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27 許す許さない
そのコテージは一軒家のようになっていて、
リビングとキッチンの他に部屋が4つあり、
それぞれのカップルがいいなと思った部屋を
選んでいた。
俺たちが選んだ部屋に連れてこられる。
「なんで元彼と一緒にいたんですか?」
「いや、それはその、誤解だらけなんだ。
あいつに会ったのは本当にたまたまで、っていうか、付き合ってなかったし。
高校卒業以来、会ってなかった」
「付き合ってないのに、どうしてわざわざ、付き合ってたとか言ったんです?」
「しらねぇよ。
まあ、その、セフレ的なアレだった期間はある…、から、それのことかな?」
言うつもりはなかったのに、疑いの目でじーっと見られてしまい、俺は吐露した。
「はあ?高校以来会ってないってことは、高校の頃、セフレだったんすか?」
痛いところをつかれ、俺は「う、うん」と頷いた。
「若い頃ってほら、好奇心があって…、それで利害が一致して…」
「それ、元彼より厄介じゃん」
「?」
元彼より厄介?
意味がわからなくて俺は片瀬を見上げる。
「まあ、そいつが誰であろうとどうでもいいけど、なんで俺との約束を守ってくれなかったんすか?」
「いや、本当にすまない。
俺ももう少し滑れたら、片瀬は楽しめるかなって思って、練習しようとしたんだ」
俺は気まずすぎて片瀬の顔が見られず、自分のつま先を見ながら言った。
ため息が聞こえ、体がビクッとした。
怒らせたことは分かっていたけど、呆れられてしまったのだろうか…
ますます俺が俯くと、片瀬に抱きしめられた。
何が何だか分からずに「え!?」っと戸惑っていると、さらに腕に力を込められる。
「三上さんに悪意がないことは分かってるんですけど、流石にデリカシーがなさすぎません?
他の男とイチャイチャしながら、俺を置いてスノボデートしてたら傷つきます」
「デートじゃねぇよ!スノボ教室!」
「だとしても、俺が教えられるのに、他の男と練習して上手くなられて、嬉しい訳ない」
「そ、そういうものなのか?」
俺は、デリカシーがないと言われたことにイマイチ納得がいかない。
こそ練してサプライズで、一緒のコースとか行けた方が嬉しくはないのか?
セフレのような、体目的の男たちとは絡んできたのに、キチンとした恋人がいなかった代償がここで出るとはな…
「ハチ…、友達にも言われたよ、男心が分かってないって。
情けないよな。
37歳にもなって一回りも下の部下を傷つけるなんて」
「今日は部下じゃないし、後輩でもない」
「え、あ、うん…
その、この歳で恋人とか言うのが恥ずかしいと言うか…、長らくいなかったから…」
「そういうことなら、多少のデリカシーのなさは許します。
でも、変に気を遣って俺から距離を取ったら許しません」
「う、うん?善処する」
片瀬は俺を揺らしながら「本当に分かってんすか?」と笑った。
ゆ、許してもらえたのか?
「か、片瀬、俺も少しは滑れるようになったし、そろそろゲレンデに戻ろ…」
「まだ落とし前つけてもらってませんよね」
「落とし前!?」
なんだその物騒な言葉は。
え、何を差し出せば許してもらえる訳?
「お前、さっき許すって言って…ー」
「それは俺を彼氏と紹介しなかったところです。
元セフレとイチャイチャしてたのは許してません」
「ちがっ!…、くはないけど、イチャイチャはしてないって!
ストイックに練習してた!!わっ!?」
俺は必死に弁明したが、片瀬はどこ吹く風と言った様子で、俺をベッドに放り投げた。
清潔そうなベッドの上で俺は跳ねた。
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