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2 照路:早起きは苦手でも、秋の朝は好きだったりする (R18)

   ピンと張った空気に息を吐いた。布団から出した左手が、ひんやりしたなかを流れ落ちて、ふくらみに着いた。首のそばで、海戸(かいと)の唇がひらいている。そんな気がする。――唇切れた。と痛がっていた去年の冬。そろそろマスクをさせないと。  海戸の肩に置いていた腕をまた上げて、ボタンを押すと、光った目覚まし時計は5時をさしていた。遮光カーテンがあいている。のぞくレースカーテンは、まだ冬の海に似た色で、海戸の体も、岩礁(がんしょう)のようにうす暗い。    スウェットに手を入れてみると、濃い体温に包まれて、ほっとする。へそあたりを親指で撫でれば、喉を鳴らした海戸が、助けを求めるようにおれの鎖骨に唇をうずめる。体に息が注がれていく。    海戸を仰向けにして、服をめくって現れたあいまいな白肌の、直観であてた乳首を吸った。すぐに立った乳首に舌を強く置くと、それだけで見失うその小ささは、けれど、舌の動きにあらがって、案外たくましく主張してくる。それがおかしくて笑うと、海戸の体がびくついた。 「すけべ、てるじ……」 「充電」 「夜に……」 「夜もしよう」 「へんたい……」 「おれより固くなってる」 「な!」    押してくる両手を肩で押し返し、さがしあてた唇は、やっぱ乾いていた。唇を重ねるたび、ささくれが落ちついて、その手ごたえにうれしくなる。息をもらして、海戸がおれのスウェットのなかで手をさまよわせた。くすぐったい。 「海戸みたいにはならないよ」 「お、おれだって、おまえを喜ばすためにえ――」     舌で乳首をなぞり上げ、ズボンに入れた指で亀頭をこすった瞬間、声を押し殺した全身が弓なりになった。 「名演技だね」   おれがちゃかすと、跳ね起きた海戸は、細い体をもぞもぞ動かして、ベッドを出ていった。 「タチだからって調子に乗るな」 「関係ないでしょ」 「攻めるネコだっている」  「ニャーって鳴いてみて」  スウェットで叩かれた。裸になった海戸が、おれのズボンに手をかけた。澄んだ空気に投げ出された塊が、湿った熱に封じられる。おれは上体を起こして服を脱いだ。広げた足のあいだに、(しら)みだした朝陽よりも白い体が、うずくまっている。唇が上下して、腰の奥からおびき寄せられた快感にうずく先端を、くわえたまま、舌で撫でまわしてくる。    上手だな。  初めてのときも、そう思った。             ☼  彼女と別れて半年が経ったころだ。やけくそな気分で、ヌくとき男の娘もののAVを初めて見た。引っ張った袋が破けるように、気づけば射精していた。  マッチングアプリには、女装した海戸の写真が載っていた。実際に会ったら、いまの海戸がやって来て、叩きつけるようにこう言った。 「あの写真はむかし、かれ――恋人に言われてした格好なんだ! いまのおれはあの格好はしてないから! ごめん! さよなら!」  背中を向けた海戸の手首を、おれは握っていた。 「メッセージで断ればよかったじゃん」 「こっち」  呟いて、海戸は駅から人のいない路地裏に移った。    口を何度かひらき、それから眉をきつく寄せて、彼は言った。 「……会ってみたかったから」 「おれに? どうして」 「どうして――」   絶句したらしい海戸は、おれより華奢(きゃしゃ)でも、たしかに男だった。けれど、泣きだしそうな、怒りだしそうな、そんな表情のなか色づく顔に、おれの心は動いていた。    それがはじまりだった。             ☼ 「()!」  わめく海戸の髪を撫でて、背中から抱きしめた。右手で海戸のペニスを握りこみ、左手で口をひらかせた。 「言わなくても全部飲んだんだ。しかもずっと()ってる」 「うるしゃい」      もごもご答える口に指を噛まれ、追って揺れた舌の手ざわりに、おれのペニスがまた反応してしまう。尻たぶに食いこませる。  「ぶちこみたいなー」 「ダメに決まってんだろ!」 「夜は?」 「……夜なら」  海戸の腰が緊張し、右手の人差し指が湿った。その人差し指で先端をさすってやると、腰が震えて、さらに濡れていく。 「女の服着た海戸、かわいかったなー」  そのひと言だけで今度は、かなしげにしおれかかる。単純明快で、そのいじらしさに、抱き壊してやりたいと思う。海戸を窓際に押しやって、白くなったカーテンのなか、乳首をつねりペニスをしごく。海戸の喘ぎが高まって、外で鳥が笑っている。 「なあ……だめだって……よごれる」 「キスして」        押し上げた海戸の片頬に合わせ、その上体がしなり、目を閉じたまま、半びらきの唇を差しだしてくる。左腕に海戸の爪が刺さっていた。おれは右手でカーテンをあけた。朝陽でいっぱいになった。「やだ……」の甘い声に向けて伸ばした舌先がふれると、海戸の背中が跳ねた。 「大丈夫。おれがいる」  ()ったばかりでズキズキ痛む固いペニスを、海戸の尻の溝にぶつけさせた。いきおい海戸のはち切れそうな先端は、窓の結露をすべり上げると、そのまま熱い液体をほとばしらせた。  唇にかぶりついて、おれは合わせたペニスをしごいた。逃げようとする海戸のケツを叩き、沈ませ、中指を(すぼ)まりに固定した。窄まりをひくつかせ、まつ毛を濡らし、それでも必死に応えようとするキスに、しごく手が速まっていく。そして、海戸の精液でじめついたおれのペニスの付け根から、猛々(たけだけ)しく、白い熱が駆け上がっていった。             ☼  ベッドに倒れた。いつの間にか温かくなった体を抱きしめて、おれは倦怠(けんたい)のなか、澄んだ気持ちで頬ずりをする。 「おい」 「海戸相手だと、賢者タイムあんまないんだよなー」 「おい」 「海戸も逝ったあとも勃ってたね」 「はなれろ!」 「窓に出したから恥ずかしいの?」海戸の手に頬をとめられて、しゃべりづらい。 「だ、だれもそんなこと言ってない!」   「今度おれも舐めよっか? 海戸のちんこかわいいし」  地雷だった。 「さっさと仕事行けええええええ‼」    いってらっしゃいのキスはお預けになった。                                        おわり

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