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 つい一瞬前まできらきらした顔で「尊い〜」「麗しい〜」などと感嘆の吐息を漏らしていたというのに、今は歯の根も合わないほどがたがた震えている。  最終日三回目のアンコールは『Double Crown』が登場するサプライズだ。  彼方が最初から最終日のチケットを抽選にかけなかったのはこのせいだった。そして「王子様と一緒にSAKURAドームで踊りたいよ」」と言っていた空斗と星乃には言うことができなかった。  それなのにさっき袖から覗いてみたら、よりにもよって今日特別ブースに二人がいるのを見かけてしまった。  申し訳なさや緊張が更に増す。 (ここでリハやるの今日で二回目だよ? 素人同然のおれにいきなりこんな大きいハコ緊張しないほうがおかしいでしょー)  二回目のアンコールを終えた煌が自分のすぐ傍らに立ったことにも気づかないほどだった。 「彼方」 「わっ」  比喩とかではなく本当に飛び上がった。  「しっ」と煌が彼方の唇に人差し指を押しつける。 「お前ちゃんと俺の出した宿題やったんだろうな」  勿論彼方にしか聞こえない声量だがドスの利いた声だった。 『宿題』それは煌がいない間、ひとりDouble Crownのレッスン。 「えっまぁ」 「あやしいな」  学校も普通にあったし、なにより二日間煌のライヴがあった。納得できるほどやってはいない、とは言えない。 「ま、いいけど。もうすぐ出番だからなー、この間みたいにヘマすんじゃねーぞ」 「ヘマなんかしないっ」  本当はめちゃめちゃ不安だけど強がりを言う。しかし煌は見透かしたように「ふんっ」と鼻を鳴らした。  煌にぼろくそに言われたが震えは少しおさまった。 「時間だ、行くぞっ」 「はいっ」  大股なのに優雅に歩く煌の後ろをよたよたとついて行く。あろうことかステージに上がってすぐに滑りそうになった。 (うっ)  どうにか耐えようと頑張っていたら前を歩いていたはずの煌の手に腰をがっつり支えられていた。 (煌さ……) 「言ったそばからこれかよっ」  すかさず耳元で囁かれ腰を支えられたまま中央まで連れて行かれた。 「きゃ〜〜〜」と会場中から黄色い声が沸き上がる。 「お姫様たちありがとう!」  彼方から離れ手は客席に向かって振られていた。声がさっきまでよりワントーン高い。 (ほんと、誰? って感じ) 「THREE DAYSラストステージだから、特別ゲストに来てもらったよ。新ユニットDouble Crownで僕の相方を務めてくれている、天城彼方〜!!」 「わぁぁ〜」という歓声と拍手にまたあがってしまいそうになる。 (これはおれにじゃない、おれじゃない、煌さんにだ)  そう心の中で唱えてどうにか鎮める。 「彼方一言どうぞ」 「えっ」

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