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第8話
ツアーファイナルの後は、昔からのファン数人と、スタッフやローディーや関係者云々、結構な規模の飲み会になる。
シンも社長に引き摺り出されて打ち上げまで参加していた。
サポートではヴィジュアル系にも参加するので、たまに出現する謎の王子様扱いで、バンドマンやバンギャ達に興味津々で囲まれている。
俺はと言えば、ビール片手に挨拶終えて「昔からのファン」をやってくれてる、というか「飼い主役」をやってくれていたお姉さん達の中に居る、どうやらお姉さん達の中にもヒエラルキーはあるらしいのだが、今一つわかっていない。
高校生の頃からだから、もう何年だろうか、凄い事なのだ。
他のメンバーのファンが集まっている席とは少し雰囲気が違う気がしなくも無い。
ありがとう! なんて雑な言葉は、基本的に外でしか使わない、ありがとうございます! って土下座して言いたくなるんだけど。
そのギャップを見てお姉さん達はクルスクと笑う、満足そうなのでとりあえずは良いのかもしれない。
今日の俺は軽快だ。
まだ上手くない、全然上手くないが、手応えは感じていた。
次にどうして行こうかが見える。
それは空気が見える様で面白い。
音楽はその場の空気になる。
凄い事だ。
そんな話をシンに聴いてもらいたい。
シンをチラチラ見ながら、綺麗だなあ等と思いながら、密かにお姉さんに足を踏まれて喜んでたり、バレたらどうしようと怯えてたり、喜んでいる自分の相変わらずの節操の無さにがっかりもする。
もう、個人的に遊んでとお願いする事はなくなっていても、お姉さん達はただ見守ってくれる。
シンの方を見れば、爽やかな笑顔を見れるし、目が合えば、すっと視線を細められ、ゾクゾクとする。
この状況は沢山のサディストに囲まれていて、特撮で言う所の敵のアジトの様な状態で、幸せなのだが、ツアー中はシンに会えて居なかった分、寂しいし、シンに気軽に触れる奴はムカつく。
ムカつくし寂しいから、興奮出来る、難儀な性癖である。満たされない事も嬉しい。
ツアーの前、少しでも満たされないとダメな、生きていけない様な気がしていた自分が、今は無い。
ドラムで満たされないから、他を満たそうとしたが、何の意味も無くて、満たされないとゆう事に満たされる感覚だ。
出来ない事があるのは、とても楽しい事だった、出来るようになろうとしている時間が幸福ならば、一生、幸福なのだ。
それがドラムを好きな理由なのか、それともドラムにハマったからこうなったのか。
ドラムに対して抱いていた一生苦しむんだという覚悟が、一生楽しむんだという様に形を変えてしまった。
不思議ではあるけれど、幸せで幸せで仕方がない。
一番付き合いの長いお姉さんが、突然ふーんと呟いた、ついこの前背中を傷だらけにしてくれたお姉さん。
ああ、バレたなと思って、わざわざあざとく上目遣いで見たら、優しいけど怖い顔で微笑まれた。
あとは、他愛ない、褒めて貰ったり、ジョークに笑ったり他のバンドの人と絡んだり、スタッフと絡んだり、基本的に愛想は良い方だと思う。
そのうちに、キヨは寝落ちし、リョウは消えるし、ジンは歌い出すし。
俺はお姉さん達がこっそり代わる代わる虐めるので半勃ちだ。一番やばい。
半勃ちになるまで虐められても近寄ってきてくれないシンにムッとする、絶対気づいているはずだ、このお姉さん達が何者なのかは。
自らの愚行が原因でろくに肌を合わせぬままツアーに突入して禁欲した上に、最高に気持ちの良いライブをこれでもかとやりまくった後だと、余計にムラつく物がある。
お姉さんが、目薬をさしていて、ああ、そう言えば目薬って悪酔いするんだっけ? と思うと同時に、酒に三滴落とした。
飲みなさいよ。
と、目で命令されながら、お姉さん達は雑談を交わしている間に、一気に飲み干す。
急にはなんとも無い様で、ただ、飲み干した達成感とこの後どうなるのかとゆう不安とで、ドキドキする。
更に新しいお酒を飲みながら、談笑を続けた。
トイレ! と、
立ち上がった時に気付く、恐ろしい程脚に力が入らず、目の焦点も合わなければ、眼球が傾いては戻り傾いては戻りを繰り返す、
兎に角おしっこだと、歩き出すのをお姉さんに支えられて、フラフラ黙ってトイレに向かう間に猛烈と吐きそうになる。
泥酔だ。
おしっこして、吐いて、吐いて、吐いて。
動けない。
もう何もわからない。
目を瞑っても意味が無くて、トイレの床でゴロゴロゴロゴロ
あ、もう、諦めよう。
そうしよう………
ライブの光景が頭に浮かぶ。
ファイナルは今までで一番大きい会場でのワンマンだった。
社長は大奮発だと言っていたが、小心者なのでさくらの準備はしていたらしい。
しかし、ツアーの最中にぎりぎりソールドアウトして、ほっとしたのだが。
