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第8話

本社に顔を出すと市場に声をかけられた。 「おつかれさま」 「もうすぐ芳賀くんと付き合って一ヶ月記念日でしょ~」 記念日とは……? 市場の言葉が引っかかる。 なんだか嫌な予感がする。 「正式には発表記念日~ お祝いしたいの~! 同期みんなで~! 二人にはサプライズにしようと思ってたんだけど、キララちゃんが、二人に相談した方がいいっていうから~ 先に伝えておくね~ 宇井くんから芳賀くんにも言っておいてね~」 「ちょっ――」 「日程決まったら連絡するね~」  待て待て待て、待ってくれ! 市場さん、それ相談じゃなくて事後報告だから。 決定事項じゃん、もう! そういうことは、事前に相談してくれ。 どうする、俺!? 俺たち付き合ってないから! 上機嫌な後ろ姿に言葉にできない思いをぶつけた。 俺はすぐ、芳賀にメッセージを送る。 宇井:市場さんが付き合って一ヶ月記念日のお祝いするって言ってる! 芳賀:同期会の延長だろ? 芳賀:祝ってもらえばいいんじゃない? 宇井:キスしろとか言われたらどうすんだ! 芳賀:悪ノリするヤツいないと思うけど 芳賀:心配? 宇井:市場さんには言ったほうがいいんじゃないか 芳賀:みんなに発表した後に、宇井に保留にされたって? 芳賀:俺を推してる市場さんに言える? 宇井:言えない 宇井:じゃあどうすんだ! 宇井:全部お前のせいだぞ! 芳賀:宇井は欠席する? 芳賀:みんなには俺から説明しておくよ 芳賀:俺のせいだからね 「え……怒って、ないよな……?」

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