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61 旅行の記録:追記

見たかった観光地を巡り、少し時間があったので紹介された神社に来てみた。 仲居さんが言った通り、手水舎やそこここに季節の色とりどりの花が飾られていた。 花には疎いので、なんの花か分からないのが少し惜しい。 「本当に綺麗だな。こりゃ映えるってやつだ」 俺が感心しながら写真を撮っていると、「2人のも撮りましょう」と片瀬が言う。 夕方とはいえ、その神社は人が沢山いた。 こんなところで写真撮ってるの見られたくないんだけど… と、渋っていたら片瀬が強引に内カメで写真を撮った。 見事な半目である。 「おい!せめてもっとマシな顔で撮れよ」 「十分可愛いですけど?」 と言い合っていると「良ければ撮りましょうか?」と女性2人組に言われた。 「良いんですか?」と片瀬が反応する。 「ええ、もちろんです。 代わりに私たちも撮ってほしいのですが」 そう話すハキハキとした女性の後ろで、少し照れたように彼女の裾を掴む控えめな女性がいた。 俺の視線に気づいたのか、ハキハキした女性が「私達も同性カップルなんです。私がαで彼女はΩです」とほほ笑んだ。 「素敵ですね」と片瀬が言うと、「お2人も素敵ですよ」と彼女もほほ笑む。 後ろの女性も照れていながらも、嬉しそうだった。 お互いにそれぞれの携帯で写真を撮り、解散した。 「素敵なカップルだったな」 その後ろ姿を見送りながら、俺はポツリと呟く。 お似合いの、思わず応援したくなる2人。 「俺たちも、はたからはああ見えてますよ」 「…、そうか?」 「そうでしょう。だから、声かけてくれたって俺は思います」 見るからに歳が離れていることは分かるし、見た目もスペックも、明らかに差がある。 つり合いは取れていないだろう。 「片瀬に似合う美男美女はいくらでもいるだろう」 「そんなっ」 と、反論しかけた片瀬を手で制す。 「でも、俺にはお前しかいないしな。 それにもう人目とかなるべく気にしないようにしようって思ってる」 「秋さん…」 片瀬が手を広げて、抱き着くモーションに入ろうとしていたので「外ではやめろ」と釘を刺しておいた。 どうせ結婚を諦めていた身だ。 もしも、すぐに自分にバツが付いたとしても、良い経験だったと思うことにしよう。 旅館に戻ると「すぐにお夕食の準備をしますので、お先にご入浴されるのがおすすめです」と仲居さんに言われ、俺たちは風呂に入ることにした。 「大浴場からの眺めが最高らしいですよ!」 と、片瀬はノリノリだが 「大浴場に俺が行けるわけないだろ」 と片瀬を睨んだ。 「行くなら一人で行ってこいよ」とそっぽを向く。 大人げない反応だと言われるかもしれないが、どれもこれも項をこれでもかと噛んだこいつのせいだ。 おかげさまで俺の項は、元の番の証の上に何重にも噛み跡があり痛々しい。 「残念でしたね、秋さん。 可哀想なので俺も個室の貸切露天風呂に入ります」 言葉だけ見れば憐れんでいるように聞こえるが、奴の声色は弾んでいる。 昨夜、おもむろに「秋さんの体を他の男に見られるの嫌だ」と言い始め、行為中に痛いくらい噛まれた。 もはやDVだろ… 片瀬が色々と手を回したからか、個室に備え付けの露天からも良い景色が見られた。 「良い景色ですね」 1人で入ると言ったのに「大きなお風呂なので」と訳の分からない理由で無理やり侵入してきた片瀬を横目で睨む。 「1人で入った方がのびのび出来るだろうに」 と俺が悪態をつくと、片瀬は俺の後ろに回り、腕を回してきた。 「ちょっ…」と俺はもがくが、しっかりとホールドされている。 「秋さんと共有したかったんです。 それに、秋さんを含めての綺麗な景色ですもん」 「は?中年の体なんか見たくないだろ」 「うーん、分かってないなぁ」 そう言った片瀬は、手を俺の腹や背中に回して撫で始める。 くすぐったくて俺は身を捩った。 ちゃぽちゃぽと鳴る水の音がやらしい。 「やめろってば」 「秋さん、色白ですべすべだし、筋肉がつき辛いからモチモチでエロいです」 なんて言葉を耳元で言われると、おっさんでもさすがに照れる。 っていうか、恥ずか死するわ!! 「可愛い…、秋さん」 ぐっと腕に力が込められ、体が密着する。 腰に、当たってるんですけど!!? 何度も擦りつけられ、確信犯だと気づく。 このまま流されたら不味い。 つーか、風呂場なんて明るい場所でするのは無理。 俺は理性を総動員して「飯に遅れる!!」と片瀬の体を突っぱねた。 「秋さんは俺としたくないんですか」と片瀬は不貞腐れている。 「し、したい…、けど! 夜にしてくれ。あと布団の上が良い」 と俺が慌てて言うと機嫌を直した彼が「約束ですよ」とにっこりして、解放してくれた。 これから美味しい食事が待っているというのに…、その先の事を考えるとなんだか緊張して、楽しめるか不安になってくる。 結婚の話もまだ切り出せていないし…

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