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腕輪(2-1)
ミシ、ミシッ
「あっ、うぁ……あん、あ」
腰の中が擦り合う度、畳敷きの床が鳴っている。だいぶ古い民家だから、歩くだけでもミシミシいう。聞き慣れた音だけど、今だけは妙に耳に触る。
俺の乳首を、シンがベロリと舐める。
「あ、やっ……」
舌で転がされ、吸われ。もう片方の胸は大きな手で揉まれ続けている。
「……んっ、あんっ、あぁっ……」
誰にも、シン以外には聞かせられない甘ったるい声が喉を鳴らす。
時々我に返っては声を潜めようとしたり口を手で抑えたりするが、すぐにシンに気づかれて外されてしまう。
この“声”が好きなんだそうだ。恥じらう姿も。
だから、今日もまた俺の両手に指を絡ませると、やや身を起こしながら腰を動かし、俺を眺めてる。
何度経験しても慣れない。恥ずかしすぎて死ぬ。少しでも顔を見られたくなくて、目を瞑ったり、横を向いて壁とか窓とか無意味に見てる。すると、決まってシンは首筋を強く吸うのだ。チリッとして、キスマークが残る。
初めて洗面所の鏡で気づいた時はギョッとした。しかもその日はたまたま体育の授業があった。体操着の襟首からしっかり覗くキスマーク。急遽ジャージ着て隠したけど、クラスメートにバレてしまわないかソワソワして、さぞや挙動不審だったに違いない。
だから「絶対やめろ」って言った。それなのに。
再びチリッという感覚がした。今度は胸元。
「シン、やめろって、いつもっ……」
「俺のモンっていう痕つけて何が悪い」
いつもこうだ。のれんに腕押し。
「印なんか付けなくても、俺はシンの……っあ、やっ、待って」
急に腰の動きが早まる。内壁を強く擦られ、言葉にならなくなる。
「あ、んっ、あっ、あっ、や、ゆっくり、も、だめっ」
「は、あ、俺も……っ」
駄目押しのように中のシンが大きくなったと感じた。握られた手に力が込められる。
「あっ!あっ───!」
「くっ───!」
ビクビクッと体の中心が震え、その高ぶりから白い液体が放出した。一度では出きらず、尿道を刺激しながら数度、勢いよく出た。
体の中でも波のようにうねりながら液体が出されている感覚がする。全部出されると、実はあとでちょっと腹の具合が悪くなったりする。それだけシンは出す量が多い。ラウンド数が多いというのもあるけど。
目尻から涙が伝い落ちた。別に悲しいわけじゃない。シンがそれを舐めとってくれた。目を合わせて笑い合う。唇が重なった。
「そういえばこうちゃん、最近夜中にプロレスでもしてるの?」
「え?なんで?」
翌朝の朝食中、ばあちゃんが突然切り出した。なんで突然プロレス?ご飯をかき込んで、味噌汁をズズッとすする。
「だってね、こうちゃんの部屋の辺りから、毎晩のようにミシ、ミシ、ミシ、ミシって音がするのよ。おばあちゃん気になって階段の下で耳をすましたらね、こうちゃんの苦しそうな声が聞こえるじゃない?心配しちゃったわ」
「うっ、ゴホッゴホッゴホッ!!」
思いっきりむせた!苦しくてなにも言えない!ゲホゴホしてるとばあちゃんは「あらあらまあまあ」とお茶を渡してくれた。一気飲みする。
「シン様、まさかこうちゃんにプロレス技なんてかけてないわよね?」
「う、ちょっとっ、ケホッ、まっ」
まだ声が出せない。
シンはたくわんをボリボリ食べながら、「あー」と言った。
「“ぷろれす”ってあれか、四角い中で男が二人で取っ組み合ってるやつ?」
「そうそう」
ばあちゃんは頷いている。シンも頷いた。
「似たようなもんやってんな、確かに」
「ちょ、シンっ!」
「でも、俺らはすっぱ」
「わー!わー!」
シンの口を必死で塞いだ。シンがジロッと見て、俺の手の平をペロリと舐めた。
「ちょっ!」
慌てて手を離す。
「やめろよ」
シンの袖で手を拭いた。シンはフンッと鼻を鳴らし、佃煮に手を伸ばした。
そこにプルルルル……と電話が鳴った。ばあちゃんが電話を取る。話が終わってくれたことにホッとした。さっさと食い終わって学校行こ!
