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4 地獄の誕生日
定時に仕事を切り上げ、俺はいそいそと接待の場となる居酒屋へ向かった。
帰り支度の間、隣の席の片瀬がずっと「何かあったら絶対に連絡してください」と、小煩く言っていた。
何かあったとして、上司に連絡することはあっても、部下に連絡することはないだろうに。
そして、接待開始から早1時間、俺は今日来たことを後悔していた。
C商社の社長は、引くほど酒豪でそればかりではなく、飲ませたがりだった。
一定の間隔で「三上君、飲んでるか?」だの「三上君にあれ飲ませてやってくれ」だのと、酒を飲ませようとしてくる。
俺はそこまで酒に強くない。
酒飲み担当として片瀬を連れてくるべきだった。
いや、それはアルハラか。
飲みすぎてぼんやりするどころか、頭痛まで覚え始めた頭で考えた。
「そういえば、噂で聞いたんだが、三上君はΩなんだって?」
隣に座ったC商社の常務だという男に肩を組まれた。
むわっとαの匂いと強烈な香水の匂いが鼻腔をつき、俺は酒もあってか吐き気を催した。
αの香り自体は悪くないのだが、ビジュが悪い!
なんで俺に下心を働く奴らは、αなのにビジュが悪いのか…
それでも、若かりし頃は、α然とした美形だったのだろうか?
影も形もない…、アーメン
「Ωって言っても…、βみたいなものなので…」
かつて、ヒート中は休みを取らないと仕事にならなかった頃は、隠さずに「Ωだ」と取引先にも言っていたのだが、
ヒートが軽くなってから出来た付き合いの取引先には特に明言はしていなかった。
「しかも独身ってことは、ヒートがあるってことでしょう?
辛くないの?」
心配しているように、ではなく、ニヤニヤと面白がっているように言われた。
「いえ。もうヒートもないようなものなので。
更年期ってやつですかね」
面白い話がなくて残念でしたぁ、と内心では嘲笑う。
怖いか?
婚期を逃し、Ωとしての機能も消えかかってる俺が。
「ふーん」と常務は面白くなさそうな顔をしていたが、何か思いついたのか、またニヤリとして「確かめちゃおっかなあ~」と俺の体をまさぐり始めた。
「ちょっ!?」
まさかそんなに堂々とセクハラをされるとは思わず、驚いて体を硬直させる。
気持ち悪い、かさついているのにべたついている手に耐えていると、その手が不意に俺の乳首をかすめた。
「んんっ!?」
俺は小さく声を漏らし、体をびくつかせてしまった。
常務の顔が「面白いものを見つけた」と言わんばかりににやけている。
それから、抵抗する俺への乳首責めが始まった。
マジで最悪…、気持ち悪い…
俺だってかつては恋人が数人いた。
そのうちの1人に、乳首大好きマンがいたせいで、俺のそこはめちゃくちゃ開発済みだ。
今思えば、そいつに責任を取って俺を嫁に貰ってもらうべきだった。
残ったのは独身のおっさん(開発済みの乳首付き)である。
なんてお酒の回った頭で考えつつも、止まらない責めに思わず声が漏れそうになる。
せめて、この場がこの常務一人ならいい。
が、周りには談笑中の得意先の面々がいる。
ばれるのは嫌だ。
何より、こんな場所でも感じてしまう自分が気持ち悪くて吐きそうだ。
早く逃げ出したい…、地獄かここは…
泣きそうになりながら抵抗するが、常務の鼻息が荒くなるばかりだ。
強めにそこを摘ままれ、俺は「いっ…」と声を噛み殺しながらイきかけた。
やばい…、立ってしまう
それどころか、フェロモンが漏れてしまいそうだ。
その時、俺の社用携帯が鳴った。
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