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第16話*
「な、んでなの、宏実……なんでそんなに僕のこと、嫌いなん……うう……」
惑乱したようにすすり泣いている綾人。
そんな彼を見たら、今度こそ完全に良心が勝ってしまった。
宏実は一旦動きを止め、初めて正直な気持ちを吐露した。
「好きなんだよ」
「……えっ?」
「好きなんだよ、あんたのことが。我慢できずに夜這いしちゃうくらい」
愕然とこちらを見上げる綾人に、更にまくし立てる。
「十年前からずっと好きだった。十九歳のあんたに一目惚れした。でも俺は当時十歳だったから、何か勘違いしてるのかと思って……。しばらく離れていれば気持ちも落ち着くだろうって思ってた。なのに昨日、久々に生のあんた見たら、また……」
「…………」
「わかってんだよ、俺たちは兄弟だ。こんな関係、絶対あり得ない。あんたへの気持ちは墓まで持って行かなきゃならない。でも、明日あんたが帰っちゃうって聞いたらもう我慢できなかった」
「宏実……」
「言っとくけど、明日帰るなんて許さないからな。今別れたら、次はいつ会えるかわからない。でもこうやって繋がっておけば……もう離れることはないだろ」
「あっ……く」
再び身体を揺すったら、綾人は苦しそうに眉根を寄せた。与えられる刺激に耐えつつ、腕を縛っている紐を引っ張る。
「うっ……! 宏実、待っ……、僕の話も……あっ!」
「……聞きたくない。あんたの気持ちなんて聞いたら最後までやれなくなる。どうせ他のものは手に入らないんだから……せめて身体だけでも、俺にくれよ」
「ひッ……あぁん!」
綾人の細い腰を掴み、激しい抽挿を繰り返す。奥を強く突き上げてやる度に太ももが震え、綺麗に背中が反り返った。
「はは……あんた、随分気持ちよさそうだな。好きでもないヤツにレイプされて感じるわけ?」
「違っ……! 僕は……んんっ!」
「とんだ淫乱じゃん。実の弟に犯されてこんなによがってるなんてさ……」
「っ……違うっ! そ、じゃなくて、僕は、宏実が……あうっ!」
ぜいぜいと喘ぎながら、それでも綾人は必死で言葉を紡ごうとする。
「僕も愛してるから!」
「……えっ?」
一瞬、空耳かと思った。
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