「あらまあ!」
ばあちゃんが驚きの声を上げた。気になって耳をすます。
「ええ、ええ、そう。そうなの~。そうね」
相づちばかりで内容が全然わかんない。隣でシンがボリボリと再びたくあんを食べてる。空気読めよ!電話が聞こえない!
「はい、はい。またね、ええ、教えてね。こうちゃんには……ええ、そうするわね」
自分の名前が出てドキッとする。シンも一瞬動きを止めたように見えた。
「はーい、じゃあね、はい、失礼します」
ばあちゃんは受話器を置いた。
「なになに?なにがあった?」
気になりすぎて、ばあちゃんが座るのを待たずに聞く。ばあちゃんは少し躊躇いながらも口を開いた。
「今、サツキ……お母さんから電話でね、ヤマトくんが離婚したって」
「えっ……?」
兄ちゃんが離婚?ビックリしすぎて絶句してしまった。
まだ結婚して3年?くらいしか経ってないと思う。兄ちゃんのお嫁さんには結婚式とその前後と、後数回しか会ったことなかったけど、感じ悪くはなかった。すごく仲良くて幸せそうだったのに。
「別にお前が気にしたって仕方ない」
俺の心を読んだかのようにシンが言った。
「うん、そうだけど……」
妙に落ち込んでしまった。
その日は一日中、兄ちゃんにメールかLINEしようか迷っていた。夜、布団に入ってからも。
でもなんて書いたらいいんだろう?“離婚したんだって?”なんてデリカシーないし、“最近どう?”は白々しいし。
スマホを見ては消したり、アプリを開いては閉じたり。その繰り返し。
「コウタ、ちょっと端に寄れ」
シンが俺の布団に侵入しようとしてる。隣に自分の布団あるのに。……悪いけど、今日はそういう気分じゃない。
そう言うと、シンは鼻で笑って「下心はねーよ」と言った。信用出来ないけど、ちょっと横にズレる。
布団に入ってきたシンは、仰向けでスマホを見てる俺に密着する。でもそれ以上はなにもしてこない。……体温が暖かい。ホッとしながらシンの胸元に頭を寄せた。シンの纏う空気が柔らかく揺らいで、俺を優しく抱いてくれた。
眠気が押し寄せてきた。疲れてるのかも。瞼が重くなってきてスマホが手から滑り落ちた。額にシンの唇が優しく触れたけど、目が開かない。そのまま眠りに落ちた。
夜中、ふと目が覚めた。
シンの規則的な寝息が聞こえる。俺に腕を預け、包んでくれてる。
無防備な寝顔。睫毛長い。形の良い唇。キスしたいなぁ。でも、動くと起きちゃうか。
そっとシンのほうに向いて、抱きつくように背中に手を回した。トク、トク、と鳴るシンの心音を聞いてると、また眠気が襲ってきた。シンがフッと笑ったような気がした。
再び、眠りに落ちた。
翌朝。
ギィィ……
蔵の重い扉を開けた。中断してた蔵の整理。それをしようと思い立ったためだ。
兄ちゃんの件は気になるけど、「今はそっとしておいてあげましょう」というばあちゃんの思いに従った。
「うわ、相変わらず埃っぽい……」
俺は顎に引っかけてたマスクをしっかり口元に装着した。
「んー、懐かしい匂いだ」
後ろでシンが伸びをしながら息を思いっきり吸い込んでる。
「これ、あんたも付けたほうがいいんじゃないか?」
予備のマスクをシンに差し出すが、受け取ろうとしない。
「そんなもんしても苦しいだけだ。いらん。それに……」
シンは、話ながらスーッと埃を指に付ける。
「俺たち道具に歴史があるように、埃も層になっている。この上の柔らかい埃から、一番下の固い埃。ある意味歴史だ。何百年前の埃だろうと思うと、心がはやらないか?」
「うーん別に……」
確かに道具は古いけど、数年前まではばあちゃんやじいちゃんが年に一度、蔵のものを出して虫干ししてたと聞く。
