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★ ★  イオが、じっと見つめている。  ジュースを全て飲み切るまで。  トールは空になったグラスを、長椅子の前のテーブルに置いた。  そして、同じように、イオを見つめる。  手を伸ばし、その形を確かめるように撫でる。 「これが……真実(ほんとう)のイオの顔なんだね」  ほう……と、感慨深げに息を()いた。 『父親』の時とも、白銀の獅子から人間(ひと)の形をとった時とも、少しずつ違うようで、どちらともに似ているような、そんな不思議な感じがした。 「さあ、どうだろう。これが真実俺の顔なのかわからない。前の世のイオは余り自分の顔を見ていなかったと思う。お前の顔は覚えているよ、お前は少しその面影がある。無論、お前の顔も愛おしいに決まっているがな」  彼もまたトールの頬を、両の(てのひら)で撫でる。 「ボクもだよ。どんなイオでも、大好きだ」  ふ……っと、愛おしくて仕方がないと微笑む。その顔にトールの胸もとくんと鳴った。  自然とお互いの顔が近づき、唇が触れあった。『そういうこと』にまだ慣れていないトールを優しく導くように、唇を触れ合わせたまま、何度も角度を変えていく。  優しくて、でも長い口づけ。  呼吸が苦しくなって、一旦離す。 「一回呼吸して……ゆっくり……」  子どもをあやすような言葉が聞こえてきた。トールは言われるまま、ゆっくり呼吸を繰り返した。 「苦しくなったら、鼻で息をするんだ」 「う、うん」  え……と。  まだ、するの……かな。  そう思っているうちにまた合わさる。また同じように優しく触れ合って、何度も角度を変えられ、それからーー舌で舐められ、唇を軽く()まれーー。  あれ……? さっきと違う……。  つんつんと舌先で唇の割れ目を突っつかれる。  あ……なに……?  わからず戸惑っていると、強引に割られ、舌が入り込んできた。 『舌出して……』  『あの時』言われた言葉を思い出す。それからその後にされたことも。心臓がどくんっと大きく波打った。  入り込んできた舌は、がちっと噛み合わされている前歯を(なぞ)り、上下の歯茎や唇の内側を舐めていく。トールはそっと、噛みしめた歯に隙間を作った。透かさず、生温かい舌が入り込み、口内を蹂躙する。  甘い……。

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