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猫(5) 黒猫、双子猫に追われる
そしてまた、ある休日。
俺とくろ丸はリビングで寛いでいた。
ソファーに座る俺の膝を枕にして、くろ丸がウトウトしている。テレビがCMに入り、チャンネルを変えようかとリモコンを持ったところで、ピンポーン、と玄関チャイムが鳴った。
くろ丸がガバッと起き上がる。猫耳を立てて警戒しているようだ。くろ丸を安心させるように頭を撫で、インターホンの通話スイッチを押した。
「はい」
『こんにちは、坂上です。お母さんいる?』
あ、噂好きなおばさんだ!
「すいません、今出掛けてていないんです」
『そうなの?残念だわ。最近旅行に行ってね、お土産買ってきたのだけど、開けてもらえる?』
「……あ……ハイ。今行きます」
メンドクセーと思ったが、玄関を開けに行った。
「こんにちはー」
「こんにちは。これ良かったら食べて」
「いつもありがとうございます!」
ニッコリ笑って受け取る。
そのおばさんの後ろから、ひょっこり二人の少年が顔を出した。
あ、猫耳だ。
「ここが“くりまる”の家にゃ?」
「“くにまる”じゃなかったにゃ?」
「く、くろ丸、だよ…」
顔がそっくりな猫耳少年。アイドルグループにいそうな美形な二匹だ。
「双子ちゃんなんですか?」
おばさんに聞いてみる。
「五つ子だったのよ。三匹は里子に出したの。あとうちに他にこの子たちの親がいるのよ」
「へーすごいですね」
人型を“里子に”とか言われると複雑な気分……。
階段をダダダダダ!と駆け上がる音。くろ丸が逃げたっぽい。
アイドル風猫たちは興味深そうに耳を立てた。
「にゃんだにゃんだ!?」
「行くにゃ!」
おばさんと俺の脇をすり抜け、靴を乱暴に脱ぎ捨てると、くろ丸を追い始めた。
「あっ、駄目よ、セイヤ!カイト!」
二階でダダダダダ!ダダダダダ!と走り回る音、ガチャンゴトンと物が倒れる派手な音がする。
「ごめんなさいね……」
ほほほ、と笑って誤魔化すおばさん。
「いいえ……」
上に見に行ったほうがいいかな?と思ったところで、またダダダダダ!と階段を駆け下りる音がし、くろ丸が飛び付いてきた。
「ふにゃー!あああ!ご主人様ぁぁ!」
「大丈夫か!?」
髪留めは外れて髪が解けていて、浴衣は乱れて肩が丸出し、爪に引っかけられたのか、生地も所々ほつれてるようだ。
ダダダダダ!と二匹も降りてきて、くろ丸の浴衣を引っ張る。
「ニギャー!!」
「下ろせにゃ!」
「引っ張るにゃ!」
「お、重っ!」
俺が膝を付いたところに、一匹がくろ丸に乗ろうとする。まさか、アレか?襲ってんのか?
「こ、こらこら!」
慌ててくろ丸の尻をガードする。
「やめなさーい!!セイヤ!カイト!そんな悪い子たちは、ご飯抜きよー!!」
おばさんの大迫力キンキン声にピタリと止まる二匹。
「だってこいつ、いい匂いするんだにゃ」
「可愛がってあげようとしただけにゃ」
「言い訳するんじゃない!」
ペン!ペン!と頭を叩くおばさん。「にゃいん!」と鳴く二匹。
「あの、そこまでしなくても……」
叩くのは可哀相だ。
「本当にごめんなさいね。くろちゃん可愛いから女の子と間違えちゃったのね」
「間違ってないにゃ」
「オスって知ってるけどヤりたいにゃ」
「余計悪いわ!」
ペン!ペン!
