43 / 50
第43話
当のアルフォンソは、といえば。欠伸を嚙み殺す。
「ちんたらやっていては、わたしを満足させるなど夢のまた夢であるぞ」
「うる、ひゃ、い……」
ちんたらと手を抜くどころか、志望校のランクをあげて猛勉強した大学受験のとき以上に熱心に取り組んでいる。
裏筋を舐めこするわ、鈴口を舌でつつき回すわ、果てはふぐりを撫で転がすわ。よだれと鼻水にまみれて、ぐちゃぐちゃの顔でいそしんでいる。そっちこそ、少しは協力する姿勢をみせたら、どうなんだ。
爆ぜる兆候を求めて、上目づかいに様子を窺う。くそ、こっちはイチモツがふやけるくらい頑張っているのに、しれっと尻尾の毛づくろいなんかしちゃって。出し惜しみしていないで、いいかげんイキやがれ……!
「ん、んーんん!」
気まぐれに抜き差しを再開するさまはパワハラの常習犯の、やり口そのものだ。
ある種、芝居じみたひと幕をさっさと終わらせたいと願って、ガムシャラな舌づかいで対抗するなかで思う。
〝檻〟に囚われている間に、ざっと十数回は犯られた。いずれのときも、もっと早い段階で放たれていた……気がする。今回に限ってちっともイカないのは、おれのテクニックがどうのこうのの問題じゃない。やっぱり〝性奴〟を鍛えるためにわざと長引かせているからに決まっている。
「あん、た……セコい」
息も絶え絶えになじるにつれて、蕾が自然とほころびていく。上の口ばかり可愛がってもらって、ひいきだ。のけ者扱いの内 も平等にかき混ぜてくれたら、脱皮を果たすように次のステージへと進むかもしれない……。
「うむ、牛の歩みなりとも上達したのに免じてそろそろ子種を授けるとするか。よいか、一滴たりともこぼすでないぞ」
「あ……ぐ……むぅ……っ!」
ぐいぐいご股ぐらに押しつけられて、いわゆる喉ちんこを打ち叩くまで食い入ってくる。リミッターを解除した、といったところだ。アルフォンソはこれまでの過程は準備運動だった、と思えるほどの荒れ狂いようでラストスパートをかける。
「くる、し……ぃ……ん、ぐぅ……っ!」
志木は、ただの性具となり果てた。フルスロットルで出たり入ったりする怒張をあやすのは、もはや神業に近い。尻尾が指揮を執り、がくがくと揺さぶられるのに合わせて懸命にしゃぶりつづけるさまは、殉教者のそれだ。
さらに地獄じみた数分を経て、ようやく昂ぶりが最大限に膨張した。熱液が迸り、どぷどぷと流れ込む。
「子種を直接そそぎ込まれる恩恵に浴する。ヒトには過ぎた褒賞だが、厳しくするばかりでは芸がない。特典があってもよかろう」
座席の上に引きずりあげられて、志木はくたりと横たわった。霞がかった視界に、痛快、愉快と書いてあるような顔が映り、無意識のうちに舌鼓を打つ。
どろりとして、ほろ苦い。さながら麦芽風味のポタージュ……。
だましだまし乗っていた愛車が、とうとうスクラップ工場行きになったも同然だ。アルフォンソの味が口の中いっぱいに広がるにつれて、ペニスが反り返り、弾けた。下着がべたつくのを意識した瞬間〝志木〟を構成するなかで、もっとも重要な部分にひびが入った。
ともだちにシェアしよう!