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第21話 兄と弟7

 2ー7 甘い苦しみ  「毎日、眠る前に必ず、私のことを考えてくれ」  それがアーキライトの願いだった。  僕は、毎日、アーキライトのその願いを叶えることを彼に約束した。  そして、僕にアーキライトは、そっと囁いた。  「もちろん、今日の願い事は、別に叶えてもらう」  僕が弾かれたように顔をあげてアーキライトを見ると、彼は、ふっと微笑んだ。  反則!  これ、反則だから!  アーキライトの微笑みに僕は、息を飲んでぼぅっと見つめていた。  その夜。  アーキライトは、添い寝する僕を そっと背後から抱き締めて囁いた。  「寂しくなるな」  アーキライトのその言葉に僕は、胸が締め付けられた。  でも、僕は、わざとそっけなく呟いた。  「どうせ、また、別の男を連れ込むんだろ?」  「誰も、ここには連れてこない」  アーキライトが僕をぎゅっと抱き込んだ。  「私がこの部屋に連れ込むのは、お前だけだ」  「・・この部屋に連れ込まなくても、他の男と寝るんだろ?」  僕は、口がカラカラに乾いていた。アーキライトは、僕の首もとに顔を埋めると囁いた。  「望むがいい、ルルシア。お前が望むなら私は、お前以外の誰にも抱かれないし、抱くこともない」  「でも・・」  僕は、頭がぼぅっとしていた。アーキライトの香りに包まれて、僕は、震える声できいた。  「アーキライトは・・そういうことせずには、いられないんじゃ?」  「そうだ」  アーキライトは、僕の問いに答えた。  「私の呪われたこの体は・・常に誰かの精を求めずにはいられない。だが、お前が私のために、夜、ベッドに入るときに私のことを考えてくれるのなら」  アーキライトが僕の髪に口づけした。  「私は、お前のために堪えてみせよう」  「でも、それって、アーキライトにとって苦しいことなんじゃ?」  僕は、アーキライトに抱き締められたまま胸がきゅうっとなっていた。  「僕は、アーキライト・・兄さんを苦しませたくない」  「確かに苦しいかもしれない」  アーキライトがくすっと笑う吐息が僕の耳にかかって僕は、思わず身を竦めて熱い吐息を漏らした。  アーキライトは、僕を抱いたまま続けた。  「しかし、その苦しみは、甘い」

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