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40 退院

それから、1週間ほどで退院することが出来た。 片瀬はすぐに職場に復帰したようで俺の見舞いもかねて、仕事の進捗状況も教えてくれて、焦ることなく療養できた。 「俺、課長補佐っていう肩書もらったんで、三上さんが復帰したら今まで以上に補佐します!」 と、片瀬は意気込んでいた。 俺としては、こいつが戻ってくるだけでかなり助かるから肩書はどうでもいいんだけどな。 退院は俺の母親が付き添うことになったが、片瀬も同伴した。 母と会うなり「この度は秋さんを傷つけてしまい、誠に申し訳ございません!!」と頭を下げ、菓子折りを差し出した。 母は、片瀬の勢いに圧倒されつつも、まだ何か言いたげにしていた。 が、「必ず、近々ご挨拶にお邪魔させてください」と言い、片瀬コーポレーションの名刺を差し出すと、瞠目して黙り込んでしまった。 わざわざ実家の方の名刺を持ってくるとか、確信犯だろと思い、ジト目で睨んだら 「荷物重いですか?」 と、鼻歌でも歌いそうなノリで言われ、右手で俺の入院で使った荷物を持ち、左手を俺の片手に絡めた。 「まっ…!?なんで手を繋ぐ必要がある!?」 と喚いたが、「もう片時も離したくないんで」と寂しそうに言われると閉口するしかなかった。 久々に帰った家は中々に荒れていて、だいぶうんざりした。 固まっている俺に「手伝いますか?」という神の声がかかった。 二つ返事でお願いして、夕食の時間には片付けることができた。 片瀬が退院祝いと言って、晩飯は寿司を宅配してもらったが、お互い久々に体調が良いからか、全然足りず、ピザも注文し直した。 「なんか久々に美味い飯を食べた… 」 「久々に料理の味がしました」 …、俺が病院食を食べている間、こいつは実家の金で高い飯は食べていたんだろうな。 贅沢な奴め。 当たり前のように泊まるつもりでいる片瀬に引っかかりつつも、今日くらいは許してやろうと思い、一緒に布団に入った。 「流石に今日は手を出さないんで、ゆっくり眠ってください」 そう言いながら、腕はしっかりと背中に回されている。 「おい」と、俺がすかさずに突っ込むと 「これくらいは許して欲しいんですけど」と 腕に力を込められた。 しょうがないかとため息をついて、瞼を閉じる。 が、回された腕の熱さや、久々の片瀬の匂いや息遣いに、なんだか変な気持ちになった。 やばい…、勃ちそうだ。 ちらりと目の前の片瀬の顔を見上げる。 暗いのに片瀬の目がしっかりと俺を見ていた。 それはもう穴が開くくらい。 「あ… 、うう…」 そんな目で見られたら、ぶわっと俺からフェロモンがでた。 我慢するなんて無理だろ。 でも、片瀬は頑なに手は出すまいと我慢しているようだった。 「手、出して良いから…、だからっ」 言い切る前に、待ってましたと言わんばかりに唇が奪われた。 それから、俺も貪るように応じて、良い歳なのにヒート中かってくらい盛り上がってしまった。 念の為、退院日の翌日まで休みをとっていてよかった。 片瀬はというと、ほとんど寝ていないくせにめちゃくちゃ生き生きと出社して行った。 昨日より元気そうに見えるのが怖い。

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