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22 旅行の誘い
とりあえずは付き合うと言うような形になったらしく、俺としてはそのままの関係で良いのに、何かにつけてデートやら家やらに誘ってくるようになった。
挙げ句、会社に「俺たちが番だって報告しましょう」とか言ってくる。
なんとか宥めて止めておいたけど。
それと、避妊をしてくれなくなった。
なんて言ってもゴムをつけようとしてくれなかったから、理由を絞り出して「まだ2人の時間を過ごしたい♡」と言って、何とか付けさせたけど。
あの時の自分を思い出すと、頭が痛くなるけど…
もうそろそろクリスマスかと言う頃、片瀬から「雪山行きませんか?」と提案された。
「雪山…?」
「仲間内で、恋人同伴のスキー旅行行こうって話が出て…、三上さんも行きません?」
「いや…、俺、スキーとかできないけど」
「…、スノボもっすか?」
「スノボなんて触ったこともない」
「…、俺、教えますから!
あと、温泉もあります!」
「いや、未経験者のアラフォーをそれで釣れると思うなよ?
しかも、どうせ全員、お前の同世代だろ?」
「まあそうですね。
俺らくらい離れてるカップルはいません」
「じゃあ、若者同士で楽しんでこいよ。
それに、他の人も俺に気を使うだろ」
俺は再び、片瀬の部屋にあるルームシアターに目を向ける。
絶賛、お家デート中だ。
いや、言い直そう。
片瀬の家でサブスクの映画鑑賞会中だ。
「友達は割と三上さんを見たがってますけどね。
それに、スノボ出来ない人も来ます。
そいつらが教え合ってイチャイチャしてる中、俺だけ1人で滑るの嫌なんですよ…」
それが本音かよ。
「お前がぼっち回避するためにおっさん巻き込むのやめろよな。
しかも俺、上司だからな」
「三上さん…、お願いします…。
来てくれないってんなら、寂しくて、会社で番の話しちゃうかもしれません」
「お前…」ジトーっと片瀬を睨むが、こいつもなかなか頑固なんだよな。
このわがままを通す感じ、絶対末っ子か一人っ子だろう、と他に失礼なことを考える。
「分かったよ。けど、俺はロッジから出ないからな」
「いいんです、とりあえず三上さんの本体があれば!
いくらでもレンタルはできますし」
嬉しそうな顔をして、携帯を操作し始める。
おそらく、参加の連絡を友達にしているんだろう。
絶対に滑らないけどな、俺は。
少しでも転んだら軽傷では済まされない歳なんだからな。
日付や旅行の詳細を聞いて、俺は念の為、携帯のスケジュールにメモをする。
本当に20代の若者の遊びに、俺なんかが行っていいんだろうか?
俺を見たがってる友人というのも、冷やかし目的で、片瀬が弄られてしまうんじゃないかと不安だ。
少し、見た目に気を遣っておこうかなと、旅行までの数週間の間にしておくことを考える。
片瀬にとっての黒歴史にならないといいんだが…
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