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第20話

 めり、と襞が軋んだ。カリの丸みをなじませるように、ほんの僅か沈んだにすぎない。だが初手の段階で、すさまじい圧迫感に襲われた。  とはいえ、もともと短刀の鞘に力ずくで太刀をおさめるに等しい。隆々としたものが菊座をこじ開けにかかれば、すさまじい異物感をない交ぜの圧迫感が強まって、 「ふむ。ヒトのここは、我ら種族の処女(おとめ)(ほと)よりちっぽけで頑なだとみえる」  覿面にペニスがうなだれる。 「あそこの構造を無視して……デカマラぶち込むとか、ありえ、ない……」  未だかつて味わった(ため)しのない激痛が全身を走り抜ける。八つ裂きの刑に処せられた場合の、それに匹敵するに違いない痛みが。  浅く、短い息をしながら志木は思った。おれは死ぬ、理不尽な理由で犯り殺される。ならば、せめてもの仕返しに陽根をへし折ってやりたい。  それの、めり込みぶりに怖気をふるいつつ意識的に後孔をすぼめた。 「トンネルを掘り進めているのではあるまいし、むやみやたらと力んでは(おとな)えぬ。招じ入れるよう努めよ」 「じゃ、あきらめろ……ひぃっ!」  堅固な城を攻め落とす楽しみに共通するものがあるとみえて、尻尾がゆらりとSの字を描いた。アルフォンソは舌なめずりひとつ、まだ青い栗の(いが)を割る要領でギャザーを解き伸ばす。 「くっ、んんん……ひぃっく、んん……」  泣き顔をさらすイコール、プライドを支える柱にひびが入る。なぜなら獲物が流した涙とは、凌虐者にとっては勲章なのだ。嚙み裂くほどに唇を嚙みしめ、それでも嗚咽がこぼれる。振動が玉門に伝わるにつれて、そこを侵しゆくものの存在を嫌でも意識させられる。 「……っ、う、くっ!」  せめて一太刀、浴びせて吠え面をかくところを拝んでやる。その一心でぎりぎりと締めあげても所詮、無駄な抵抗だ。怒張は、さしずめ砕氷船といった力強さで突き進む。  食物連鎖の掟は絶対だ。下位に置かれたが最後、食われるのみ。  ふさふさの耳が、あからさまな嘲りに満ちてぴんと立った。 「番いおおせる瞬間を(いたずら)に長引かせても、おまえの得にはならぬ。潔くここを明け渡すがよい。さすれば、優しく扱ってやるにやぶさかではない」 「レイプ魔のくせしてドヤ顔とか、嗤える……ああっ!」  防戦一方どころか、もはや敗色濃厚。志木はのけ反り、崩れ落ちて、またのけ反った。獣人のは如意棒みたいに伸縮自在で、花筒を埋め尽くすにとどまらず、喉を突き破って飛び出すまで巨大化しつづけるのだろうか……?

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