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55 見たのか

風呂から上がると、片瀬がソファに座り、肘をついて頭を抱えていた。 え…、なに?寝てる?…、わけじゃないよな? 「体調悪いのか?もう寝るか?」 俺がそう言いながら近づくと、ガッと腕を掴まれた。 驚いて体がビクッとしてしまった。 「な、なに?」 「八幡さんと会ってるんですか?」 「え?ハチ…?なんでハチ?」 「誤魔化さないでください」 真剣な顔で言われてたじろいでしまう。 誤魔化すとか言われても、本当になんでハチの話が出てくるのかわからない。 「本当に分からないんだが」 俺が困惑していると、手を離した片瀬が俺の携帯を差し出した。 不思議に思って画面を開くと、ハチとのトーク画面だった。 ラインが2件きている。 こないだの話、本気だったのか… 返信したくない。 っていうか… 「人の携帯見たのか」 俺が冷たく言うと、片瀬はびくりと肩を揺らした。 「たまたま通知が見えて…、気になってしまって…、すみません。 でも、本当にいつもは見てないです!」 そんなこと言われたって、今日見たってことは俺のことを信用してないってことだ。 それが、俺にとっては心外だった。 俺はこんなにモテる片瀬の携帯を確認したことはない。 まあ、信頼というよりは、俺みたいなのが片瀬の行動を制限するのは身の程知らずだと思っているからだけど。 「ハチはただの友達。 こないだ実家に帰ったとき、地元で買い物してたらたまたま会っただけ。 誘いも断ろうと思っている。 これで満足か?」 俺がそう言うと、片瀬は泣きそうな顔で俺を見た。 なんでお前が泣きそうなんだよ。 勝手に疑われて、責められている俺の方が泣きたいわ。 「疑ってすみません。 俺の携帯も見てい…」 「見ないよ。俺は気にしてない」 俺は顔を逸らして、寝室に向かおうとする。 するとまた、手を掴まれた。 「秋さんっ…」 「…、何?」 冷たく言おうとしたが、本当に泣きそうな顔をしているので、優しい言い方になった。 「好きです」 「お、おう?」 真っ直ぐ言われると正直、照れる。 何回も聞いたし、知ってる。と言いそうになるが、流石にそっけないかと思って踏みとどまる。 いつもはそれで終わりなのに、片瀬は眉根をギュッと寄せると、立ち上がって俺の手を掴んだまま寝室に向かう。 え?なんか怒ってるのか? 勝手に携帯見たのは片瀬なのに? コロコロと態度が変わる片瀬に俺は困惑していた。 それでも、力の差は歴然で、ついていくしかないんだけども。

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