「にゃいん!」
「あの、平気ですから……」
平身低頭でおばさんは二匹と共に帰って行った。
「ふー、疲れた……」
やっと嵐が去った。
「くろ丸、怖かったな。もう大丈夫だぞ」
背中を撫でてやる。くろ丸は顔を上げると、涙をゴシゴシ拭った。
「あいつら、くろ丸にコリコリしたニャ」
「え?」
「くろ丸のお尻にコリコリしたニャ」
「こ、コリコリって?」
「コリコリをコリコリしてコリコリニャ」
「ぐ、具体的に……」
「コリコリがコリコリでコリコリのコリコリなのニャ!」
コリコリだけじゃわからん!
「お、お尻に痛いことされたのか?」
「んみゃ?」
「なんか、肛門……お尻の穴になにか入れられたりとか、された?」
あの二匹、ズボンは脱いでなさそうだったけど……指とかで……。想像するだけで怒りがこみ上げてくる。
「お尻の穴?にゃんで?」
「いや、なんともないならいい」
くろ丸はパチパチと瞬きをして、そうにゃ!と呟いた。
「コリコリ教えてあげるニャ?」
「……え?」
「早く早く!こうやるニャ!」
くろ丸の目が爛々と輝いている。楽しく遊んでいる時の目だ。さっきのショックを忘れてくれるならこれ幸いと、うつ伏せで丸まっているくろ丸の真似をする。
「それで、こうニャ!」
俺の腰に手をあてがうと、尻に腰を擦り付け始めた。
!!
「わ、わかった!ありがとう!」
と、起き上がろうとしたが、腰に馬乗りされる。
「……まだニャ。……コリコリ、してるかニャ?」
ぎこちない動きだし場所が見当違いだが、腰から背中にかけて当たってる感触がする。
くろ丸の息が荒い。段々動きが激しくなる。
「はあ、んにゃ、あっ、ん」
完全に交尾モードになってる!
「くろ丸、ちょっとごめん!イテテ!」
「ふにゃー!まだニャー!」
俺はくろ丸を落とさないように起き上がると、爪を立てて背中に張り付いてるくろ丸を引き剥がした。
「うにゃー!いやにゃー!!おしまいいやにゃー!!」
爪があらゆる場所に引っかかる。
「イデデデ!おしまいじゃないって!体勢変えたいだけだから!」
くろ丸を仰向けにし、両手を掴んで抑えた。色んなところがヒリヒリする。これは体傷だらけだな……。
「うう……うにゃあ……」
泣きべそをかいてるくろ丸。見ると、くろ丸の下半身は完全に勃っている。触りたい衝動に駆られながらも、まずはくろ丸に話し掛けた。
「くろ丸、俺にもコリコリさせてくれる?」
「ダメニャ。くろ丸が、しにゃいと、もうっ……んにゃー」
早く吐き出したくてたまらないんだろう。腰がのた打っている。
「じゃあ、俺がやってあげるから。爪で引っ掻くなよ」
ソッと片手を離し、くろ丸の高ぶりをこすり始めた。玄関でなにやってるんだろ、俺。誰も来ないことを願うのみだ。
「んにゃっ!?っあ……、あっ」
緩急をつけて擦る。筋や凹みも辿る。
「……っあん、んにゃんっ……にゃ、あん」
くろ丸の頬が高揚し、唇がいつも以上に赤く染まっている。
くろ丸と視線が絡んだ。俺に手を伸ばす。誘われるように、唇を重ねた。
「っん……」
舌のざらついた感触。ちょっと痛気持ちいい。
何度か唇を吸い上げていると、くろ丸が全身を硬直させた。唇を離すと、くろ丸は体をよじった。
「っあ、あ!」
掴まれた腕にくろ丸の爪が食い込んで痛い。限界まで張りつめているくろ丸自身の根元から先まで絞り上げた。
「や──っ!」
ビクビクッと手の中のものが精液を放ったのを感じた。先から勢いよく白いものが出ている。
