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第60話 愛とダンジョン4
5ー4 敗け
「だめだ!」
アーキライトは、即答した。
「番紋が完成してない。完成するまでは、ここから出すつもりはない」
マジかよ!
てか、番紋って、どうやったら完成するわけ?
僕が、そう問うとアーキライトは、嫌そうに答えた。
「番紋は・・私のことをお前が受け入れ、愛することで完成する」
ええっ?
僕は、その事実に衝撃を受けていた。
番紋は、ほぼほぼ完成している。
ってことは、僕は、言外にアーキライトが好きだってことを認めているってこと?
僕は、かぁっと顔が熱くなるのを感じていた。
アーキライトに抱かれて。
徐々にこの紋が完成していたとしたら、アーキライトには、僕の気持ちがまさに見えていたわけで。
つまり、僕がアーキライトのことどう思ってるか、丸わかりだたんだ!
口では、嫌々言いながら、僕の体も心も、アーキライトのこと愛していた。
それは、ちょっと。
恥ずかしすぎるかも!
「だが・・なぜ、もう少しのところで番紋が完成しない?」
アーキライトが小声でぶつぶつ呟いた。
「もっと、体に深く愛を刻まなくてはならないのか?」
僕は、ぶんぶんと頭を振った。
これ以上、愛を深められたら、僕の身がもちそうにない。
というか、今まで、よくもってたな!
この洞穴に来てからというもの、毎夜毎夜、意識を飛ばすまで抱き潰されてたってのに!
「もう、ほぼほぼ番紋は、完成している。いったい何が邪魔している?」
アーキライトが首を傾げる。
「それは・・」
僕は、頬を熱くしてアーキライトを見つめた。
「アーキライトが、僕をこんなところに閉じ込めてるから」
僕は、不安だったのだ。
一生、ここに閉じ込めて僕を飼い殺すつもりなのかって。
「僕は・・牛(カーブ)のこととか、商会のこととか、やりたいことがいっぱいあるし。もう、逃げないって言ってるのに、ずっとこんなところに閉じ込められて・・」
朝も夕もなく、ただ、アーキライトに抱かれる日々。
もう、僕には、堪えられない!
「いいかげん、僕を外に戻してくれ!」
僕が言うとアーキライトは、黙り込んだ。
「お前の敗けだ、アーキライト」
どこからか声がして僕は、周囲を見回した。
すぅっと岩壁から人が姿を現したので、僕は、慌てて体を隠そうとした。が、間に合うわけもなくベッドのすぐ脇にたたずむその長い銀髪の壮年の男に見下ろされ、僕は、羞恥に全身が火照っていた。
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