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第5話

 とはいえ、うつ伏せにひしゃげた状態から逆襲に転じるのは至難の業だ。縦横ともにひと回り大きな躰にのしかかられたところは、あたかも〝さるかに合戦の臼に押しつぶされた猿〟の図、なのだから。 「くっ……!」  腹立たしさに頬が紅潮して、ほの白い裸身と鮮やかな対比を成す。アルフォンソを振り落とすべくジタバタしまくっても、びくともしないまま数分が経ち、とうとう息が切れた。  ふっと重みが遠のき、ぐったりと寝そべった瞬間を狙い澄まして両足が割り開かれた。つっかい棒を()うように、すかさず下肢の間にどっかり座られてしまうと、いやでも秘処が丸見えになる。 「どけよ、どけったら!」  嘲笑でいなされた。掌が尻たぶにあてがわれて、パン種をこねる要領で押しあげられ、押し下げられる。  (こいねがわ)くは気まぐれを起こしたがゆえのマッサージであってほしい。だが執拗さを増す手つきは性的なものをはらんで、ぞっとさせられる。それでなくとも異形のものに触れられるのと、フナムシにたかられるのとでは、後者のほうがマシかもしれない。 「やめろ、さわるな!」  語勢を強めざま肘打ちをみまった。もっともアルフォンソに命中するどころか、ペナルティを科すように、かえって尻たぶを揉みたてられるに留まったが。  と、月が雲に隠れて再び闇が垂れ込めた。巨軀の、その輪郭がおぼろにかすむと、なおさら神経が研ぎ澄まされる。  しゅぽん、とシャンパンの栓を抜いたときに似た音が背後で響いた。弾かれたように振り向くと同時に、甘ったるい香りがする雫が双丘の狭間にしたたり落ちた。とろり、とを撫でた。 「なっ、何をかけた。まさか、毒薬……!」 「案じるでない、単なる精油だ。ただし媚薬入りの。ここを……」  蕾をつつかれて、のけ反った。 「わたしのもので暴くにあたって、ぐるりと(なか)に潤いを与えてやろうと言うのだ」  精油と称するものを、もうひと垂らし。それから鹿爪らしげに言葉を継ぐ。 「性奴を躾けるには最初が肝心だ。いささか荒っぽい手段を用いても──だ」  などと、悪びれた色もなく精油を塗り広げていく。 「性奴だぁ!? てめえキ〇ガイか、ふ、ざけんな!」  ぬちょり、とギャザーがひとひら解き伸ばされた。びっしりと鳥肌が立ち、指が浅く沈むと吐き気までこみあげる。  医者に診てもらう場合は我慢するだろうが、をいじられるなんて冗談じゃない。反射的に蹴りを放ち、それが裏目に出た。すなわち、秘密兵器の出番を招いた。 「チクショー、放せ、変態!」  足首を摑み取られた。獣人は身体能力でヒトに勝り、アルフォンソはとりわけ力が強い。それ以前に容赦がない。振りほどこうにも振りほどけないでいるうちに、ざらざらして固いものが右の足首に巻きついた。つづいて左も(いまし)められた。

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