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23 騙された
予定していた日になり、片瀬の友人が片瀬の家に大型のワゴン車で迎えにきた。
俺は、片瀬から頼みこまれたため、奴の家に泊まっていた。
向かうメンバーは俺たちを合わせて6人の、3組のカップルだ。
他の2組もαとΩだが、男女のカップルだ。
車に乗り込む前に「初めまして。三上です。同行させてもらってありがとうございます」と挨拶をした。
とてもにこやかに他の面々も挨拶を返してくれた。
真ん中の列に片瀬と並んで座る。
「三上さんに会えて良かった〜。あの片瀬が年上の、しかも男性と付き合ってるって聞いて気になってたんですよ」
「ね。社会人になってから、全然浮いた話とか聞かなかったから気になったよね〜」
と、俺たちの後ろに乗っていた男女に声をかけられる。
「ははは…、どうも」
なんと言っていいか分からず、曖昧に笑った。
やっぱり場違いな気がする…
片瀬が、俺たち2人にしか分からない話題を振ってきたので、そこで後ろの2人との会話は途切れた。
後ろの2人もなんでもないことのように、そのまま2人で会話を再開していた。
「三上さんって、雪とかみたことあります?」
「いや…、まあ、降ってるのは年に数回見るけど、ずっとこっちに住んでるからな」
「今から行くスキー場、俺の地元なんですよ」
「へぇ…、それは知らなかった。
結構雪国なんだな」
「はい。三上さんも楽しんでくれたら嬉しいです」
「…、俺は滑らないからな」
「…、はーい」
そんな会話をしていると、前の助手席に座っていた女の子がふふっと笑った。
「私たち、大学からの友人なんですけど、そんなふうに喋ってる冬馬見るの、初めてかも」
「なまじモテるから、冬馬って結構冷たい感じだもんな」
そんなふうに前の2人が盛り上がっていると、片瀬が「おい。冷たいとか言うのやめろよ」とムッとしていた。
社内では片瀬は若手だから、タメ口で遜らずに喋っているのは確かに俺から見たら新鮮だ。
まあ、感情が昂ってる時は、俺にも普通にタメ口きいてる気もするけどな。
たびたび休憩を挟みながら、車は走り、2時間くらいしてようやくコテージについた。
なんと、泊まりらしい。
まあ、スノボをした後に2時間運転するのは大変だろうしな。
荷物を下ろして、整理していると、他の5人はウェアを着込んできた。
隣で準備万端の片瀬に「もう滑りに行くのか?」と聞くと「もちろん」と爽やかな笑顔を返されて閉口した。
やはり、若さというのは恐ろしいな。
「さ、三上さんも行きましょう」
と、片瀬に手を引かれ、スキー場に連れてかれた。
いや、俺、普通に普段着にコートなんだが?
暖房の効いた建物のような場所に座らされ、片瀬が受付に行った。
なんか利用料の支払いでもしているのかと思い、俺は近くのお土産売り場のような場所を眺める。
「これ、三上さんのです」
数分後に戻ってきた片瀬は、ウェアと靴と板を俺の前に差し出した。
「え?」
「レンタルしました」
「いや…、俺は…」
「もう支払ったんで!」
「…」
こいつ…
俺は「使わないと勿体無いっすよ」と他の面々にも言われ、泣く泣く数分後には板まで装着していた。
騙された…
帰りたい…
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