いざ、当日会場に立って、隅までちゃんと他のメンバーの出す音についていけるのか、そんな不安が押し寄せてきた。
地方から帰ってそのままリハをやって、久しぶりに帰った家の玄関で既に気絶した。
起きたら目の前にシンの顔があったので、久しぶり過ぎて、とりあえず理由もなく大泣きした。
殆ど限界の状態での、ライブだ。
狂ってるとしか言いようが無いテンションで臨んだ。
しかし、常に一緒で、今までで一番短いスパンでライブを繰り返して、やっと同じステージに立つ事が出来る様になった自分には、こんなに素晴らしいと思える時間は無かった。
ツアーが無ければ、このファイナルは無いのだと、言葉以上に実感した。
アルバムに入れた新曲も、ファンの子達は既に聴き込んでいて、途中ジンが煽ると大合唱にもなった。
ジンとリョウは調子に乗ってステージ降りて走り回るし。
帰って来た所でキヨに引っ叩かれて会場が湧いた。
物凄く珍しくMCでマイクを持ったキヨに、こいつだけだよ、俺の言うこと聴くのは! って指差されたのは恥ずかしかったが、少し嬉しい。
キヨは淡々としながらも、物凄く興奮しているのがわかった。
リョウだってそれは同じで、弦を切るとゆう、ベーシスト的には少し恥ずかしいらしいワイルドな事をして焦っていた。
勿論の事、スティックを何本も折っている人間は何も言えない。
ジンなんてアンコールの後もいつ迄もステージに居て、会場のスタッフにそろそろマジで限界ですと言われて渋々帰って来た。
ああ、楽しかった。
素直にそう言える。
ドラムはまだまだ弱かった。
通常のライブハウスなら届くし、合う様になった、それは事実だが、会場が大きくなればまだまだまだまだ弱い。
経験する事で、より良くなっていく。
この快感からは、もう離れる事なんて出来やしない。
もっとデカイ場所も知りたくなった。
バンドをやるのは売れたいとか、有名になりたいとか、そんな事じゃなかったのだ。
ただ知りたいだけなのだ、何処で何をどうしたら良いのかを。
上手くなりたいから、売れたいのだ。
上手くなりたいから、有名になりたいのだ。
上手くなりたいから、でっかくでっかくなりたいのだ。
シンにおんぶされて、家に帰って来た所で意識も戻ってきた。
居酒屋のトイレで何があったかは、今なら思い出せると思うが、少々おかしい気もする。
ご主人様に触れてるだけで完勃ちになったことも気付いた。
泥酔してても勃つとは思わなかった。
「どんだけ飲んだの?」
「酒はビールとジントニックとジンバックだけ、あと眼薬」
「成る程ね」
成る程ねって、あれ死ぬ人とか居るらしいのに、あっさりしたものである。
眠いのに目を瞑ると回るので寝れない、寝そうになると吐き気で目覚める、そんな正に酔っ払い状態を繰り返した。
「これ飲めば、絶対確実に絶対治るから」
そう言って差し出されたのは熱い紅茶だ、何時ものと違って少し香りが薄い、鼻がバカになったのか、何か特別なのか。
しかも、いつものティーカップでは無くて、頑丈なマグカップだ。
某動物愛護の団体のカップは、シンのお気に入りのマグカップだ。これで珈琲を飲みながら、眼鏡をかけて、ヘッドホンして仕事している姿は大人っぽくて格好良いなと思う。
チビっと飲んでは、はーっと息を吐きを繰り返す。
フーフーすると目が回る様な気がする。
チビチビしている内に、少し熱め位に冷めてきたので、ゴクゴク飲んだ。
少し熱め位の物をゴクゴク飲んで喉が焼けるのが割と好きなのだ。
いや、割とじゃなくて普通に好きだ。
そんな事をしている内に、本当に酔いが冷めてきた。
「さーワンコここにお座り」
ベッドに座ったシンの足の間を指し示されて、キュッと鳩尾を詰まらせながら、正座して見上げると、確実にバカにしてるけど愛を感じる優しい顔で見下ろされて、うっとりする。
正にうっとりなのだ。
ライブ中と風呂以外は常につけている首輪を掴まれて、ちゅうっと、ちゅうって、ちゅうっとだよ。
キスされて、甲高い声を上げそうになる、柔らかい唇同士がくっついて、勝手に吸い付き合う様に、何度も深く、口の中を揉まれて、
突然唇を噛まれたりして、
痛くて涙目になっては、また深く。
力が抜けるから倒れそうになれば成る程引き寄せられていた。
やっと離れたら
もう、世界の中心はご主人様の唇なんじゃないかと、しょうもない事を思う。
唇が別の生き物みたいにピクピクした。
「あのね、今時の目薬にそんな危ない成分が入ってるわけがないでしょ?」
「へ?」
そう言ってポケットから取り出した目薬を手で弄んでいる、お姉さんが持ってたやつだ。
いつの間に。
「あの姉ちゃんに渡されたんだけどね、要するにお前のは思い込み気分の問題。あとやっぱり疲れとかストレスが溜まってんだろうね」
暫く考えて全身が真赤に湧き上がる、恥ずかしい、あの泥酔は思い込み! 勘違い!
