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「怒ってるわけじゃねぇ。たださっきからなんかこう……もやもやするっていうか、むしゃくしゃするっていうか」  口をへの字にして自分の感情をも持て余しているような見える。 (もやもや、むしゃくしゃ? なにそれ? それっておれに何か腹立ててるってこと?)  馬鹿にされても見下されても心底嫌らわれていると感じたことはなかったのに。 (もしかしてマジで嫌われた?)  そう思った途端目が潤みだす。  目の前の、滲んで見える煌の顔にまた別の表情が浮かんだような気がした。 「いや……むしゃくしゃじゃなくて……むらむらかも?」  ぼそっと言うのが聞こえてきて。 (むしゃくしゃもむらむらもあんま変わらんが〜)  意味の違いが理解できないほど悲しい気持ちになっていた。が、数秒後にはっとする。 「むらむら?」  「……溜まってんのかな」  声が被ったかと思うと煌の頭が突然首筋に埋まった。頰や顎に煌の髪が触れ擽ったい。しかしそれだけじゃなかった。生温かい何かが首筋を這う。 (ん? んん?)  それに遅れて腹の辺りにも妙な感触が。Tシャツの裾から入り込んでくる何か。 (ええっ???)  隠れていたはずの肌を掌で直に撫でまわされているような。 (ような、じゃなくて、撫でまわされてる!)  その時初めて首筋に感じる生温かいものが煌の舌であることに気づいた。 (煌さんに舐められてる?)  何が起きているのかわからない間に、思いの外大きな手は胸の辺りに辿りついていて、触ってもたいして面白くもないだろう男の乳首をぎゅっと摘みあげられた。 「いっ……」  思わず呻いてしまう。  首筋でふっと笑い声がした。 「色気のないガキだと思ってたけど、案外」  首筋に唇をあてたまま喋られてぞくぞくした何が背筋を迫りあがってくる。 「ん……っ」  さっきとは違う少し甘い吐息が漏れた。 (いやいや、そうじゃなくて)  何をされているのかやっと気づいたというのにそのまま流されそうになる自分を律する。 「こ、煌さん、何やってるですかっ」 「何やってるって? わからない?」  顔を首筋から離して覗き込んでくる。にやりと笑うその顔はまた初めて見るような表情だ。 (うわっ何、この雄っぽい顔はっ。かっこよ……じゃなくてっ!!)  「なんでおれにこんなっ」   彼方は手をばたつかせたが軽々掴み取られてしまった。 「だからむらむらするって言ったろ」  煌の足が彼方の閉じていたはずの太腿を割る。その間に自分の身体をぐいっと入れ体重をかけて押しつけてくる。 (え……っなにっ、なんか固いモノが)  自分の太腿の辺りに何かがあたっているを感じた。 (これって……煌さんの……)  それが何かということに気づいて顔がかっと熱くなった。    

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