。おかしい。なんで気持ちよくなってんの?  息が苦しくて荒くなる。息と声が混じる。 「あっ、あっ、はぁっ、あっ、あんっ」  思いっきり喘いでる!恥ずかしくて恥ずかしくて、手を伸ばして枕を取ると顔を隠した。 「隠すな」  あっさり枕を遠くに追いやられてしまった。 「イク顔を見たい」 「バカ!へんな、こと……っん!あ!や、ああっ!ダメ、もっとゆっくりっ……」  自分でもなに言ってるかわからない。 「ゆっくりな、わかった」  腰の動きがゆっくりになる。そ、それはそれで太さとか長さとか、中で這い上がる感じがリアルで嫌だ! 「も、もうちょい、あっ、はやっ早くしろっ」 「我がままなやつ」  クッと笑われ、動きが少し早まった。 「ん────────っ」  快感と恥ずかしさで涙が出てくる。顔も体もグチャグチャだ。 「今度は何だ?」 「もう、わかっんな……」 「……可愛いやつ」 「……!」  シンはハアッと深く息を吐いた。 「……もう、俺の早さで構わないな?限界だ」 「えっ、あっ!」  部屋にシンの息遣いと俺の喘ぎ声、それに擦りあって濡れた音が響いている。  ……限界、俺も、もう限界だ。 「あっ、あ、俺っもうっ」 「……コウタ」 「んっ、ん───っ!あ、あああっ!!」  体中が脈打ったようにドクッと揺れて、俺のモノから大量に精液が飛び出た。 「くっ……!!」  シンも果てたことは、体の中の感覚でわかった。ビクビクと動きながら温かい汁を放出している。  すごい、すごかった。なんて表現したらいいんだろう。  隣に横たわるシンを見る。シンも俺を見ていた。 「好き、かも。あんたのこと」  思わず口をついて出た。シンがクスッと笑う。 「……知ってる」 「あんたは?」  言葉が欲しい。 「もちろん、ずっと一緒にいたいぜ」 「好き、とかそういうの!」  つい駄々っ子になってしまう。 「好き、好き、好き好き好き。あー好き」 「心がこもってない!ヘラヘラすんな!」  ギューッと抱き締められた。 「お前といると、すぐにこうなるくらい、好きだぜ」  俺になにかが当たってる。 「もう勃ってんの!?」  ギョッとした。まさか……第2ラウンド……?  愛情というよりは性欲が爆発してるだけって気もするけど、シンの笑顔が優しいから、信じる。  再び唇が重なる。シンの手が俺の下半身に伸びる。そんな、すぐに無理じゃね?とか思ったけど、簡単に反応している。  ……俺も大概だ……。 「……あっ、ん」  快感の波が寄せてくる。  もう全てをシンに任せて、俺はその波に飲み込まれていった──。

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