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2 照路:早起きした日 (R18)

 首のそばで、海戸(かいと)の唇がひらいている。 朝の五時だ。 パジャマに手を入れると、海戸の体温に包まれた。へそを撫でると、喉を鳴らして、海戸が鎖骨に唇をうずめた。近くなって、彼の息の温度が上がった。けだるい熱が下半身に流れていく。  海戸を仰向けにし、服をめくった。薄闇のなか、爪で脇をすべりおり、そこから胸のあたりまで伝った。爪が、小さな引っかかりを覚えた。戻って、その引っかかりを(なら)すように指を動かすと、海戸がうめいた。その乳首に、舌を置いた。舌で、転がす。乳首が元気にとがる。笑うと、海戸の体がびくついた。 「すけべ……」 「充電」 「夜に……」 「夜もしよう」 「……へんたい」 「おれより固くなってる」 「な!」  海戸が両手を突っ張った。肩で押し返し、唇をさがしあてた。やっぱり乾いていた。ガーゼをあてるように唇を重ねると、ささくれがやわらいでいく。海戸がおれの乳首をつまんだ。くすぐったい。 「海戸みたいにはならないよ」 「お、おれだっておまえを喜ばすためにえ――」  乳首を舐め、ズボンに入れた指で亀頭をこすった。声を押し殺した海戸が弓なりになった。 「名演技だね」  おれがちゃかすと、海戸はベッドを出て行った。 「タチだからって調子にのるな」 「関係ないよ」 「攻めるネコだっている」 「ニャーって鳴いてみて」  パジャマで叩かれた。裸になった海戸が、おれのズボンをずり下ろした。おれが上体を起こすと、脚のあいだにうずくまった。静電気のような唾液をまとって、熱を()み上げるようにフェラをする。跳ねた亀頭を、すかさず舌で舐める。  冷水を浴びたように、目が覚めた。  ――上手だ。  はじめてのときも、そう思った。  ⁂  最初、海戸と会ったのは、好奇心だった。その一ヶ月前、はじめて男の娘もののAVでヌいて、興味を持ったのだ。アプリの写真では、海戸は女装していた。けれど実際にやって来たのは、素の海戸だった。泣きだしそうな顔で、彼は言った。 「あの写真はむかし、かれ――恋人に言われてした格好なんだ! いまのおれはあの格好はしてないから、ごめん!」  背中を向けた海戸の手首を、おれは掴んだ。 「メッセージで断ればよかったじゃん」 「こっち」  海戸は人の少ない路地裏に移った。それから口を何度かひらき、眉を寄せて、言った。 「……会ってみたかったから」 「おれに? なんで?」 「なんで……」  いろんな感情に挟まれた顔をして、海戸は下を向いた。  男が男にこんな顔をするのだと、はじめて知った。その驚きに圧倒されて、全身があいまいになった。もう一度、確かめたいと思った。だから、海戸の顎を持ち上げた。    ⁂ 「()!」  わめく海戸を背中から抱いた。冷たい。右手で彼のちんこを握り、左手で口をひらかせた。  「言わなくても全部飲んだんだ。しかもずっと()ってる」 「うるしゃい」    指を噛まれた。脱力が消えた。復活したちんこを、尻たぶに食いこませた。 「ぶちこみたいなー」 「ダメに決まってんだろっ」 「夜は?」 「……夜なら」  海戸の腰が緊張し、おれの右の人差し指が湿った。その指で亀頭をさすると、腰が震え、さらに濡れていく。 「女の服着た海戸、かわいかったなー」  そのひと言で、簡単にしおれかかる。 「でも、やっぱいまの海戸が一番だよな~」  今度は鉄のように固くなる。単純で、いじらしい。  海戸を窓際に押しやった。白くなったカーテンのなか、乳首をつねり、ちんこをしごく。海戸の、吐息のようなあえぎが高くなる。 「なあ……だめだって……よごれる」 「キスして」  片頬を押し上げると、海戸は上体をしなり、薄目で、半開きの唇を差しだした。左腕に、彼の爪が刺さっていた。右手でカーテンを開けた。「いやだ……」の甘い声に向けて、陽ざしをかいくぐり、舌を伸ばした。舌先がふれた。海戸の背中が跳ねた。 「大丈夫。おれがいる」  イッたばかりで痛むちんこを、尻の割れ目にぶつけた。いきおい海戸の亀頭は、窓の結露をすべり上げ、震えながら、果てた。  唇にかぶりついた。合わせたちんこをしごいた。精液でじめついている。逃げようとするケツを叩き、中指を沈ませた。奥のすぼまりが中指をはむ。まつ毛を濡らし、必死にこたえようとする海戸の口づけに、しごく手が速まっていく。海戸が絞りだすように鳴いた。おれは二本のちんこを握りしめた。精液が駆け上がっていった。  ⁂  ベッドに倒れ、あたたかい体を抱きしめた。エッチをすると、海戸の体は驚くほど熱くなるのだ。 「おい」 「海戸相手だと、あんま賢者タイムないんだよな~。海戸もずっと勃ってたね」 「離れろっ」 「窓に出したから恥ずかしいの?」頬を押されて、しゃべりづらい。   「だ、だれもそんなこと言ってない!」 「今度おれも舐めよっか? 海戸のちんこかわいいし」  地雷だった。 「さっさと仕事に行けええええ‼」  行ってらっしゃいのキスはお預けになった。     おわり

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