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46 過労死!?
金曜の夜に帰宅すると、部屋が真っ暗だった。
あれ?片瀬、外出してんのか?と思いつつ、ちらりと片瀬の作業部屋を覗く。
あれ?PC点いてる…?
部屋に足を踏み入れると、PCの前で突っ伏している片瀬がいた。
「し、死んでる!?」
慌てて駆け寄ったら息はしていて、どうやら疲れて寝てしまったようだった。
まあ、気絶かもしれないけど。
ここのところ、会話も挨拶を交わす程度しか関わらないくらい仕事詰め詰めだったもんな…
とりあえず、過労死だけは辞めて欲しいなと思いつつ、ブランケットを肩にかけた。
起きたら何か食べられるように2人分作るかと、久々にキッチンに立った。
休みの日は手伝ったりはしているが、「家事は俺がしたい」という片瀬の言葉に甘えて、この家でキッチンに1人で立ったのは初めてかもしれない。
1人で飯を食べていると、バタン!と大きな音が片瀬の部屋からして慌てて「大丈夫か!?」と扉を開けた。
真っ暗な部屋で這いつくばる片瀬と目が合った。
「椅子から落ちたのか!?怪我は?」
と駆け寄る。
「秋さん…、俺、また飯作ってなかった…」
片瀬は呆然としている。
だから、それくらい出来るっての…
「飯くらい自分で作れるって。
お前の分もあるけど、一緒に食うか?」
「…はい」
片瀬はまだ凹んでいたけど、なんとか床から起き上がった。
夕飯は作ってなかったとはいえ、掃除や洗濯はやっているし、在宅の仕事もしているんだから、何もそんなに落ち込むことないのにな。
片瀬は「秋さんの手料理、美味しいです」と言いながら、完食した。
食いっぷりからして、果たしてこいつは昼食を取っているのだろうか。
「お前ほど美味いものは作れないけどな。
この程度ならいくらでも作られるんだから、家事を背追い込まないで欲しいんだが」
「背負い込んでなんかないです。
秋さんの衣食住を俺で満たしたいだけです」
αの本能なのか分からないが、俺にはその感覚が理解できず「そうか」としか言えなかった。
「でも、今日みたいに気絶したり、ぶっ倒れたりは流石に不味くないか?
在宅で過労死なんて聞いたことがない」
「心配をおかけしてすみません。
でもこれはなんというか…、秋さん不足って感じなので。
土日に補給できるように仕事、全部片付けました!」
褒めてくれと尻尾を振る犬のような顔で言われた。
補給…、って何だ?
俺の予想が正しければ、俺の体が持たなくないか?
「それに、秋さんの発情期、そろそろじゃないですか?」
「人の周期を勝手に計算するな!!」
俺は恥ずかしくなり、そう叫んだ。
「他人じゃなくて恋人なんで。
家で発情する分には、俺がいつでも面倒見られるんで、安心してください」
「…」
今だに番と過ごす発情期に慣れない。
若かりし頃のヒートは、それはそれは持て余すほどαを欲して発情していた。
だが、今のヒートはとにかく片瀬が欲しくなってしまうのだ。
ヒートが明けた瞬間の気恥ずかしさと言ったら…
それを思うと、なんだか気軽に任せた!と頼り切る気持ちにもなれないのだ。
周期的には明日か明後日には来そうだ。
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