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第17話*
宏実は腰の動きを止めて、上から綾人を覗き込んだ。
「……今更そんな嘘言うなよ」
「嘘じゃないよ。小さい頃からずっときみのことが好きだった」
「どこが。俺みたいなタイプ、弟じゃなくても面倒なだけだろ」
「そんなことないよ……。いや、その前に宏実……これ外して」
仕方なく宏実は紐を解いた。緩く結んでいたからすぐに解けたけれど、うっすらと紐の痕が残っていた。
自由になった両手で貼り付いていた髪を掻き上げ、綾人は少し口を尖らせた。
「縛らなくても逃げないのに」
「……わかんないだろ。あんたはいつだって俺の手の届かないところにいる」
「そう思ってるのは宏実だけ」
綾人が首筋に腕を回してくる。そのまま顔を引き寄せられ、軽く唇にキスされた。
「まったくもう。好きなら好きって正直に言ってくれればいいのに。なんで嫌われたんだろうって真剣に悩んじゃったじゃないか」
「……悩んでたのかよ」
「悩んでたんだよ。特に嫌われるようなことをした覚えがないのに、好きな人に嫌われるってすごいショックだもん」
「…………」
「……でもよかった。『好きな人ほどいじめたくなる』っていう心理、男の子だったら結構よくあることだもんね。さすがにいきなりでびっくりしたけど、好きすぎてやっちゃったことなら理解はできるかな」
……なんて寛大な兄貴なんだ!
「ていうかあんた、随分あっさりしてるな。同じ男……しかも実の弟にこんなことされて、心理的な抵抗とかはないのかよ」
「ないわけじゃないけど、一応僕もこういうことには免疫があるから」
「……は? どういう意味だ?」
「ほら……この業界、結構そっち系の人が多いでしょ? 実際に寝たことはないけど、誘われたことは何回かあるんだよね」
確かに綾人ほどの美貌なら、その気になる男は山ほどいそうだが……。
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