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甘い葡萄の余韻を感じた。
とうとう舌を絡め捕らえられ、激しさが増していく。逃 れられないように頭部を押さえ込まれた。
舌先を軽く噛まれ、イオの口内に持っていかれそうなくらいに強く吸われる。すぐに呼吸が苦しくなり、言われた通り鼻で息をするが、余り上手くゆかず酸欠状態になる。
思考が奪われていくーーそのせいで気づくのが遅くなった。シャツの裾から入り込んできた手に。
片手は変化なくトールの頭部にある。もう片手は、直にトールの肌に触れている。腹を撫で、臍を突つき、胸にぽつんとある『そこ』に辿り着く。
片方の乳首をぎゅっと摘まみあげられ、やっと気づく。
「んんん!?」
吃驚して声をあげても、皆イオの口内に吸い込まれてしまう。それに構わず、イオの手は蠢いている。
先っぽを触れるか触れないかくらいにかりかりとされたかと思うと、形が変わるくらいに押し潰される。平らな胸を揉みしだく。緩急つけた愛撫に背筋が騒めき始め、身体の中心がむずむずしてきた。
なんか、へん……。
こんな、何も感じない場所なのに。
手はまた下方へ戻り、ズボンのなかに入ろうとする。
「ん!」
やっと我に返り、ぎゅうっとイオの胸を押し退けた。
唇も離れ、二人の間に銀糸の橋がかかる。それをぺろりとイオの舌が舐め取った。
「どうした?」
「だめだよ……だって明るいし」
窓のほうにちらっと視線をやり、恥ずかしそうに言う。色事に疎い彼でも、こういう『秘め事』はこんな明るいうちにするものじゃないことぐらいはわかっている。
「気にするな」
「気にするよ」
とん……っと、眼前の逞しい胸を叩いて抗議する。
「だって、誰か来たりしたら……」
「誰も来ない」
「でも!」
「仕方ないなぁ」
前の世と変わらない奥ゆかしさが可愛くてしょうがなくて、イオは口許を緩めた。
諦めてくれたかとほっと胸を撫で下ろした瞬間、身体が宙に浮かぶ。
「ええっ!?」
「それなら、誰にも見えない暗い場所へ」
「そういう意味じゃーーって、なんで、また抱っこっ。一人で歩けるし!」
「大切なもの、腕のなかにしまっておきたいのさ」
「!」
いちいち零れてくる甘い言葉に、顔は真っ赤になるばかり。
★ ★
運ばれた部屋には大きな寝台がひとつ。一人で寝るには広すぎる。トールはそこへ丁寧に降ろされた。
「ここは……」
「お前と俺の寝室だ。前は子ども部屋があったが、もう一緒でも構わないだろ?」
意味深な言葉にどきどきして、答えられない。
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