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人の行き来が激しい場所へ到着すると、トーマは慣れた足取りでカフェへと向かった。
同じ店で同じエスプレッソを買う。
これもルーティンの一つであった。
トーマの順番になると、小銭を出しながら注文する。
「エスプレッソをお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
奥の方へ行き、店員はすぐにカップへと注ぐ。そしてあっという間にトーマの方へと戻ってきた。
「おまたせいたしました。ごゆっくりどうぞ」
受け取ったカップを片手に、トーマは奥の席へと向かう。人目につかない、トーマの定位置へ。
「ふぅ……」
カップをテーブルに置くと、ふと違和感に包まれた。じっと目の前のカップを見つめる。
いつも真っ白いカップは、今日は花柄であった。全身黒いスーツで身を固めたトーマには不釣り合いな、愛らしい色が散りばめられたものだ。
今まで見たことのない柄に、トーマは驚いて固まってしまった。
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