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「ユニット名は『Double Crown』。期間は設けてないけど期間限定のユニットだよ」  前回初めて間近で見た時同様めちゃくちゃ良い笑顔だった。それなのになかなかの曲者であると感じさせる。 「期間限定……」 「最長は二年くらいだと思っているけど、場合によってはデビュー後即終了、なんてことも」 「ええーっ」  衝撃でつい叫んでしまう。 (なんだそれ、めっちゃこわい。でも、それより何より) 「なんで、おれなんですかーっっ」  衝撃発表に敬語も雑になる。 「羽加多の推薦だ」 「えっ」  ぱっと羽加多の顔を見る。彼もずっとにこにこしている。 「きみなら煌くんのために何でもしてくれそうだったから」 (えっどういう意味?!) 「いつもイベントに来てくれてるコがまさか研究生の中にいたとは思わなかったよ」  彼方の心臓が跳ね上がった。変な汗がでてくる。 (やっぱ、バレバレだった!!) 「『Double Crown』はもう一年以上も前からの計画で相手を誰にするかいろいろ悩んでスクールにも一応行ってみたんだよ。それがきみと会った時」  正直あの日のことはもう忘れかけていた。今日ここで羽加多に会うまでは。 「ただの研究生だとさすがに煌くんも納得しないと思ってとりあえずCrashに入って貰ったんだよね」 「ねー」みたいな顔をして社長に向かって首を傾けると、社長も「ねー」みたいな顔で頷いていた。羽加多はこんな柔和な顔をしているが敏腕マネジャーで社長の信頼も厚い。 「え、そんな、そんな理由でおれはCrashに」  Crashに対して申し訳ない気持ちがむくむくと湧きあがる。 「あ、勿論、Double Crownが解散したのちには、そのままCrashにいて貰っていいから」  彼方のことはこの敏腕マネジャーに一任されているようだった。  何をどう言っていいのかわからず彼方は口をぱくぱくさせた。  その時トントンとドアをノックする音がした。 「都王子です」  ドア越しでも良く通る声が聞こえてきた。 (煌さん!) 「どうぞ」  羽加多がそう答える。  ドアがバーンと(ひら)くその一瞬前に彼は彼方に囁いた。 「ちょっと面倒な奴だけど、よろしくね」 「へっ?」  いつもにこやかな『王子様』の顔を思い浮かべる。 (めんどーなヤツって誰のこと?)  ドアがバーンと乱暴に(ひら)き都王子煌が姿を現した。 (ま、眩しい〜〜)  今ここでそう思ったのは彼方だけだろう。 「しゃちょーお呼びでしょうか」  大股でとこちらに向かってくる彼の顔は見たこともないような不機嫌そうな顔だった。

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