結構量が多くて驚く。くろ丸の腹を白く濡らし、帯にも染みが付いた。あ、ヤバい。脱がせば良かった…。
あとで浴衣もまとめて洗おう。そう思って浴衣の裾で精子を拭いてしまう。
くろ丸はボーッとした様子で荒い息を落ち着けながら仰向けで寝転んだままだ。股も広げたままだし、肩はずっと肌蹴たまま。誰かに見られたら強姦にでも襲われたのかと勘違いされそう。
「くろ丸、大丈夫か?」
さすがに心配になり声を掛ける。くろ丸は俺を見た。
「ご主人様のコリコリ、すごいニャ」
「いや、今のはコリコリじゃないんじゃ……」
くろ丸がゆっくり起き上がった。自分のペニスの様子が気になるらしく、持ち上げて見て、ソッと撫でたり摘まんだりしている。
おい、おい、こんなところでいじるのはやめろよ?と、今したことを棚に上げる俺。
「ご主人様、もう一回コリコリしてほしいニャ」
「え?」
「もう一回、してニャ」
抱き付いて甘えるくろ丸。ゴロゴロ喉を鳴らし、首筋を舐めてくる。
「……じゃあ、部屋に行くか?」
「んにゃ」
抱えて階段を上がる。
出来ることなら最後までしたいけど、くろ丸が理解してくれて全てを許してくれるのかが不明だ。……受け入れるのって相当痛いって聞くし。いや、男同士のはよくわからんけど……。
そんなことを考えながら二階に上がると。
「なんだこれ……」
驚いた。廊下が散らかりまくっていたからだ。
母親が作った大作のパッチワークは落ちてるし、花瓶は倒れて水が零れてる。小学生の時に俺が描いた絵も破れてぶら下がってる。その他、色々……。
俺が唖然として立ち尽くしていることに気付いたくろ丸は、ソッと俺から降りて恐る恐る後ずさりしている。
「くろ丸」
「はいにゃ!」
くろ丸はビクッとして背筋を伸ばした。悪いことしたとわかってる顔だ。俺はフゥとため息をつき、くろ丸の頭をクシャッと撫でた。
「ちょっと片付けるの手伝って」
「う、うにゃ!」
さっきの大運動会のせいだからくろ丸は悪くないだろう。これだけ必死に追われ、逃げてたということなのだ。
なんとか元に戻せたので自分の部屋へ。
自分の部屋に入ると「うっわ」と声が出てしまった。本棚から本が落ち、デスク用椅子は倒れている。ベッドの掛け布団もグシャグシャだ。
「……これこんなに解れてたっけ?」
掛け布団カバーに引っかき傷がたくさんある。
「はあーーー」
特大のため息が出てしまった。すごいぜ、大運動会。多頭飼いしてる人、尊敬する。
ベッドに腰掛けるとくろ丸が足元にしゃがんだ。
「……怒ってるニャ?」
「怒ってないよ」
くろ丸は背筋を伸ばして俺の顔をマジマジと覗き見る。鼻同士がツンと当たる。
くろ丸が俺の唇をペロッペロッと舐めた。謝罪のつもりなのか?クスッと笑ってしまう。
くろ丸は再び俺の唇を舐めた。
「……コリコリするニャ?」
「出来る?」
「うにゃ」
俺はくろ丸の膝から手を滑らせ、太股を撫でた。拭ききれてなかったさっきの名残がヌルッと指に付く。
指先に触れたくろ丸のペニスを掴み、ゆっくりと撫で上げた。
「……んっ」
くろ丸がピクッと反応する。
俺はくろ丸の帯を解き、ベッドに横たえた。浴衣の前をはだけると、胸を揉み、薄いピンクの乳首を刺激する。
「にゃだ、そこ、違う、にゃっ」
固くなったそれを口に含み、舌で転がした。ああ、この色、どこかで見たと思ったら、肉球の色か。感触もなんとなく似てる気がする。
「んーーっ、あっ、にゃ」
片手をくろ丸の下腹部に伸ばすと、既に勃ち上がり始めていた。指をその下に伝わせ、穴の位置を確認する。ここに、入るのか?
