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8 異国の

それから、大事をとって翌週の木曜まで休みをもらった。 久々のヒート休暇だ。 その間、俺は久々の抑制剤で抑えきれないほどの性欲に悩まされた。 そして、熱が引くと同時に、頭の方も冷静になって来て、片瀬にやってしまったことを思い出して頭を抱えた。 どんな顔してアイツに会えばいいんだ… それでも出勤日はやってくるし、片瀬と顔も合わせる。 「おはよう」 「…おはようございます」 とりあえず挨拶はしたが、片瀬は何か言いたそうな顔をした後に、渋々挨拶を返した。 先週は悪かったな、と言えればいいのだが…、できればあの日のことは掘り返したく無い。 とりあえず、知らんぷりを使うことにした。 それから、あの日のことを言われる方は無かったが、片瀬は必要以上に俺に声をかけなくなった。 し、俺も特に声をかけなかった。 やっぱり、おっさんが発情してるのキモかったよな… それが正しい反応だ。 ちょっと傷ついたけど、これが本来の上司と部下の関係性なのかもしれない。 そんなある日、俺はまたも接待でパブに連れてかれていた。 ちなみにC商社の件は、片瀬が何か言ったのか、接待や社外での交流は無しになったらしい。 部長から直々に参加しないように釘を刺された。 まあ、正直、あの常務と二度と会いたくなかったので助かったけど。 そのパブは、キャストが外国人であるようで、カタコトで話す、やけに距離感の近い女性ばかりだった。 連れて来てくれた、取引先のおじさんがフィリピン人の女の子に夢中になっている。 おじ曰く、「推し」なのだそうだ。 嫁よりもリアクションの大きい無邪気な彼女の方が、最近は可愛くて仕方がないらしい。 俺は若すぎる女性にあまり興味がないため、少しうんざりしていた。 「お酒、貰ってモ、イイカ?」 目の前に立った若いキャストに言われ、俺は「ど、どうぞ」と返した。 「アリガトね」彼女はそう言って、自分でハイボールを作り、「イタダキマス」と口をつけた。 おじがフィリピンの女の子に夢中になっている間、その子が俺の相手をしてくれた。 どうやら、最近日本に来たようで、他のキャストよりも日本語が不自由なようだった。 なんとかカタコトと単語ばかりの会話で、彼女が27歳でベトナム出身のトゥイちゃんであることが分かった。 日本語をもっと勉強したいが、お客さんはより喋られる子の方を気にいるので、なかなか指名して貰えないとのこと。 そんな彼女の悩みを聞きつつ、おじさんが大分酔ってきたので、その日は退店した。 その子と再開したのはそれから3日後の近所のスーパーだった。 仕事終わりにスーパーで買い物をしていると、なにやらカタコトの人と店員さんが言い争っているなと思って見たら、トゥイちゃんだった。 話が噛み合っておらず、俺は見捨てるのも悪い気がして、思わず割って入った。 どうやら、レジでの支払い金額が足りなかったようだが、数百円だったので、俺が財布から出すことにして場を納めた。 「アリガト、お前、優しイ」 と、日本人なら絶対感謝してないだろって文法で感謝を述べられたけど、あの日、様々な苦労話を聞いていたので全然気にならなかった。 それで、お店で会ったことや俺の名前を再度教えることにしたら、彼女も思い出したようで、パッションでなんとか会話をした。 また助けて欲しいと言われ、俺は彼女と連絡先を交換した。 それから、度々電話したり、ご飯を食べに行ったり(もちろん、俺の奢り)、パブにたまに顔を出すようになった。

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