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第7話

 折しも尻尾が背中へと伸びてきた。そして房状の先端が、さわさわ、さわさわと螺旋状に這い回る。狡猾なことに払いのけられる前に退いておきながら、頃合いを見計らって舞い戻ってくる。 「くす、くすぐるのは反則なんだぞ!」  鎖をじゃらつかせながら、右に左に身をよじった。ところが、こそばゆさの底に種類の異なる何かがひそんでいるせいで、信号がおかしなぐあいに伝わる。  乳首へ、ペニスへ、なかでも密やかに咲きほころぶ蕾のごとき秘道へ──と。  とりわけペニスはすでに萌していたぶん鋭い反応を示す。瞬く間に蜜をはらんだのを察して、さらなる分泌を促すように尻尾が双丘で円を描く。  焦れったげに、且つ独りでに揺らめきだす気配をみせて、細腰(さいよう)がぴくりと跳ねた。  志木は、わざと鎖をがちゃつかせて悩ましい吐息をごまかした。獣人が(みだ)りがわしい振る舞いにおよぶなんて、それ系のジャンルのパターンを踏襲しているみたいで現実味が薄い。  アルフォンソ曰く「赤外線スコープ並」。事実、暗闇に対応していると仮定した場合、琥珀色の双眸はベッドの上の光景を完璧に捉えているのか。  シーツに点々とついたシミも、蛍光塗料を塗ってある鮮やかさで、くっきりと浮かびあがって見える……? 「さて、そろそろ精油が美肉(うまじし)にしみ渡ったころだ。おまえもあながち不快とは言いきれない違和感を覚えているのではあるまいか、(おのこ)の隠しどころに」 「暗示にかかるのを期待しても、無駄」  そう、ぶっきら棒にやり返すのとは裏腹、内心では大いにうろたえていた。例の媚薬は、とうに効果を発揮している。和毛(にこげ)がぬらつくのが明らかな証拠で、ぷくり、ぷくりと穂先に露を結びっぱなしに違いない。  射精()したい、びゅっと放ってすっきりしたい。つい、シーツにこすりつけて慰めてしまう。 「おまえの体内で快楽という種から芽が出て、今、この瞬間にも生長しているであろう」  知らんぷりを決め込んで、鎖の長さが許す限りずりあがった。カチカチに張りつめたペニスを下向きにねじるような摩擦が加われば、痛みが走って萎えるのがふつうだ。だが逆に、いっそう昂ぶってシーツをへこませる。  連鎖反応というやつだ。うぞうぞと(なか)が蠢くのにともなって、乳首までもがぷっくりと膨らむ。尻尾にとっては標的にもってこいだ。現にカメレオンが舌で昆虫を巻き取る要領で、珊瑚色の粒をつつく。 「……くぅ、っ」  じゅわ、と蜜がしみ出した。たったいま仰向けにひっくり返されたら、潜望鏡が海面から突き出たところのように、妖しい艶をまとったペニスが丸見えだ。

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