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 寝室には運ばれたが、実は陽が射し込んでいて明るい。トールが何か言いだす前に、イオは二か所ある窓の両方とも、外側の扉を閉めた。それから、寝台の傍らの低い衣装棚の上にあるランプに火を灯した。  ぼんやりと二人の姿が浮かびあがった。  寝台の上にトールを寝かせたまま、イオは部屋を出て行った。 「イオ……」  文句ばかり言うから嫌になったんだろうかと、少し不安になる。  いやなわけじゃないんだ。ただ……。 『こういうこと』は、あの日一度切り。前の世を合わせても、たった二度。  ーーといっても、『あの日』は、何度も何度も……。  『あの時』の様々なことを思いだして、恥ずかしくなり、考えるのをやめた。    扉が開き、何かを手にしてイオが戻って来た。液体の入った小瓶だった。それを衣装棚の上に置いた。 「なに?」 「木の実を絞って作った油だ」 「油? 料理に使う?」 「まぁ……本来は」  益々不思議になる。 「もう、俺には神の力はないからなぁ」  脈絡もない言葉に、とりあえず「うん」と相槌を打つ。 「『そのまま』だと、痛みを伴う」 「そのまま?」  訳がわからないと思っていると、シーツと尻の間に手が忍び込んでくる。 「『俺のを』ここに入れる時だ」 「え……」  先程もちらっと思いだしていた、『あの日』のことがまた脳裏に浮かんできた。それと同時にあの時の感覚までが甦ってくる。  あの……今までに感じたことのない……。  まだ何もされていないのに、身体が(ざわ)ついてくる。 「花嫁……今日が初夜だ……優しくする」   また……そんなこと。  花嫁じゃないし……。  夜でもないし……。  口には出さず、頭のなかでふわふわ考える。とてつもなく甘い雰囲気のなかに呑まれていく。 「『そこ』を舐めて、この油でゆっくり解す……痛みを感じないくらいに」  想像しただけで頭がかっとなった。    寝台の上に二人、向かいあって座る。  もう一度初めからというように、小さな口づけから始まる。ちゅっちゅっと、髪、額、頬、耳朶、項、全てに口づけの雨を降らせる。最後に、唇にもちゅっと小さな音を立てる。  一旦離れ、イオは上を脱いだ。鍛えられた逞しい胸や、割れた腹が(あらわ)になる。  子どもの頃は、一緒に風呂に入っていた。でもいつの日か羞恥を覚え、共にしなくなった。時折着替えの瞬間に出会(でくわ)した時など、妙にどきどきしてしまったのを覚えている。  今はそれ以上にときめいている。  

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