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5 海戸:遅くなった日はさっさと風呂に入るべし (R18)
「なあ」
「うん?」
浴室のドアに手をかけ、振り返った照路の脇腹に、細いすじができる。
「なんで筋トレしてるんだ?」
「生活にメリハリつくし」
「メシはおれ任せだけど」
「きょうのごはんもうまかったよ」
「きょうは冷凍だ」
照路と駅から一緒に帰って、遅くなったのだ。
「海戸と食べると、全部うまいんだよな~」
「味はまずくてもいいのか」
「海戸が最高の調味料ってこと」
ニヤニヤ笑って、正面を向いたその体は、腹筋がぼんやり割れている。張った胸筋、厚みのある肩、だけど脚は案外細い。鍛えるのが難しいのかもしれない。
照路は週二でジムに通っている。仕事おわりに行くこともあって、ジムを出ると、駅から三〇分の道のりを走って帰ってくる。バスは使わないらしい。
(足の爪伸びてる)
伝えようと上げた顔に、ちんこがのっかった。すえたにおいの向こうで、照路が片笑みをしている。
「勃起した」
「メシの次は性欲か? いい身分だな」
「いまのは海戸が悪いよ」
「おれは筋肉を確かめてただけだ」
「じゃあ」と言って、照路の手が脇にさしこまれる。立たされる。首から足までなぞられる。「はい、勃起」
「せ、生理現象だ!」
「はい、はい」
と肩を抱いてきた腕から、照路のにおいがした。勃起がきつくなった。
オレンジ色の照明の下、シャワーを準備する照路のちんこが、でかい。つい後ろに下がると、湯おけが落ちた。一歩詰めてきた胸板が壁になり、その下のいきり立つそれに、おれのちんこが押し潰され、振り切り、照路の肌にぶつかった亀頭から、刺激が駆けめぐった。声が出た。恥ずかしくて、どっと汗をかいた。咳ばらいすると、鳥肌の上に熱いシャワーが降りかかる。
海戸、と名前を呼ばれ、キスをした。さっき食べたしゅうまいの味がして、それを塗りかえるように舌をからめていく。唾液の音が頭の奥まで高鳴って、照路の手は、水の厚みを確認するように、丁寧に肌に張りついてくる。さわってもらえない場所が、水面でうずく。
「……お湯、もったいない」
「洗ってるんだよ」
「嘘、つくな」
「くび、かた、むね、はら、わき」
ボディソープを広げた手で、順ぐりに撫でつけられていく。皮膚の内側がひりついて、喉が詰まる。出てくる声が高くなって、歯を食いしばると、すかさず舌をさしこまれた。声が、もれた。
「ちゃんと洗わないとな〜」
抱きしめられた。濡れた肌に、照路の体温がしみわたる。髪から、彼のにおいがする。背中を撫でられ、肩を噛まれ、掴まれた尻たぶを叩かれた。ぎゅっと緊張したその窄 まりから、照路の体に潰されているちんこへ、固い芯が貫いた。
「ほら言って」耳打ちされた。
照路の背中でしぶく湯が、目の前をぐちゃぐちゃにしている。照路の舌が、耳を水音でいっぱいにする。引っかかっていた言葉が、こぼれ出た。
「もっと、して」
「へんたいだね、海戸」
照路のちんこで、同じところをねじ伏せられた。抱きしめ合った。こすれ合わせた。溶けそうになると、照路のちんこで焚 きつけられ、さらに固くなって、熱くなっていく。激しくなった口づけがふっと途切れ、尻の割れ目に痺れがはしった。鎖骨の下を吸いながら、照路の指が、尻のあいだを強くなぞる。体が高温になった。骨までふやけそうで、流れるお湯が汗のように思えてくる。
「舐めてあげる」
シャワーがとまった。壁にもたれた。椅子に座った照路の目は、まつ毛の黒い線で、笑っているのに鋭い。値踏みされるような緊張で縛られて、押しだされ、照路の鼻先で、バカみたいに剥 けきった先端をさらしている。
あらい呼吸が反響していた。
「そこ、洗ってない」
「海戸の味、知りたい」
「……へんたい」
「お互いさまだね」
照路からのフェラは、かぞえるほどしかない。臭くないだろうか、嫌われないだろうか、そんな疑念で腰が引けても、壁があって逃げられない。照路が椅子を近づけた。ひらいた脚に左腕を置き、ぐっと身を乗りだすと、照路は、右手で傾けたおれのちんこをくわえた。くわえてすぐ啜 られた亀頭が、唇のあいだではずんで、膝が笑った。前のめりになると、深くくわえながら、照路の頭が迫ってくる。両腕を壁に押さえつけられた。慣れてない。息ばかり吸って吐いている。そんなフェラだ。なのに、照路の息を注がれて、ちんこの芯がたぎっていく。霞 のなかに意識を追いやられていく。照路が頭を引いた。震える亀頭に、舌をうちこまれた。心臓の止まるほどの刺激に、殴られた。
「味、した」
「……気のせいだ」
「ううん」
亀頭をくわえられた。足の指に力が入った。
「水以外の、べつの味がする」
まとわりつく舌で、息で、切迫する芯をいたぶられる。
「もう……むり……」
「だめ」
放り出されたペニスが跳ねて、照路の肩に手をついた。痙攣 する体が、他人の体のようだった。
「かわいいちんこだよな~」
照路の指でつつかれる。彼の脚のあいだでは、腹筋までちんこが起立している。それに呼応して熱気の増した芯が、照路の指を強く押し返した。爆発寸前だった。
「だけどやっぱおれは、こっちが好きなんだよな」
「準備してないぞ!」
「わかってる、わかってる」ひっくり返され、尻を叩かれた。「ネコちゃんの大変さは、よ~く理解してるよ」
外気にさらされた窄まりに、ざらっとした刺激が流れた。上ずった声がにじんだ。歯を食いしばろうとするのに、尻のそこばかり力んで、照路の視線をひしひしと感じる。
「きょうはおれが奉仕する日だね」笑う照路の息がかかった。
ひやりとする舌が窄まりを舐め、その奥の芯を追い立てていく。歯に力が入らない。自分の喘ぎが壁で跳ね返る。さわられたちんこから、熱いものがもれだした。
「イきそうだから……」
「うまいよ、海戸のここ」
照路が自分のをしごく音がした。逆の手がおれの尻たぶをまくし上げる。
「自分で乳首さわってごらん」
「……立てない」
「腰もっと突きだして、――」
からっぽの頭に、照路の指示が響く。壁に、左の耳と肩をつけて、腰を突きだした。両手でつねった乳首から、火花のように快感が散っていく。照路の興奮した吐息が、舌の音が、しごく音が、頭のなかを占拠 していく。全身を揺さぶられている。
――海戸。
光のように、やさしい声だった。
ちんこを握られた。しごかれた。引き締った窄まりを、照路の舌が裂いた。皮膚の剥がれるような快感が、ちんこの先端に集結していった。
――いっしょにいこう。
芯が白い液体となって、闇を砕くように、おれは射精した。
☆
体が泥になった。そんな気がして目をあけると、照路が太陽のようにこちらを見おろしていた。抱きとめてくれたらしい。あいかわらずからっぽの頭に、彼の心配そうな声がする。面白いから、のぼせたふりを決めこむ。二人分の精子のにおいがして、笑えてくる。いまのおれたちをカメラで撮ったら、世界一みっともないかもしれない。
照路の頭に手をまわし、キスをした。
「筋トレ、これからもがんばりたまえ」
おれが倒れた、そのときのために。
おわり
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