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7 突発

「ここ、触られたんですか?」 敬語に戻った片瀬が、俺の胸に手を添える。 「あ、ああ…」 「…、ふーん」 不意に指が胸の飾りを掠めて、俺は「ひんっ!?」と変な声を出して体をびくつかせた。 「お前!!」 と俺は吠えたが、片瀬はどこ吹く風と言った様子で、また乳首を撫でる。 「やっ、やめっ…! それ、セクハラっ!」 手から逃れようともがくが、全然力の差がありすぎて逃れられない。 「やめろっ、それだめっ!! んんっ、あっ…、やだぁ…」 腰をびくつかせてしまう。 クソ…、元彼の乳首大好きマンのせいで こんな痴態を後輩に見られることになるなんて… 「なんでこんなに感度いいんですか?」 耳元で言われて、それにも体なら反応する。 「耳もやだぁ」 「…ぐ」 そこで片瀬の動きが止まったので、俺は慌てて腕から逃れようとするが、さらにガッチリと抱きしめられてしまった。 「なんで、こんなに感度いいんですか? モテないって言ってませんでした?」 「なんでそんなこと、お前に言わなきゃいけないんだよ!」 「ふーん。別にいいすよ。 職場で三上さんの乳首の感度がめっちゃ良いって言いふらすだけなんで」 「最低だな、お前」 ピシャリと言ったが、片瀬が俺を離す様子がないので、俺はため息をついた。 「乳首好きの元彼がいたんだよ」 「…、へぇ?元彼がいたんですか。 モテないって言ってたくせに」 「はぁ?今はモテないってだけで、20歳の頃とかは普通に…」 普通に恋人くらいいたわ!と言いたいところだけど、結局、男のΩとヤってみたかったって理由で付き合うことが多かったな… 体だけの関係なら、いくらでも若い子の方がいいんだろう。 30超えてからはそういう数奇なやつは1人もいなかった。 「じゃあ、処女じゃないんすね」 不貞腐れたように片瀬が言った。 「処女だと思って俺を笑おうとしてたんだろ? 残念だったな」 「別に笑わないですし」 さらにムッとした様子の片瀬に、俺は笑いそうになる。 ようやく、いつも通りの雰囲気になりそ… 「ひゃん!?」 急に乳首を摘まれて、俺はまた変な声をあげる。 「乳首イキとかできるんですか?」 「ちょっ、やめっ!?あんっ… おまっ、冗談じゃ済まないっんんっ、ぞ」 何を言っても手が休むことはなく、ひたすら乳首を責められる。 ジンジンした疼きと快感で、俺は喘ぎながら、腰を震わせてイってしまった。 「やめろ、片瀬っ。も、イったからっ」 手が離されて、俺はその場にへたり込んだ。 最悪だ。 後輩に乳首弄られて、イった上に勃ったんだが… それに気づかれたくなくて、俺は前屈みで俯いた。 「お前、本当に最低」 「そんなこと言って…、イッたじゃ無いですか。 気持ち良かったんですよね?」 「本当に最低だな! C商社の常務と同じじゃねえかよ!」 「…、それはすいません。 自分の感情をコントロールできませんでした」 「うう…」 悔しさでグスグスと鼻を鳴らしていると、再び抱きしめられた。 「三上さん…」 名前呼ぶな!俺は怒ってるんだぞ。 本当にこんなやつ嫌いだと思うのに、匂いがいい…、ずっと嗅いでると頭がポヤポヤするような… その瞬間、ブワッと体が熱くなった。 な、なんだこれ!? ヒートか?? 「!?」 片瀬も俺の変化に気付いたようで、ばっと体を離された。 「ヒートだったんですか!?」 「え、あ、そういえば、そろそろかも?」 「早くっ、抑制剤飲んでください!」 「あ、ああ、悪い」 そう言って俺はいつもの抑制剤を飲んだ。 が、普段のようなすっと熱の引く感じがない。 それどころか、部屋に漂っている片瀬の香りに俺の体はさらに熱くなる。 「あっ…、片瀬ぇ…、熱いの止まんない…」 自分が相当だらしない顔をしている自覚はある、が、本能は抗えない。 今すぐ抱いて欲しい。 腹の疼きを止めて欲しい。 俺はフラフラと片瀬に向かって歩く。 「ダメですって! とりあえず、俺は帰ります。 てか、ヒート近いのにαがいる場所に行ったり、αを部屋に上げるとか、何してんだよ! 頼むから、しっかりして下さい」 軽く突き飛ばされて、俺はソファに腰を下ろした。 そんな俺を一瞥すると、片瀬は袖で鼻を抑えて俺の部屋を出て行った。

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