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 それを緋色は気の毒そうに見ていたが、自分も言うべきことがあると気づいた。 「いや、謝るのはオレのほうだよ」 「え?」  やっと頭を上げると、不思議そうに緋色を見詰めた。 「こっちが花火に誘っておきながら、行けなくなる……や、場所にいたことはいたんだけど、一緒に見るとかできなくてっしかも連絡もできないとかっっ。いくら突然撮影入ったからって、本当に申し訳ないっ」  今度は緋色のほうが地につきそうなくらいに頭を下げた。しかも、かなり焦っている様子だ。 「仕方ないですよ。突然撮影入るなんてことあっても。それに僕のほうも連絡先交換とか思いつかなかったし」 「きみ、昼間も顔色悪かったろ? 無理に夜に外出させておいて約束(たが)えた上に、永野さんに突然責められらて。それであんなふうに」  彼方はゆっくり(かぶり)を振る。その口にはやや自嘲気味な笑みが浮かんでいた。 「永野さんの言うことも合ってます。撮影だって気づいて帰るべきだったのに、ずっと見てた。流石に写真撮るとかはしなかったけど、緋色さんのこと見ていたかったから」  緋色が無言だったので、 「あ、こんなの気持ち悪いですよねっっ。すみません、もう言わないので」  焦ってそう言った。  それでも緋色は無言で、なんとなく気まずい空気が漂った。 「あ、あの僕もう帰ります」 「もう十二時近いよ。泊まって行ったら? 途中で具合い悪くなるといけないし」 「あ、じゃあ、家に電話して誰かに迎えに」  スマホを探そうとするが、持っていたものが何処にあるのかわからなかった。 「ここに泊まるって連絡する?」  彼方のスマホは緋色が持っていた。 「え? そんな、迎えに」  彼方がスマホに手を伸ばすと、緋色はそれを遠ざけた。 「泊まるって連絡する?」  めちゃめちゃ意地悪そうな顔になっている。 「緋色さん、なんで、そんな」  思いも寄らない強引さに困惑する。 (……そんなに引き留めようとするの?) 「……さぁ、なんでだろう……」  意地悪そうな顔はもう消えていた。真剣に答えを探しているように見えた。 「あの……じゃあ、お言葉に甘えて……」  緋色はやっとスマホを彼に返した。彼方が操作しているのを見ながら。 「……彼方くん……きみさぁ……『奏』だろ?」  一瞬彼方の顔が強張る。 「いやだぁ、何言ってるんですか〜おれ、彼方ですよ〜」  あははと声を立てて笑う。 (おっ一人称戻った) 「おれ……おれねぇ……でも、さっきからきみ、ずっと僕って言ってたよ、気づいてなかった?」  厳しめの声で言われてはっと口を覆った。  

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