恥ずかしい。
悲しくなってきた。
「バカな子だね」
頭を撫でられる。
嬉しい。
けれど恥ずかしい。
「人騒がせな子はお仕置きになるんだよね?」
「は、いぃっ」
優しく髪を撫でてた同じ手で、今度は鷲掴みで持ち上げられる。
ライブ後でまだ固まったままでいっもより痛い。
「おいで」
バスルームに連れて行かれた。
洗面器にお湯が張られて、硝子のシリンジとか、グリセリンとか色々置いてある。
「ちょっと待って! 嫌だよ! それは自分でするから!」
何されるかはすぐわかる。
「ダメ、お仕置きにならないでしょ?」
服を剥ぎ取られて泣きそうになる。
「どうせ初めてじゃ無いだろ、グリセリン多めな」
「やだぁ! 恥ずかしいのやだ……」
「恥ずかしいのは嫌じゃないでしょ? 嘘つき」
「その恥ずかしいとこの恥ずかしいは違うよ……」
ドボドボドボドボグリセリンが入れられ、シリンジに吸い込まれる。
シンさんはニヤニヤして、無言でバスタブの淵に手をつけと指示する。
戸惑いながら、言われた通りにしてはみたが、じっとしていられない、足も手ももぞもぞ動く。
お尻に平手打ちが飛んだ。
「ジッとして」
「はいっ」
お尻の穴にワセリンが塗られて、四肢の指先を強張らせる、浣腸自体が怖いわけでは無い、この後がもっと恐ろしい。
二本入った、三本目が苦しい。
もうお腹いっぱいの三本目。
300mlだろうか。
そして、アナルプラグが差し込まれる。
そう簡単には出させて貰えない事を悟った。
「先っぽから垂れてるよ……」
そう、感心した様に呆れた様に言われて、先っぽをグリグリ弄られる。
「ひゃやめ……やめて!!」
既にいきそう、しかしいったら後ろがどうなるかわからない、必死で堪えた。
「さて、部屋に戻ろうか」
「やっやだ!」
「お風呂場を出ないとトイレも行けないよ?」
渋々、手を引かれて歩くが、プラグは当たるし、お腹も痛いし、出てきそうだし、変な歩き方で、シンは笑っていた、とても嬉しそうに。
部屋に戻ったら、首輪から鎖で手枷が繋がって居るものを付けられた、これでは自力でトイレには行けない。
やたらと音程のしっかりした鼻歌で、リズミカルに金具を止めて行く、余裕だ。
終わると、今度は乳首にもピンを着けられる、脳天を直撃されたようで、悲鳴をあげたが、もう今更だ、
尿道からは汁がとめど無く流れるし、糸を引いて床と繋がっている。
ピンをペニスを指で弾かれて、でも力が抜けないので、膝までガクガクした。
キスして欲しくなって擦り寄った時に、シンの硬さに気付いて、この人、本当に変態なんだなあと思う。
膝を折り、しゃがもうとすると、脇を支えて静かに床に下ろしてくれる。
目の前の物に顔を擦り付けた。
シンは苦笑いで、ベルトとボタンを外して、下着から出してくれたので、奥まで咥え込んだ。
舐めて吸って、裏を唇でなぞって、玉まで咥えた。ずっと頭を撫でてくれて居た。
勿論出来ればいかせたいと思って咥えているが、一度も口でいかかせられたこたことが無い。
しかし、フェラチオ自体は好きらしく、ふやけるんじゃ無いかというくらい、顎が外れそうなるまで舐め続けていても嬉しそうだったりする。
きっと、これは支配的な満足感であって、性行為ではないのだろう。
しかし、今日は一度えずいて喉を鳴らした所で引き剥がされて、嫌な笑顔を向けていた、もっと楽しい事があるって顔、ああ素敵な表情、酸欠でぼーっとしているからか、その顔だけで下半身がぐっと反応する。
「そろそろお腹の出そうか?」
遂にきてしまった、お腹の痛みも、咥えてれば何時迄も我慢出来るのに。
トイレにすわらされて、脚を開く、頭を押さえ込まれて、シンの手がプラグに当たると、全身がびくりとする。
引き抜き安い様に必死で深呼吸した。
一番太い所が抜けたと同時に肛門に全力で力が入った。
少しぼちゃぼちゃと水の落ちる感じはした。
「出さないの?」
