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第5話

世一とルームメイト件チームメイトになってからほぼ俺は日々を少し過ごしたある日、買い物についてきた彼は言った。 「冴って本当に良い兄ちゃんなのに、なんであんなに凛は打つかってくるんだろうな。不思議に思うよ」 世一は不思議そうなのだが、俺にとっては不思議なことではなかった。 一人日本から出て世界のサッカープレイヤーを見てきて自分がヌルいことに気付いた。 日本の至宝と言われた俺でも蹴落とされるようなシーンなんて何度とあったし、それで俺自身このままでは駄目だと悟った。 その悟れたことは一人の未熟なプレイヤーとしてマウンドに立ったことによって気付かされたのだと思えた。 俺は生まれる世界を間違えた、そう思えるほどに自分はまだまだ未熟だったからこそ、高みが見えた。 俺が変わったのではなく、世界が俺を変えたのだ。 「俺はあまり良い人間じゃない」 「そうかな?俺から見たら冴は良い兄ちゃんなんだけどな」 そう、俺は『良い兄ちゃん』ではない。 もしそうだったら世一には最後まで手を出さないはずだろう。 「それこそ俺が良い人じゃないよ」 「確かに。世一は良い人間じゃない」 「そこは否定してくれてもいいところだと思う」 世一が『良い人間』だったら、俺に抱けなんて言わなかっただろう。 凛が側に居ないということが原因でタカが外れたのだろう、俺はそう解釈しているし、それで合っていると理解していた。 「ジャガイモと豚肉?カレーかな」 俺が手に取っている材料で今日の夕食を予想して、世一はそう聞いてきた。 「これは豚汁だ」 「え、和食?それなら和食?!日本の米は売ってないのに?」 「今日の休憩時間に一度帰って日本からの宅配便で頼んだコシヒカリを運んでおいた」 「そこまでする?!」 世一は驚いていたが、俺にとっては食には拘る人間だった。 それも尚更、今は俺だけではないのだから当然のことだった。 「納豆もある」 「冴はやっぱ良い人じゃん」 否、俺はちっともいい人間ではない。

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