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イオが、じっと見つめている。
ジュースを全て飲み切るまで。
トールは空になったグラスを、長椅子の前のテーブルに置いた。
そして、同じように、イオを見つめる。
手を伸ばし、その形を確かめるように撫でる。
「これが……真実 のイオの顔なんだね」
ほう……と、感慨深げに息を吐 いた。
『父親』の時とも、白銀の獅子から人間 の形をとった時とも、少しずつ違うようで、どちらともに似ているような、そんな不思議な感じがした。
「さあ、どうだろう。これが真実俺の顔なのかわからない。前の世のイオは余り自分の顔を見ていなかったと思う。お前の顔は覚えているよ、トール。今のお前は少しその面影がある。無論、今のお前の顔も愛おしいに決まっているがな」
彼もまたトールの頬を、両の掌 で撫でる。
「ボクもだよ。どんなイオでも、大好きだ」
ふ……っと、愛おしくて仕方がないと微笑む。その顔にトールの胸もとくんと鳴った。
自然とお互いの顔が近づき、唇が触れあった。『そういうこと』にまだ慣れていないトールを優しく導くように、唇を触れ合わせたまま、何度も角度を変えていく。
優しくて、でも長い口づけ。
呼吸が苦しくなって、一旦離す。
「一回呼吸して……ゆっくり……」
子どもをあやすような言葉が聞こえてきた。トールは言われるまま、ゆっくり呼吸を繰り返した。
「苦しくなったら、鼻で息をするんだ」
「う、うん」
え……と。
まだ、するの……かな。
そう思っているうちにまた合わさる。また同じように優しく触れ合って、何度も角度を変えられ、それからーー舌で舐められ、唇を軽く食 まれーー。
あれ……? さっきと違う……。
つんつんと舌先で唇の割れ目を突っつかれる。
あ……なに……?
わからず戸惑っていると、強引に割られ、舌が入り込んできた。
『舌出して……』
『あの時』言われた言葉を思い出す。それからその後にされたことも。心臓がどくんっと大きく波打った。
入り込んできた舌は、がちっと噛み合わされている前歯を擦 り、上下の歯茎や唇の内側を舐めていく。トールはそっと、噛みしめた歯に隙間を作った。透かさず、生温かい舌が入り込み、口内を蹂躙する。
甘い……。
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