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第40話 成り変わりの婚約者12
3ー12 愛している
僕は、その夜、久しぶりにアーキライトの腕に抱かれて眠った。
いつまでも泣き止まない僕をアーキライトは、なだめるように優しく頬に、額に、唇に、キスしてくれた。
僕は、アーキライトの温もりを感じて眠りについた。
そして。
「やってしまった・・」
僕は、朝、ベッドに起き上がって頭を抱えていた。
やってしまった。
義理とはいえ、兄であるアーキライトと一線を越えてしまった。
今まで、なんとか守ってきたのに!
ついに、越えてしまった!
僕は、頭を抱えたまま、はぁっとため息を漏らした。
「どうしたんだ?シア」
アーキライトが僕の膝に手を伸ばしてくる。
僕は、ちらっとアーキライトを見た。
アーキライトは。
寝起きとは思えない。
輝くばかりの美しさで僕に微笑みかけていた。
僕は、思わず顔を両手でおおって俯いて呻いた。
美しすぎる!
僕、ほんとにこの人に抱かれちゃったんだ?
うん。
確かに、僕の尻には、奇妙な違和感があって。
間違いなく昨夜、そこにアーキライトを迎え入れたのだと理解できた。
「なんで・・?」
僕は、顔を伏せたままアーキライトに訊ねた。
「なんで、こんなことを?」
「なんで?」
アーキライトが僕の腕を掴んでベッドの方へと引き倒すと、僕の顔を覗き込む。
「まだ、わからないのか?ルルシア」
顔が。
近い!
僕は、頬が熱くなる。
アーキライトは、僕に口づけをした。
軽くついばむようなキスがだんだんと深くなっていって。
僕も自然とアーキライトに応えていた。
アーキライトに貪られ、彼の唾液を飲まされて僕は、もう、意識が飛びそうになっていた。
「かわいい顔だ」
アーキライトが僕の頬にちゅっとキスをした。
「私にキスされただけで、もう、いきそうになっている。ほんとにかわいいな、お前は」
アーキライトが僕の首筋を舐める。
「お前を抱いた理由が知りたいのか?」
僕が頷くと、アーキライトは、僕の首筋に甘く噛みついた。
「んぅっ!」
アーキライトは、噛み痕を舌でなぞるとちゅぅっと吸った。
心地よさに僕は、吐息を漏らす。
アーキライトは、そんな僕のことを目を細めて見つめていた。
「私がお前を抱いた理由・・それは、私がお前を愛したからだ」
アーキライトは、僕に低い聞き心地のいい声で話ながら僕の体に己の所有の証を刻んだ。
「お前は・・私を恐れなかった。淫魔である私を受け入れた。だから、私は、お前に心引かれた。お前は・・美しい。惜しみ無く働いているお前の姿は、何者にも変えがたいぐらいに輝いている。そして・・」
アーキライトがふっと微笑んだ。
「お前は、私を愛している」
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