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第27話

背負われた世一は思ったよりも軽かった。 ウェイト的に俺と世一はさして変わらないはずだが、軽いように感じた。 「アンチにまた叩かれちゃうな」 世一の目にパパラッチのカメラがヒットしたのかそう呟いた。 「もう少し身体を大切にしろ」 「俺の身体は冴が大切にしてくれてるから、ちょっとくらいの無理は許してよ」 俺は知っている、メタ・ビジョンは目だけではなく身体にも負荷が掛かる。 きっと世一の選手生命は他の選手よりも短いだろう。 「冴は俺を大事に扱ってくれる。でも優しすぎるから、もう少し厳しく管理してほしい」 「俺は世一が好きだ。好きな者を大切にするのは当たり前のことだ」 彼はきっとどれだけ俺に愛されてるかを知らないのだろう。 「ならさ。……俺にもう少し厳しくしてよ」 「そうだな」 今まで彼に甘すぎたのかもしれないが、こればかりは無理だ。 「冴は違うと思ってたけど、やっぱ鈍感だな。……俺は冴も好きだよ。俺が今付き合ってるのは冴だと思ってるのに」 「……」 世一は何を言っているのか一瞬理解が出来なかった。 「俺は冴も好きなんだ。だから俺も冴の今の役に立ちたい」 また世一は俺を弄んでいるのだろうか、そうに決まっている。 「……そうなのか」 そう俺が呟くと、それきり世一はルームシェアしているマンションに着くまで無言になった。 その晩彼は夕食の挨拶以外終始無言だった。 それでも世一は懐いた猫が犬のように俺に付き纏い膝に乗り癒やされたが、お陰で手を出すタイミングが見付からず、そのまま就寝していた。 「冴の馬鹿」 眠りの中で世一のそんな声が聞こえたような気がしたのだが、俺はメンタル面が疲れすぎていて反応ができなかった。

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