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第23話

「これは、したり。今宵は月齢十五、祖先の血がみなぎる満月の夜」 「祖先の血、遺伝子情報的、な……?」 「左様、我が種族は月明かりのもとで、なおかつ条件を満たす相手とまぐわったときに限り、肉体の組織が進化の歴史を遡るという特質を(そな)える。体毛に影響がおよんだのにはじまり、四足(しそく)歩行に適するよう骨格じたいが変化する域まで達すれば、神のごとく(たっと)ばれる」 「チョー駄作の変身ヒーローものみたいな、ご都合主義じゃん……ぁ、ん、あ……!」  よがり声をない交ぜにゲラゲラ嗤い、たてがみもどきをむしってやった。その間も陽根と花筒は、しっぽりと睦み合う。ずちゅ、と(たえ)なる調べを奏でる。 「ヒトと番うなど、やむにやまれぬ事情がなければ願い下げだが、おまえは一種の触媒だとみ える。(よわい)三十六にして、もっともめざましい変化(へんげ)を果たした」 「ん、あっ……ああーっ!」  最奥の、さらにその先の深みをえぐられた。制するように内壁がうねり、そこへ核に照準を定めたひと突きが。  いわば先祖返りという現象の副産物なのか、ただでさえ並外れた巨根まで倍に膨れあがったようだ。緩急をつけてピストン運動を繰り返されるたび蜜が泡立ち、駄目だ、爆ぜる……! 「嫌だ、こんなのいやだぁ……ああ!」  いわゆるバックヴァージンを奪われた時点で、志木は一杯いっぱいだった。かてて加えて、面貌が刻一刻と(けだもの)じみていく男のたてがみがなびくさまは、おぞましい云々以前に滑稽な眺めに思える。  思考能力はオーバーフローを起こし、なのに秘道は大はしゃぎだ。しなしなと屹立にまとわりついて、もっとと、せがむ。 「リアル、獣姦……」  呟きがこぼれたのを境に意識が遠のいた。どぷどぷと精が放たれ、花筒全体にしみ渡ったあとも延々と貪られるなかで〝平凡な大学生の沢渡志木〟は過去に葬り去られていく。

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