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第41話

   下手さかげんに呆れて口淫のほうは中止、ということなのか。ずるり、と怒張が抜き取られた。  苦手な科目の試験が免除になったみたいでラッキー! と即座に口をゆすぐため池へ走るのが正解のはず。ところが、おかわりを要求するように舌がちろりと覗く。志木はことさら口をへの字にひん曲げると、体育座りに縮こまった。  油断は禁物、アルフォンソのことだ。あえて宙ぶらりんの状態に置いたのは、何かあくどい魂胆があるからに決まっている。  視線を逸らすはしから、吸い寄せられる。臨戦態勢の整った、へ。  アルフォンソが、いくぶん身を乗り出した。志木は後ろにずれ……たくても座席と座席の間にすっぽりと挟まっている。ゆるゆるとイチモツをしごくさまを、ある意味、かぶりつきで鑑賞する羽目になるこのシチュエーションは、鼻先に人参をぶら下げられた馬? 「言うまでもないが、おまえを辱めるなど造作もない。それゆえ寛大にも希望に添うてやろうというのだ。自ら挿入()れるか、あるいは子種を飲むか。否は聞かぬ、選べ」 「はあ!? どっちも嫌ですけどぉ?」  と、ばっさり切り捨てざま、パイプをくぐり抜ける要領で座席の上にずりあがった。蕾のぐるりがよじれるのにともなって、(なか)に妖しいさざ波が立ち、だが、そんな気がしただけにすぎない。自己暗示にかかるほど単純にできちゃいない、お生憎さまだ。  敵機を捉えたレーダーさながら、獅子の耳がぴくりと動いた。 「いま、期待に胸が高鳴ったであろう。わたしに選択権をゆだねるのも満更ではないと、ドキドキと」 「カマかけても、無駄」  ぎくりとしたのを物語って、瞬間的にゆがんだポーカーフェイスが車窓に映る。精液を飲め、だって? 冗談じゃない、自己責任だ、てめえのものは、てめえが飲み干せ。  駆け引きめいた沈黙が落ちたときは根負けした時点でおしまい、と相場が決まっている。 「あんた、露出狂なのか。いいかげん引っ込めろ……そいつを」 「では、わからぬ。これこれと具体的に申してみよ」  と、鹿爪らしげに言いながら、ズボンの前立てをなおも割り開く。 「すっとぼけて、マジにムカつく。ムスコてか、チンポてか、とにかく無駄にでっかいの」  頬が紅潮するに至って、アルフォンソはようやく合点がいったというふうにイチモツを弾いてみせた。 「はっきり男根と言わぬあたり、おまえは妙に奥ゆかしい。さて、肚は決まったか」  志木は中指を突き立てて返した。それでいて豪華メシの後味を楽しむように、屹立の感触が口腔全体に甦る。  舌ざわりはムースのようになめらかで、ずっしりと重くて硬いのに程よい弾力があって。垂直に立てたトウモロコシを丸かじりする感覚でしゃぶると、穂先が微妙なポイントを刺激してきて。

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