シンがムッとしたように唇を曲げる。
「言っておくが、キヌヨが以前はここも煤払いをしていたのは知ってるぞ。だが、こういう隙間の埃は、昔のものだ」
箱の狭い隙間にこびりついた埃を爪の先に付けるシン。
「俺が生まれた頃の埃かもしれない」
そう言って、その埃を舐めた……が、すぐにペッと吐き出した。
「不味い」
そりゃそうだ!思わずぽかんとしてしまった。埃なんか舐めちゃいけないって、子供でも知ってる。
「バカだ……」
思わず心の声が口から出た。
シンが「ああ!?バカだと?」と睨みをきかせた。マスクでくぐもってたから聞こえないだろうと思ったのに。地獄耳め!
シンが再び埃をすくう。その指を俺に向けた。
「お前も舐めろ」
「は!?なんで!」
「バカと言った罰だ」
「ば、バカにバカって言っただけだろ!普通そんなの舐めない!」
「いいから舐めろ!」
「い、や、だ!」
迫るシンの右腕を両手で押し戻す。シンは左手で俺の右腕を持ち、両腕を広げさせた。
「くっ」
左手だけじゃ防ぎきれない。背中が壁についた。元より力の差は歴然だから、シンは手加減していたのかもしれない。奴は余裕でニヤリと笑い、口を使って俺のマスクを剥ぎ取った。口元がひんやりとした空気に晒される。
絶対に、口を開けるもんか!ギュッと口を閉める。
シンの指が迫る。別にペロッと舐めるだけならいいか。すぐ吐き出せばいいんだ。なにこんな取っ組み合いしてるんだ……。
なんかバカバカしくなってきて、目を閉じて力を緩めた。
遠慮もなにもなく唇に触れられた感触がした。柔らかい、けど、指じゃない!?目を開けると思ったとおり、シンの顔が目の前で。キスされてる!
「んん!!ん!」
抗議の声を上げるも、全く聞く耳持たず、唇をきつく吸い上げられる。しかも鼻をつままれた。く、苦しいっ。
シンの腕を叩く。苦しすぎて連打。顔が離れたのでプハッと口を開ける。鼻を解放されたのと同時に、開けた口からシンの長い舌が侵入した。
「もっ、んー!」
ゆっくり味わうように、口内に舌を這わせ舐め取られる。執拗に攻められ、徐々に体が熱を持ち始める。
スリッと服の上から下半身を撫で上げられ、全身に震えが走った。や、やばい……。
「シン、もう、終わり……っ」
首筋に当たるシンの吐息も熱い。興奮してる。噛みつくように首を吸いながら、俺の服の裾から手を侵入させた。
「ここじゃ、イヤだっ」
埃まみれだし、物がいっぱいあるし。ばあちゃんが突然入ってきたら……?
「ここでしたい。今」
「イヤだって!」
こうなると聞いてくれない。いつもそう。俺も結構早いうちに流されちゃうからいけないんだけど。
でもここは寝室じゃない。こんなところに寝転がるなんてとんでもない。なんとかしなければ。
グググッとシンの肩を押し返す。当然ながらビクともしない。それどころかシンの足が俺の股の間に入り、太股かどこかで俺の下半身を擦っている。
「やっ、やめっ」
膝から力が抜けそうになり、シンにしがみついた。シンがフッと笑った気がする。
どうせ、イヤって言いながら結局は抗えないんだなって、バカにしてるんだ。悔しくてガンガンと踵で壁を蹴った。
その時、どこかから「ふああああ……」という欠伸が聞こえた。
「さっきからうるさいのう」
欠伸をかみ殺した呑気な口調。俺たちは顔を見合わせた。
「だ、誰!?」
声がした辺りに問いかける。シンの袖を掴むと、シンは俺を守るように前に出た。
「儂 じゃ儂じゃ」
骨董品の大きな箱の横から、ひょこっと顔が出てきた。大きな丸眼鏡の、少年?
