16 / 20
16
***
仕事を終えて帰宅すると、トーマはヨシュアの家の方を見ていた。
何がどうと説明はできないが、いつもと雰囲気が違う気がした。
トーマは自分の家に入らず、ヨシュアの家へと向かっていく。
近付いてみると、ドアが少し開いていた。泥棒でも入ったのかと思い、トーマは急いで中に入る。
「ヨシュアさん……」
部屋の中は薄暗く、荒らされている様子はなかった。
だが、入るなり溢れんばかりの花で床いっぱい埋め尽くされていた。そのどれもが萎れていた。
どうして溢れているのだろうと考えているうちに、ふといつものヨシュアを思い出す。
嬉しそうなときは、決まって花を舞わせていた。そのときの花と、今ここにある花は同じ形をしている。
今までも見えていたあの花は、本物だったと考えられる。
だとすれば、ヨシュアはどうしたのだろうか。
ともだちにシェアしよう!