必死で頭を横にふる。
「出しなよ」
横にふる事しか出来ない。
ご主人様であるシンさんの命令でも、出来ないもんは出来ない。
しかし、かと言って放置されるのも嫌で、どうしたら良いのかわからない。
惨めに葛藤しているのだった。
シンは暫く考えた後に、乳首のピンをそっとはずして、舐めた。
「やあああぁぁっっ」
必死だ、少し出てしまう、それが恥ずかしいのに、シンは満足げな顔で更に舐めてくるし、ちんこにも手を伸ばして来て、もうだめだと、諦めそうになって、号泣になった。
泣きながら、鼻水垂らして、嗚咽でひきつけを起こす、耐えられなくなったお尻から液体が吹き出していく、そこからはただ解放されたい一心になった。
射精までして、シンのシャツ掴んで泣き叫んだ。
「まだでるでしょー」
そう言って、今度はお腹をぐいっと押された。
勿論出る。
全部すっきり目の前で出さされた。
「拭いてあげるよ」
もうぐったりしていて、反抗も何も出来ない。
さっさとふかれて、水洗の音がひびく。
首輪と手枷も外されて、やっと解放されたとシンに凭れていた。
抱きかかえられて、いつの間に沸かしたのかお風呂に入れられて、飲物まで渡された。
「ライブの後に、お酒飲んで、吐いて、大泣きして、浣腸までしたからね、水分とった方がいいよ」
事もなげにそんな事を言いうので、お湯をバッシャアとかけてしまった。
ささやかな反逆、抗議である。
それでもシンは満足そうな笑顔で、びしょびしょのシャツやズボンを脱いでお湯に入ってきた。
背中を向けて最大限の怒りを示してみたが、引き寄せられて抱っこされてしまった。
シンは今日のトリの曲を鼻歌で歌っている、気に入ってくれたらしい。
リョウが作った曲で、少しハードロック調のヴォーカルがスローで刻みはキツイ曲だ。
どうも、観察しているとシンはハードロックが好きらしい。だから、ハードロックやメタルの要素が多少感じられるヴィジュアル系自体も嫌いじゃないのだろう。
ベッドの上で、もう眠くてフワフワしていた。
いつもなら眠い時は寝かせてくれるシンが、今日は寝かせてくれなかった。
胸を揉まれて、眠たいフワフワ感と、気持ち良さで、どうにかなりそうになる。
勃起したちんこを、シンの膝に擦りつけて快楽を貪る。
自分の腰のうねりは快楽の波紋をどんどん大きな物にしていく。
お尻を撫でられ、ローションたっぷりで。
眠気で集中力はまるで無いのに、体だけはしっかり反応するから面白い。
シンのちんこが中に進んでくる。
「あーあーきもちいいよぉー」
何処と無く喘ぎ声もぞんざいであるが、感じているのは本当なのだ。
眠たい、眠たいからより気持ちいい。
「可愛い顔してるね」
「眠たいから……」
「でも気持ちいいの?」
「気持ちいいよ……う……」
このままやりながら寝ちゃいたい、凄く愛されてる気がする。
動かない、反応しない自分に対しても、勃起して突っ込んで感じてくれるなんて、物凄く愛されてる気がする。
それでも、怠い身体を無理矢理起こして、シンを押し倒した。
馬乗りになって、腰を振る。
「エロい子だなあ、ぐにゃぐにゃしてる」
ぐちゅぐちゅと音を鳴らして、怠い身体を揺さぶる。下から突き上げて来るし、世界が揺れる。
8ビートと16ビートが混ざる様に曖昧でかっこいい。
シンのセックスはいつもリズムに感じている。
気をとられてる内に、なんの予告も無く溢れるように射精してしまう。
マゾとしては最低だと思う。でも出てしまうのだ。
興奮して、のめり込んで、言葉を失う。
ただ目の前の心地よさだけに気を取られる。
そして、いついっているのか、いついっていないのかもわからず、静かな痙攣を下腹部が繰り返している。
壮絶に気持ちがいい。
歌詞の無い曲で泣けるのと、セックスで感じるのは同じだ。
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