「どっこいしょ」と声を出しながら立ち上がる不審者。シンが「なんだ」と呟いた。
「硯 の爺さんじゃねーか」
「え?」
すずりのじいさん?
「すずり?すずりって、あの炭を擦る硯?」
「そうじゃよ、コウタ、と言ったかのう」
「なんで俺の名前……あ!」
まさか、付喪神?硯の付喪神?俺の考えを察したのか、硯の爺さんとやらは俺たちの前に姿を見せると、うんうんと頷いた。
「そうじゃ。この世では“付喪神”と呼ばれておるかのう。なあ、腕輪の若造よ」
「若造言うな。俺の名は“幸之進”と付けられた。“シン”と呼べ」
見た目は、シンのほうが年上に見える。シンが老けて見えるというより、硯……さんが若く見えるのだ。特に顔のサイズに合わない大きな眼鏡と胸に抱えた大きな本のせいで、余計に華奢で小柄に見えた。
実際は、背丈は俺と変わらないかもしれない。
「あの、硯さん、は……」
「“スズ”と呼ぶがいい」
「あ、スズさんは、お爺さんなのか?若く見えるけど」
シンとスズさんを交互に見ながら聞いた。スズさんは人なつっこそうな笑みを唇に浮かべた。
「じじいには見えぬか?儂らのような者たちは、見た目で判断してはならぬのじゃ。大切なのは生まれた時期と、知識じゃ」
スズさんは自分の頭と本をツンツンと指した。
「硯の爺さんは無駄に知識が豊富なんだぜ。無駄にな。頭ん中と、その本が繋がってる。新しい知識を全て溜め込めるんだ」
「“無駄”は余計なのじゃ」
「へーすげー……」
よくわかんないけど、覚えたことを全て忘れないならすごい。テストとか楽勝じゃん!
スズさんは「おっ」という顔をした。
「いかんいかん、若者たちの邪魔をしてすまんかったのう。儂を気にせずさっきの続きをやるといい」
「え?」
さっきの続き?……ああ、蔵の整理か。
「んー……じゃあ、片付け始めるか」
「うげー」
シンが苦虫を噛み潰したような顔をする。スズさんは首を振った。
「違う、違うぞ。その後のことじゃ。お主ら、まぐわろうとしておったじゃろ」
「は?ま、まぐわ?」
「“性交”と言えばわかるかのう?更に現代風に言うなれば……」
スズさんが本の表紙を開くと、風も吹いてないのにパラパラ……とページがめくられ、ピタッと開いた。
「そうじゃ、“セックス”じゃ。お主らセックスしようとしておったじゃろ?やるがいい。その代わり、儂にも見せるのじゃ。知識を深めたい」
「はあ!?なに言ってんだよ!見せるわけないじゃん!!」
顔だけじゃなく口からも火が出そうになった。普通、見たいとかそういうこと言うか!?
「なぜじゃ?減るもんじゃなし。シンよ。お主はここで今したいと言っとったじゃろ?好きなだけやるといい。ほら早よう」
シンが俺を見下ろした。
「や、やだからな……」
多分、しないと信じたい。でも、性欲が爆発すると止めても聞いてくれない。さっきだってそうだった。それで流されてしちゃうのだ。
シンが俺をじっと見てる。やろうかやるまいか考えてるのか?考えるまでもないのに!
