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第31話
世一が帰ってきたのは朝焼けが見れる時間帯だった。
部屋に入るのに勇気がいったのか、玄関前で深呼吸する世一の気配に気付いていた俺は、直ぐに声を掛けた。
「朝帰りということは士道に抱かれたあとか」
「ごめん、冴。士道がどうしても部屋に押し掛けるってきかないから……」
試合後のあの状況下での世一の判断は正しいのだろうか、俺ですら分からなくなっていた。
「俺に抱かれるよりも奴に抱かれたかったのか」
その言葉に世一は怒ったのか、鞄を投げつけられた。
「冴の馬鹿っ!!……俺の気持ちに気付くのが遅い上に、知ろうともしてくれない」
「馬鹿とはなんだ?俺の気持ちにも気付いてはいないのは世一だろう」
「冴は俺の世話がしたいって、っ冴なしで生きていけないように手を掛けてることくらい気付いてるよ!!」
そう言い放つ世一は子供のように涙でグジャグジャにしていた。
「俺だって冴好きなのに、役に経ちたいのに何もさせてくれない!!……冴はそれで満足かもしれないけど、俺の気持ちはどうなるっていうんだっ」
世一は俺の気持ちに気付いていた。
彼が適応能力に長けていることを俺は失念していた。
無表情で分かりにくいと言われている俺ですら世一は理解してくれていたのだ。
「俺が悪かった世一」
「冴なんてっ……、冴なんてっ」
「俺が嫌いになったか」
「……嫌いになんて、なれない」
俺は世一を抱きしめた。
慰めとかそんな感情ではない、こんな俺のことすら受け入れてしまう世一の人の良さが心底愛おしいと思ったから抱きしめたいと思った。
「本当にすまなかった」
俺の背中に彼の腕が回った。
きっと俺は世一に許されたのだ、そう思えたので
そのまま彼を抱くとこにした。
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