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21 和解
「それで言ったら、俺は穴としてすら価値がないんだけどな!」
茶化して言ってみたが、片瀬は全く笑わなかった。
「怒らせたなら謝る。すまない。
俺のシモの世話なんかしたくないよな」
「そう言う意味じゃないです。
番を抱きたくないαなんているわけないし」
じゃあ、なんで怒ってるんだ…?
本気で分からなくて、真意を探ろうと片瀬を見る。
「三上さんって37年も生きて、なんでこうも鈍感なんですかね?
好きだから番になったし、結婚もしたいって言ってるんですけど」
「…、え?ええ!?」
俺は驚いて立ち上がった。
は???
この完璧なイケメンの若いαが俺を好き!?
「え、な、なん…、え、どこが?」
「落ち着いて、座ってください」
そう言われて、とりあえず座る。
が、本当に訳がわからない。
俺のどこに好きになる要素がある?
…、たぶん、フェロモンの相性が良すぎるんだ。
それで、脳が好きだとか誤作動を起こしているに違いない。
「と、とりあえず分かった。
でも一旦、結婚は保留にしよう。
ちょっとあまりにも突飛すぎる」
「そこまで言うならそれでいいです。
俺にとっては全然突飛でもないですけど」
「俺、なんかもう頭ぐちゃぐちゃで…、帰っていいか?」
「泊まっていけばいいじゃないですか。
初夜やりましょう」
「やらない!!!」
そう言って逃げ出そうとしたが、案の定捕まり、俺は風呂にも入っていないのに、ベッドに投げこまれた。
「本当に待ってくれ!
せめてシャワーをっ」
「三上さん、まだ完全にヒート明けてないですよね?ずっといい匂いしてます。
風呂なんか入らなくてもいいです」
俺の上に乗った片瀬が、俺の首元をすんすんと嗅いでいる。
本当におっさんなんだって、俺!!
「やめっ…、やだ!!今は無理!!」
どんなに抵抗しても、全く聞いてもらえずに、あれよあれよと言う間に身包みを剥がれ、堕とされた。
散々抱き潰した挙げ句、俺をがっしりとホールドして寝落ちた片瀬。
つーか、今日、月曜日なんだけど…
そう思いながら、俺も体力の限界を迎え、寝落ちてしまった。
目が覚めると、奴の腕の中だった。
この光景、2度目だな…
ぼんやりと思って、また拘束を外そうとするが、今回は奴も目を覚ました。
「おい、離せよ。
一旦家に帰らないと…」
「やだ。もう少し」
「この歳で、朝帰りです!って格好で出社したくないんだよ!
いいから離せって。お前は寝てていいから」
「だめです。
前回、起きたら番がいなくなってて、俺がどれだけ傷ついたか分かりますか?」
「…え?」
「悲しかったなー」
「…、分かったよ。
その代わり、シャツ貸せよな」
「サイズ合うといいですね」
「…、可愛くねえ部下だな」
悪態をついたのに、片瀬は満足そうに笑うと、俺を抱き込んで眠りについた。
ずっと匂い嗅いでるのが気になる。
普通におっさんの臭いがするだろ…
今だに嗅がれるのは慣れないが、片瀬の心音と体温に俺も、うっかりまた微睡の中に戻る。
案の定、ギリギリの出社になったのは言うまでもない。
絶対に平日の前夜にコイツの家に泊まるのは止めようと思った。
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