「……ごしゅじ、さま?」
動きを止めた俺を不思議に思ったのか、くろ丸が呼んだ。
「……ここをいじってもいい?」
突然入れたらパニックになるかもしれないから聞いておかねば。くろ丸が嫌がることはしたくない。
「にゃんで?」
……うん、ごもっともな質問だ。
「そうだな……気持ちよくなれるんだ」
「くろ丸がにゃ?」
「うん、くろ丸と……俺が」
「ご主人様もにゃ?」
どっちかと言うと俺が!だな。
「ちょっと痛いかもしれない。でも、なるべく痛くないようにするから」
「痛いかもにゃけど、痛くにゃいかも?」
「うん」
あー何言ってるんだろ俺。支離滅裂だ。これじゃくろ丸に理解出来るわけない。
くろ丸は不安げながらも精一杯の微笑みを浮かべた。
「いいにゃ。ここ、いっぱい触ってにゃ。ちょっとなら痛いの我慢できるにゃ」
「くろ丸……」
胸がギュッと掴まれた気がする。
ゆっくりとくろ丸に唇を重ねた。くろ丸の下半身に手を伸ばす。下から揉み上げ、刺激を始めた。
「──っんにゃぁ」
くろ丸の唇が震える。触られ慣れてないどころか、自分でも弄ることは無かろうくろ丸自身は、徐々に固さを増していく。
眉根を寄せて、刺激に耐えている。
「……ぁっ。……んぁあ…っ」
喉の奥から密やかな声が漏れる。根元から辿り、その先をやや強めに刺激を加える。
「んっ!にやぁ、や、にゃぁっ」
先からわずかに精液が滲む。それを塗り込みながら、下に手を滑らせていく。ふっくらとした袋の柔らかさを確かめるように揉み上げる。くろ丸の荒い息づかいが聞こえる。
その奥の固く閉じられた場所に指を当てた。
爪を立てないように、慎重に指を差し入れる。
「んにゃ……っ」
くろ丸が眉をしかめ、俺の服をギュッと掴んだ。
指の第一関節、第二関節を通り、根元まで沈めた。異物感を感じるのか、くろ丸は首を起こすと股間を凝視した。大きな目がこぼれ落ちそうなほど見開かれている。
「痛い?」
くろ丸はコクコクと頷いた。え?まさか指一本挿れただけで痛いのか?
「お尻の穴、じゃにゃくて、くろ丸のチンチンが、おかしいニャ。痛……いっ」
さっきはなにがなにやら自覚できないまま達してしまったのだろう。痛いのは肛門じゃなくてペニスのようだ。
「チンチン痛いのは聞いてないにゃ。うにゃー……いた、痛いにゃー!腫れてるにゃああっ」
「大丈夫だよ、腫れてるわけじゃないから!」
「くろ丸死んじゃうにゃあああ!チンチンおっきくなったから、壊れちゃうにゃあああ!」
「壊れないって!ほら、待ってろ」
半分パニックになってる。とりあえず先に出したほうがいいかも。肛門から指を離すと、くろ丸の高ぶりを擦り始めた。
「んにゃっ!あっ」
くろ丸の腰が跳ねた。荒い息を繰り返す。筋をくすぐるように擦ると、背中を反らせた。
「あっ、あっ。……んにゃぁ……っ」
快感の波に耐えているのか、頬を赤く染めて喘いでいる。最高に可愛くてたまらない。その手を動かしながら、無防備に開いた唇を吸った。
「んっ……んんっ」
舌で口内を撫でる。くろ丸の舌を捉えて絡めた。くろ丸の息が震えた。くろ丸自身も限界まで張り詰めているのが感触でわかった。あと数回でも擦り上げたら達してしまうだろう。
その前に。
「……くろ丸」
「はにゃ?」
「好きだよ」
……言ってしまった。言わずにはいられなかった。
「くろ丸のこと、ずっと大切にする。だから、くろ丸の全部が欲しいんだ」
「前にも言ったニャ。くろ丸はご主人様のものニャ。……愛してるニャ」
「……っ」
くろ丸の口から“愛”なんて言葉が出るとは思わなかった。たまらずくろ丸に唇を重ねた。そして開放を待つくろ丸の高ぶりを擦った。
「んっ、んっ、んんっ…………っ!」