シンが俺に微笑んだ後、スズさんに向き直って言った。
「しねーよ。見せもんじゃねえ」
ホッとした。と同時に少しでも疑ったことを反省した。
「なんでじゃ!つまらんぞ!道具と人間の種を越えた交わりをこの目でしかと見たいのじゃ!」
なんでそんなに知りたがるんだ!?俺たちじゃなくて他の奴に聞いてほしい。
「見たいのじゃー!」
グウ───!!
その叫びと変わらないくらいの音がスズさんから聞こえた。腹を押さえるスズさん。
「いかん。腹が減ってきたのじゃ。叫びすぎて一気に力が……」
スズさんがポテッと倒れた。
「え、ちょっと、スズさん!?」
慌てて駆け寄ると、腹をキュルキュル慣らしながら脱力している。
「ほっとけ」
シンが呆れた顔で言った。
「そんな。ほっとけないよ。スズさん、家に行けば食べ物あるけど。行く?」
「それは美味か?」
「うん!ばあちゃんの料理は最高だよ。そろそろ昼飯の時間だし。なにか作ってくれるよ」
「ならば行く」
ズリズリと起き上がったスズさんに肩を貸してやる。……が、シンが横からスズさんの腕をグイッと引いて立ち上がらせた。
「少しは自分で歩け」
スズさんを引っ張ったままズンズン先に行ってしまう。
「じじいを粗末にするでない~」
力ない声が聞こえる。俺も慌てて追いかけた。
「これは美味じゃ!これも!これも!」
「まあ、嬉しいわ。どんどん食べてくださいね」
ご飯とおかずのあれこれをひたすらかき込むスズさん。俺は思わず目を見張ってしまう。あの華奢な体のどこにそんな容量が……。
シンも驚いてるのか心なしか食が進んでないような。
「コウタ、そこの皿を取るのじゃ」
「はいはい」
「うむ、美味い!コウタは幸せじゃな、こんな美味なものを毎日食せるのだからな。儂もここに住みたいのじゃ」
「あら!私は構いませんよ。賑やかなほうが楽しいもの。こうちゃんとシン様もそうよね?」
「……うん、まあいいんじゃない。蔵に帰れとは言えないし」
変な人だけど、悪気のない無邪気って感じがする。悪気がないのって厄介かもしれないけど……。ばあちゃんがいいと言うなら俺もOK。
「なんじゃかその言い方は腑に落ちんがいいじゃろ。許そう。コウタはいい奴じゃ。いつかアレを見せてくれな」
「え……」
「アレってなに?」
ばあちゃんが俺とスズさんの顔を交互に見る。
「アレとはアレじゃ。せっく」
「スズさん!これあげる!!」
コロッケを箸で掴むとスズさんの口に押し込んだ!
「もがっ。もぐもぐ……すまんのう。ちょうどもう一つ欲しいと思っとったのじゃ!それでアレとは、せっ」
「スズさん!これも!あーんして!」
唐揚げを箸に刺してスズさんの口元に向けた。
「なんじゃなんじゃ。儂は子供じゃないぞ。だがいただこう」
パクッとかぶりついてくれた。
「あら、スズ様ご飯おかわりしますか?」
ばあちゃんが空になったスズさんの茶碗に手を伸ばした。
「そうじゃな!大盛で頼むぞ!」
俺はふと思いついて、スズさんのほうに身を乗り出した。
「あ!スズさん、一緒にご飯よそいに行こうよ!好きなだけよそっていいからさ!」
「じじいを働かそうとするとは、じじ不幸者よのう」
あからさまに嫌そうな顔をするスズさん。
「こうちゃん、おばあちゃんが行くからいいのよ」
「いいっていいって!ほら、スズさんちょっとは動かないと!それに俺、たまにはばあちゃんのこと助けないとばあちゃん不幸者になっちゃう」
「屁理屈じゃのう。仕方ない」
俺に腕を引っ張られて、スズさんはため息をつきながら立ち上がった。
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