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第37話
志木の感覚では幼子 の腕ほどの大きさに。
朱唇がわななく。こんな犯罪級の代物 を銜えろ? イカせろ? 単なる無茶ぶりを通り越して、人魚姫にヒマラヤを登ってみせろと迫るに等しい。
しかし人体の神秘だ。玉門は超弩級 のやつを根元まで呑み込んだ。そう、健気かつ貪欲に。
公爵家の馬車は、猛スピードで何台もの馬車を追い越した。ガタゴトと揺れるたび振動が響く。全身に、とりわけ下腹 に、やがて一点へとまとまっていく。
甘やかな震えをともなって、轟々と花芯に。
「……っ!」
「我が身が可愛ければ時間を稼いでわたしをいなそうなどと、おかしな了見は起こさぬことだ」
濡れてくっついた紙をめくるふうに、顎をつまんでくる指をもぎ取る。アルフォンソに限らず男とセックスするなんて二度と御免だ、と心底からそう思う。
なのに馬車がバウンドすると一回につき「もぞり」というぐあいに後孔が疼くありさまで、破滅へと至る階段を踏み外すようだ。
志木はアルフォンソに憎悪に燃える眼差しを向け、だが、その眼差しに別の要素がじわじわと混じりはじめる。
太くて硬いものが花筒にのさばり返ったときに初めて覗く性の深淵。疼痛をない交ぜの快感は中毒性がきわめて高い。その味を図らずも知ったが最後、誘惑をはねつけるのは難しい。
轍 に車輪を取られた拍子に馬車が傾いだ。シャツがはためき、ほのかに尖った乳首がちらついた。
熟した果実は自然と枝から離れる。情欲にしても、ひとたび飽和点に達したあとは解き放つのみ。
頃やよしと見て、アルフォンソは根競べに独自のルールを適用する。すなわち鼻の穴をふさいで、いやでも口をあけざるをえないように仕向ける。
「……ん!」
すぐさま、ひねりを加えながら指を引きはがしにかかった。ところが鼻梁がひしゃげるまでに押さえつける力が強まる。
志木は不敵に笑った。中坊のころのおれは息継ぎしないで二十五メートルプールを泳ぎとおすくらい、へっちゃらだっただろ?
十秒、二十秒……胸苦しさが増していく。がんばれ、負けるな、と自分を励ますそばから、わずかに口許がほころびた。
凱歌をあげるように尻尾が揺らめいた。アルフォンソは、いっそ厳かとも言えるカリさばきで唇を割った。
「焦らしてくれた礼に、懇切丁寧に教えてやろう。まずは挨拶だ、舌を絡めなさい」
「んー……っ!」
唾液を吸って膨らむタイプの猿ぐつわをかまされたも同然で、呻き声がくぐもる。軽やかな蹄 の音が、それをかき消す。言うに事欠いて恨み骨髄に徹すってやつの、こいつに挨拶しろ? 反吐をぶちまけてやるなら、ともかく?
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