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52 理由
披露宴前に俺は何故か、家族控室で待機することになり、早々に片瀬の両親に挨拶した。
片瀬コーポレーションのHPに顔が載っている人だ…、と恐縮する。
なんか企業とかの偉い人ってオーラがあるよな。
俺がガチガチに固まっていると「君とはビジネス抜きの関係…、つまりは家族になるんだからそんなに固くならないでくれ」と笑われた。
奥さんが「そんなこと言ったらもっと萎縮しちゃうわよね」と笑いかけてくれた。
俺はというと、営業で培った作り笑顔すら上手く発揮できず、苦笑いをするしかなかった。
本当にこんなやつが、優秀な息子さんの番で本当に申し訳ない。
「三上さんには本当に感謝しているんだ。
あんなに頑なに家業には関わらないと言っていた冬馬がうちに戻ったんだからな」
そんな話は聞いたことがなかったので「え?」と気の抜けた声が漏れた。
「ちょ…、その話は秋さんには…」
と、片瀬が話を止めようとしたが、お母様が「あら、いいじゃない」と言って続きを話してくれた。
「三上さんを家に囲い込んで外に出さなくても、自分1人の収入でも贅沢させてあげられるようにしたいって言ってうちに入ったのよね」
「そうそう。自分で新しい企画まで立ち上げてな。
少々冷めたところがあって見どころがない奴だと思っていたが、まさかこんなになるなんてな」
と、片瀬のご両親が頷きあっている。
いや、美談みたいに言ってるけど、俺を囲い込むて何だ?
前の職場で、自分のデスクに座ることすらままならないくらいに人気になったからだって言ってた気がするけど。
まあ、こっちが本音だろうな。
事実、俺は囲われてなんかないし。
12歳上の番を認めてもらうために良いように嘘をついたのだろうと納得して片瀬を見る。
「キモい理由ですみません。
そろそろ立ち上げた企画が安定して収入が爆上がりするので、安心してください」
と言われて俺は凍りつく。
え…、嘘だよな?
確かめようとした瞬間、スタッフの方に呼ばれて控室を出る。
式が終わったら確かめよう…、いや、冗談じゃなかったらとても怖いな。
ちらりと片瀬を盗み見ると、目が合い、「俺たちの式はもっと良いものにしましょうね」と微笑みかけられた。
それから、式は進み、お色直しのためのご歓談タイムになった。
ゲストたちの華々しいドレスや綺麗にセットされた姿が、まってましたと言わんばかりに片瀬やその両親に群がる。
みんな、華やかだな…
特に女性はドレスやヘアセット、小物なんかにかなりの拘りを感じる。
綺麗な人ばっかりだ。
話しかけられている片瀬が「今日は番同伴しておりますので」というたびに、人々の目が俺に注がれ、様々な思惑の籠った目で見られる。
「素敵ですね」とか「そうだったんですね」と笑顔で答えてはいるが、
「なんでお前が?」とか「釣り合ってない」という考えが透けて見える。
気持ちがわかるから、俺も小さくなるしかなかった。
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