全身を震えさせるくろ丸。予想通り、数回擦ったところで精液を放った。脱力するくろ丸。
俺の手に付いたくろ丸の精液を舐めてみる。決して美味いもんじゃないけど、これも含めて愛おしくてたまらない。
くろ丸が息を落ち着かせながらふふっと笑った。
「ご主人様、だーいすきニャ」
「俺も」
再び唇を重ねようとしたところで、ダダダダ!バン!!と、足音と共に部屋のドアが開かれた。
「あんた!!あたしの部屋、入ったね!?」
姉貴だった。
隠れるとか、誤魔化すとか、そんな間は全くなく、ポカンと見る俺たち。
「な、なんのこと?」
「なんのこと、じゃねーよ!……つーか、セックスしてんじゃねーよ!!」
素っ裸のくろ丸に覆い被さっていた俺。辛うじて服は脱いでなかったけど、股間ははちきれそうになってる。
俺はベッドから起き上がると、股間とくろ丸を毛布で覆い、くろ丸を隠すように前に座った。
「ちょっと、姉貴、声が大きい……」
「なに昼間っからセックスしてんだよ!」
「姉貴、もうちょい静かにしろって。くろ丸が怯えてる」
俺の背中にくろ丸がくっついている。
「ご、ごめんニャ……もうご主人様のおねーちゃんのお部屋には入らないニャ……」
「ん?何かしたのか?」
くろ丸には心当たりがあるらしい。
あ。まさか……。
「壊れたものは、ナオ、あんたが全部弁償するんだからね!くろ丸が原因だったとしても、飼い主が責任を取れよ!わかったな!」
「わ、わかったよ……」
あのアイドル兄弟と逃げる途中で姉貴の部屋にも入ってしまったのだろう。不可抗力とはいえ、入った部屋がまずかった。
姉貴の怒りの声を聞きながら、段々と股間が萎んでいくのがわかる。くろ丸は疲れ果てたのか、俺の背中にくっついたままいつの間にか寝ていた。
……また、最後まで出来なかった。
まあ、まだチャンスはいくらでもある。そうだよな。
──その夜。俺は気が早くも再チャレンジすべく、くろ丸を抱いていた。俺もくろ丸も素っ裸で、触れ合う肌が心地いい。
充分くろ丸の肛門を慣らして、俺のモノを挿れようと構えたところで、くろ丸が「ニャーン」と鳴いた。
くろ丸の顔を見ると……。
「えっ!?」
くろ丸が元の黒猫に戻っていた。俺が挿入しようとしてたのは、腹を出して寝ころんでいる猫の尻。
「うわあ!ご、ごめん!」
なに俺は猫に挿れようとしてるんだ!?
でも今の今まで確か……人間の……え、誰だ?俺は誰としようとしてたんだろう。
くろ丸はもう一度ニャーンと鳴くと、起き上がってどこかに行ってしまう。
「くろ丸、ちょっと待って!くろ丸!くろ丸───!」
ガバッと起き上がると、そこは薄暗い自室。俺が勢いよく起き上がった反動か、くろ丸は口の中でムニャムニャ呟きながら仰向けに寝返りを打った。
……人間だ。人間型のくろ丸だ。
「なんだ、夢かぁ……」
心から安堵した。……いや、黒猫型のくろ丸が嫌というわけじゃない。自分の致そうとしてたことが背徳感あるというか……。
……いつか、くろ丸が元の姿に戻る時が来るのだろうか?それは突然?それともくろ丸が元に戻りたいと願った時?
黒猫型のくろ丸のことは大好きだ。目に入れても痛くないってくらい可愛い。でも人間型のくろ丸はそれに輪をかけて、クサイことを言わせてもらえば“愛”が入ってくる。この世の誰よりも愛してしまった。
“猫型か人間型か、どちらかを選べ”と言われたら、今なら迷わず人間型を選んでしまうだろう。でも、夢の中の自分のように、もう片方を忘れたくはない。絶対に、あの黒猫型のくろ丸を忘れたくないんだ。
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