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43 悶々

「この映画、面白かったですね」 片瀬が嬉しそうに言ったが、俺は放心していて「そうだな」としか言えなかった。 「寝ますか?」と、片瀬は気にする風でもなく行った。 おそらく、今日1番言いたかったことが言えて、ほっとしているのだろうな。 俺の気も知らないで… 「1週間、疲れたもんな」 と俺は言い、さっさと洗面所に向かい、歯磨きを始める。 片瀬が「三上さん用に買いました」と嬉しそうに差し出してきたお揃いのコップとブラシで。 片瀬は後ろにぴったりとくっついて歯磨きを始める。 あまりに嬉しそうなのが癪だが、会えていなかった時のやつれ具合を思い出すと振り解くのも悪い気がしてそのままにした。 うがいを終えると、かたせが手を繋いで寝室に向かう。 ベッドに入るなり、すごい力で抱きしめられた。 「片瀬、苦しい…」 筋肉量とか体の脆さとか違うんだから、気をつかってほしいところだ。 「腕に中に秋さんがいるってだけで、幸せで締め殺しそうです」 「おい!殺すな!」 と、慌ててもがいたが「冗談です」と封じ込められた。 笑える冗談にして欲しい。 「今日、シても良いですか?」 と控えめに聞かれた。 別に構わないけど…、先週もかなり盛り上がってしまったしな… 俺が考えていると、肯定と見なしたのか、服の中に手が侵入してくる。 「なっ!?良いって言ってない」 「ダメとも言ってないじゃないですか。 もっと素直な秋さんが見たいなぁ」 まるで俺がやりたがってるみたいに言うな。 俺はじっとりと片瀬を睨み「今日はやらない」と押しのけた。

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