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『Double Crown』彼方編〜おれの推し活日記 1 *R18

 僕らは流れて消える(スター)なんかじゃない  いつでも Reign at the top  ふたつの輝く CROWN(王冠)    きみの心に輝き続ける CROWN(王冠)さ  ここで綺麗にターンして――ずるっ。 「うわっ!」 「彼方!」 「ぎゃああぁ」   ぶっ。  天城(あまぎ)彼方(かなた)はテレビのリモコンを握り締め、悲鳴を上げながら画面に流れる映像をぶち切りにした。    ひと月前の『サクラ・ステージ』の録画映像だった。 『サクラ・ステージ』はメディア系の大企業サクラ・メディア・ホールディングスの傘下である『サクラ・テレビ』の金曜のゴールデンタイムを飾る音楽番組だ。  その日は期間限定ユニット『Double(ダブル) Crown(クラウン)』のデビューの日であり、サクラ・ステージでデビュー曲を初披露したわけだ。  が。  ちなみにDouble Crownはやはりサクラ・メディア・ホールディングス傘下のプロダクション『桜ノ森スターズ』通称『SAKU(サク)プロ』に所属するユニットである。  もともとSAKUプロで人気を誇る『王子様』こと都王子(みやこおうじ)(こう)と、一年ほど前に『Crash(クラッシュ)』というダンスメインのユニットに加わった天城彼方との異色のコンビだ。  彼方はテレビ前に座り込み両手で顔面を覆った。  このひと月の間何度この映像を観たことか。 「何度観ても無様すぎる」  地の底から聞こえてくるような声が自分の口から絞り出てくる。    晴れのデビュー曲初披露。  歌い終わって最後に綺麗にターンをして、煌と二人で決めポーズをする――予定だった。  長年の研究生生活でみっちりダンスレッスンをしていたせいか、ダンスだけは認められCrashのメンバーにも加われた。  何度も練習した。リハーサルもした。  絶対決める! と思ってた。  なのに。  ずるっと滑って床に沈んだ。  一瞬、司会者・出演者は勿論スタッフ、本日運良く入ることのできた観覧者に至るまで、スタジオ中がし……んと静まり返った。  二人にとってはSAKUプロの大先輩司会者の浜名(はまな)翔斗(しょうと)も、何を言うべきか口をぱくぱくさせていた。  当の彼方自身も何が起きたのかわからず高い天井のライトを見ていた。  最初に動いたのが、煌。  彼方の腕を掴んで引っ張り上げた。まだ状況を把握しきれていない彼方の肩に腕を回し、顔を近づける。 「彼方はすごく緊張してるんだ。これから僕と頑張って成長していくから見守ってあげてほしい」   きらきら光る『王子様』の笑顔を観覧席の女性たちに振りまいた。

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