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(わぁ〜なに、煌さんっめっちゃ喋ってるけど、おれが聞いちゃっていいこと? 勿論誰にも言ったりなんかしないけどさーっ)
思えば煌が自分のことを話すのは今日が初めてのようだった。これまでお互いプライベートなことはほとんど話したことはない。彼方が聞けるはずもないし、煌は彼方自身には興味もなさそうだった。
初めて聞いた話がこんなデリケートな部分の話だとは。
ステージの煌はきらきらしてて現実離れしていて性的なことを感じさせないし、たぶん感じさせてはいけないんだ。しかし『黒王子』が『淡白』だと言うのはなんとなく似合わないような気がした。
「お前もさっき気持ち良かったろ、またやろうぜ」
「!!!」
(黒王子、やっぱあけすけすぎる!)
全身が真っ赤になりそうになった。
ぱっと顔をあげて。
「淡白ってどの口が言うんですかっ絶対にいやですっ」
「生意気っ」
すかさずびしっとデコピンされた。
* *
『桜ノ森スターズ・オン・ステージ』まであと二週間。SAKURAドーム内部はかなり賑やかになってきていた。世のドルオタの女性たちが泣いて喜びそうなほどSAKUプロのアイドルたちが勢ぞろいしている。
ユニット等を解体してのミックス・メドレーのリハーサルが始まっていた。忙しいSAKUプロのアイドルが一堂に会するのはこの期間だけ。
(やっぱり、煌様が一番だ)
まだ王子衣装も着ていないのにキラキラ感が溢れでている。
彼方は別ユニットのメンバーと歌っている煌を見て感嘆の溜息を漏らした。
最近の煌は『黒王子』の時でも機嫌が良い。口を開けば出てくる言葉は相変わらず俺様だけど、最初の頃よりきつくはないような気がする。それに自分のことも少し話すようになり、彼方のことに興味を示すようになった。
そして――。
『あの時』は絶対嫌だと言ったのに、あの後も何度か同じことをされている。煌の手際の良さもあるにはあるが結局最後には流されて気持ち良くさせられてしまうのだ。
(アレも推し活! なんてそんなわけ)
女性が男性アイドルを推すのとは違って、男が男を推すのにそういうことをしたいとか『抱かれたい』とか普通は思ったりしないだろう。
(おれ……ひょっとして、そういう意味で煌さんのこと好きなのかな……)
流される度にそんな想いが強くなっていく。
(それにしても……淡白なんてやっぱり嘘だろ、あれからめっちゃ何度もしてるじゃん!)
自分以外に見せる爽やかな『白王子』笑顔の煌を、別人だな〜と思いながらじっとりと見つめていた。
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