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 ***  人の行き来が激しい場所へ到着すると、トーマは慣れた足取りでカフェへと向かった。  同じ店で同じエスプレッソを買う。  これもルーティンの一つであった。  トーマの順番になると、小銭を出しながら注文する。 「エスプレッソをお願いします」 「かしこまりました。少々お待ちください」  奥の方へ行き、店員はすぐにカップへと注ぐ。そしてあっという間にトーマの方へと戻ってきた。 「おまたせいたしました。ごゆっくりどうぞ」  受け取ったカップを片手に、トーマは奥の席へと向かう。人目につかない、トーマの定位置へ。 「ふぅ……」  カップをテーブルに置くと、ふと違和感に包まれた。じっと目の前のカップを見つめる。  いつも真っ白いカップは、今日は花柄であった。全身黒いスーツで身を固めたトーマには不釣り合いな、愛らしい色が散りばめられたものだ。  今まで見たことのない柄に、トーマは驚いて固まってしまった。

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